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Smashing! 佐久間イヌネコ病院

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佐久間鬼丸獣医師(受)と喜多村千弦動物看護士(攻)とその友人達のお話。 どうぞお楽しみ下さい!
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2022年4月の記事一覧

smashing! くばるものつくすもの

どんな人間にも苦手なものはきっとある。だが佐久間と喜多村の先輩・伊達雅宗に対してはこれといって思い当たることがない。後輩で彼氏でもある設楽泰司は、仲間内では長い付き合いに入る伊達の苦手、嫌いを今まで意識したこともない。 もともと伊達は何に対しても要領が良く、一人で行動することも多かった。知り合った頃にもつるんでいた友人は特にいなかった筈。その伊達と自分は昔からいつも一緒にいる。そのことがちょっとだけ不思議で、かつ誇らしくもあった。 職場は一緒でもシフトが変わると丸一週間、

smashing! わかみどりとほろよいと

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 ルート:喜多村千弦 公園の桜もすっかり散って、いまはツツジが満開だ。喜多村は昼休憩の間や今日のような午後から休診の日にも、犬のリイコ(♂)と軽く散歩するようにしている。芽吹く草や木々の匂いがリイコは大好きで、ずっと周りの匂いを楽しみながら機嫌よく歩いているようだ。 涼しいと言っても遊歩道への照り返しはキツイものがあるので、リイコのために日陰を選んで歩く。サンシャイン大好き喜多村には少し物足りないが我慢だ我

佐久間イヌネコ病院 luv.64 きみだけの

佐久間イヌネコ病院。佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士の友人である結城卓と小越優羽はインなスタグラムをやっている。最初は、顔の広い結城が馴染みの飲食店を広めたい感じでやっていたが、それを見て羨ましくなったらしい小越が、庭師の仕事で仕上げたものを、許可をとって載せるようになった。地道にフォロワーも増えつつある。 数年続けている結城のフォロワー数は5ケタ。昔の知り合いや営業の時の友人らと近況報告を兼ねて続けているが、たまに本人も気づかずきわどいものをアップすると、小越が

佐久間イヌネコ病院 luv.63 ひび つつがなく

病院が休みの時も、佐久間と喜多村は大抵一緒に行動する。諸々の家事やら買い出しやらに出かけ、二人だといっぺんに終わるなあ言いながら、そして今日も二人して荷物を下げて歩く。喜多村は人目なんて気にせず手を繋いで歩きたいタイプ。それどころか腰抱き合ってくっついてぐねぐね歩きたい、そんで綺麗な飛行機雲だなあ、えどこどこ、なーんてどさくさでチューしたりもしたい。むしろ積極的なウェルカム仕様だ。そんなアツいラブパッションを佐久間は努めてさらりと受け流す。水面下では焦りと照れが大渋滞して

smashing! あまいにがいのそのあじを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司ともそんなんである。 食いしん坊で好き嫌いもなく、そんな伊達さんはお料理が得意です。その中でも僕がリスペクトしているのはお菓子。スウィーツ。甘いのん。どのくらい前のかは定かではありませんが「前カレ」がパティシエだったらしく、その彼がお料理をする姿が好きだったと聞きます。そし

smashing! ばしょをかえきぶんもかえ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。その近所の商店街から通りを数本入ったところにある台湾料理店。場所が少し入り組んでいるのと、広々とはしているが袋小路的な作りのため、あまり混雑することはない穴場だ。 店の前にはテーブル席と長椅子に座れる屋台。その中の端っこのテーブル席は伊達のお気に入り。静かで目立たないけれど厨房の窓からダイレクトに注文のできる場所だ。仕事というほどのものではないが、ちょっとした作業や計算を伴ったりするものや集中したい案件のある時

smashing! よゆうなんてきやすめで

目が覚めたら一瞬ここはどこなのか分からないくらいに、僕はよく眠っていたようです。お仕事の切れ間がなくここ暫くはあまり休めなかったせいか、こんなふうに突然、一人になった途端に電池切れみたいに落ちた、そんな感じでしょうか。 ここは僕の家、マンション最上階ペントハウスからだいぶ離れた場所にある、小さなホテル。お得意様にご挨拶にやってきたのですが、どうやらこの街にはちょっとしたチーズ工房があり、一週間に一度しかお店が開かない。それがちょうど明後日だと知った僕は、急いでここを押さえた

