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作品集(小説、脚本、企画書など)

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生業としているシナリオ、私小説の発信場所。なるたけ多くの読者に見てもらいたい。そして良くも悪くも感想をいただけたら光栄の極み。
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新鮮な劣等感が手に入ったのでガソリンにしてみた

新鮮な劣等感が手に入ったのでガソリンにしてみた

こんばんは。新井啓明です。
池に小石を落とすと、揺れる水面が注目されるけど…本質は水底の泥を巻き上げるところにある。現代は、いとも簡単にカビの生えた思い出を冷蔵庫の奥から引っ張れる技術があるから生きづらい。
何が言いたいかって?今の科学技術は思い出したくない事を不可抗力で思い出させるんだよ
(><)ぴえん

彼が元気そうでよかった。これが率直な感想。SNSの「知り合いかも」機能は僕にとってお節介お

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ブラームスの小径で我が子を捨てた

ブラームスの小径で我が子を捨てた

「ブラームスはお好き?」
誰かがそう問いかけた。頭の中でこだまする。分厚い雲が流す生暑い風がシャツと汗になった肌とを密着させる。腕の中で眠る我が子はこれから自分に襲いかかる運命に知る由もなく寝息を立てている。

人権大国日本が聞いて呆れるね。互いに孤児院で生まれ育ち、煩雑な手続きを何百と乗り越えて医療系の教育機関にたどり着いた。莫大な奨学金を得るために血を吐きながら努力し、今度は返済するために命を

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御茶ノ水の冒険~小倉さんの一言~

御茶ノ水の冒険~小倉さんの一言~

「梅干しって若返り効果があるんだよ」
間延びした声で隣の女性は言った。都営浅草線。五反田駅を降車して、山手線の乗り換え改札口が見えていた。
「新井くんってすごく若く見えるよね」
2つ年下の彼女は1週間ほど前に街コンで出会ったばかり。今日、初めて一緒に食事するほどのまだ浅い間柄である。記念すべき初デートは目の前の改札口に着いて無事終了のはずだった。『梅干し…?』なぜ別れ際にそんなことを? つい今まで

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