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smashing! とっておきはひみつめいて

佐久間イヌネコ病院。週一でここに勤務している理学療法士・伊達雅宗は佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士の先輩。

「伊達さんお風呂出たから、俺入ってくる」
「わかった。今週伊達軍団よく遊びくるなあ」

お風呂お先ねぇー。佐久間の部屋着を借りた伊達がのんびりとリビングにやってきた。喜多村が用意していたチューハイやらつまみを楽しそうに眺めている。

「うっわなに今日タイ?!揚げえびせんがある!」
「ムフン。さすがだな雅宗先輩。ウチ、アジアン流行ってるんだ」

免疫系とかの不調にはスパイス。どこからか流れてきた情報を試してみたらなかなかの効果があり、佐久間がハマってしまった。幸い近所には台湾やらタイ、ベトナム料理店があり、ネタには全く困らない。そしてスパイスに凝り始めてから何故か客人増える。運勢に刺激を与えるそうで、甚だ納得である。

ソファーに座って早速えびせんをつまむ伊達。さくさくと伊達の食べる軽い音が響く。

「これ旨いなあちぃたん。こんど設楽にも揚げてもらお」
「雅宗先輩揚げてやんないの?」
「あァ、いま大体あいつに任せてんのよ。飯とかも」

俺はねたまーにお手伝いしてんの。小さく笑うその顔はデレに満ちてる。

「解せん…」
「んなに?ちぃたん」
「俺の知ってる雅宗先輩の信者でそんなことしてもらってる奴いなかったけどな」
「えなに妬いてくれてるん♡」
「それはないな」
「…ウン(知ってたけどね)」

伊達の頬に付いたままの、えびせんの細かな粉を喜多村が指先で拭ってやる。嬉しそうに伏せられた瞼が少し開いているのに気付き、喜多村は伊達の鼻を軽く摘んだ。

「雅宗先輩のそういう、様子見するとこ」
「んんんんごめんんんん」
「ハルちゃんにお仕置き要請しとくかな」
「へ…♡」

お仕置きの言葉を聞いてその目が輝くのをしっかりと見据えながら、喜多村は伊達の唇に触れるか触れないかまで近づき、その隙間でニヤリと笑った。

「興味はあるんだ。どんなふうに」
「どんな、ふうに?」

雅宗先輩が変わってくのかって。喜多村の「毛虫感」な睫毛をわさわさと指先で撫で、伊達は小さく笑って囁く。

そのうちね。

喜多村は伊達の挑戦的な上目遣いをあっさりと受け流して、くしゃっとその頭を撫でた。



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