smashing! まつひとまたれるおれ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司とも恋人同士。 レタス、イタリアンパセリ、ブロッコリーと生椎茸、しめじ、今日出てたら蕗、パプリカ、トマト、スカイベリーと八朔とあとは…。 少し苦味があったり香り高く食感の良いものを好むのは雲母、堅くても柔らかくても瑞々しく甘みのあるものは伊達、設楽はそれぞれの好物を手早く

smashing! きんだんはあまくやさしく

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 二人は夕診までの数時間、家事や作業なんかをあらかた片し、あとはゆっくり過ごすことが多い。今日は朝から小雨がぱらつき、少しだけ肌寒いリビングでは、昼食を終えたテーブルの側、何故か佐久間の膝の上には、喜多村が椅子に腰掛けるように座っている。 「…思ってたほど癒されない」 「いつもと逆ってのもあるけど、重…」 鬼丸が痩せてるから硬いんだ。よくわからないディスられ方をしても佐久間は動じない。だって男子の膝なんても

佐久間イヌネコ病院 luv.62 オンアンドオフ

久しぶりに雲母ハルちゃん復活。ここんとこ風邪ぽかったんであんまり外に出したくなかったんだけど、退屈で仕方ないみたい。せっかくだから今日は俺と一緒に小さな菜園の世話をしてもらうことにした。実家の用事で出てる設楽が夕方戻ってきたら、採った野菜揚げてもらう。 お待たせしました!そう言って奥の部屋から出てきたハルちゃんはいつものあの、設楽の高校ジャージ。動きやすくて最高なんですよ。嬉しそうにしてるから何も言えないけど、あれよ、設楽が言うには「田舎ジャージ」なんよ。あいつん家には兄弟

smashing! ふつつかなねがいを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司ともそんな感じだ。 我が儘を聞き入れてくれる人、オレにとっての伊達さんがそうだ。 昔、付き合い始め、そんで今。同一人物なのに時期によってオレの扱いが全然違う。昔は伊達さんの後輩として、あの人のフォローやら付き添いばっかしてて、そんでうっかり「寝る」ようになってからはほぼ毎

smashing! とっておきはひみつめいて

佐久間イヌネコ病院。週一でここに勤務している理学療法士・伊達雅宗は佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士の先輩。 「伊達さんお風呂出たから、俺入ってくる」 「わかった。今週伊達軍団よく遊びくるなあ」 お風呂お先ねぇー。佐久間の部屋着を借りた伊達がのんびりとリビングにやってきた。喜多村が用意していたチューハイやらつまみを楽しそうに眺めている。 「うっわなに今日タイ?!揚げえびせんがある!」 「ムフン。さすがだな雅宗先輩。ウチ、アジアン流行ってるんだ」 免疫系とかの不調に

smashing! うみのつきよとにじと

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 近隣の商店街の外れに位置する、こぢんまりとした銭湯・ウミノ湯。店主は渋い鯉口シャツにダボパンツが標準装備、長身痩躯の松田系の美形、羽海野真弓。そして赤道直下辺りの研究所から、約十年ぶりに帰国したリウ先生こと、九十九龍一。羽海野の長い付き合いの年上の恋人。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 毎週木曜はウミノ湯の定休日。そして水曜は昼湯後、早めに閉まる。バイトや入っている店舗の子たちも協力し、いつもより

smashing! もどかしいをこじらせて

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 そこから少し離れた通りにある、無駄にお洒落な感じの乾物屋。身の丈170前後、ダークブラウンの癖毛。粋な魚屋スタイルの店長さんは佐桑風馬。その彼と最近佐久間を介して知り合い、あっという間に恋に落ちたのは室戸青志。エキゾチックアニマルを専門とする獣医で、一見何考えてるかわかんない、一重瞼を丸縁メガネで覆ったひょろりとした和風の美形だ。 「じゃあ、いってらっしゃい!」 「はい、いってきますあの…」 「んん?」 「