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smashing! まつひとまたれるおれ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司とも恋人同士。


レタス、イタリアンパセリ、ブロッコリーと生椎茸、しめじ、今日出てたら蕗、パプリカ、トマト、スカイベリーと八朔とあとは…。

少し苦味があったり香り高く食感の良いものを好むのは雲母、堅くても柔らかくても瑞々しく甘みのあるものは伊達、設楽はそれぞれの好物を手早くカートに入れていく。向こうの家の菜園で採れたものは雲母が送ってくれた画像で確認済み。こういう時に被らなくて助かるな、設楽はカートを押しつつ売り場を進む。

煮ると崩れてしまう高いソーセージもちゃんと買っておく。切らすわけにはいかないのが生ハムとチーズ、オリーブオイル。あの二人のライフラインみたいなもんだな。米や炭水化物あんま食わないってのが自分との差。そのせいか段々と、設楽まで炭水化物抜きみたいなことになりつつある。食っても身にならない体質、ちょっと痩せてくると伊達が渋い顔をするので、自主的にラーメンやなんかで補充しないといけない。

そんな二人もここのバケットとかは別みたいで、外側がガリガリで中身気泡だらけでもちもちのハードブレッドがお気に入り。数個取ってカートに追加。その側に並べられた新製品、古漬け沢庵の入ったタルタル?も追加。なによりあの二人は「新しいもの好き」だ。

あらかた買い終わった後は、最後に自分の要るものを。ギョニソ、カレーの材料、韓国海苔、竹輪。あってもなくてもいいけど、設楽が手がける料理には欠かせない必需品。

レジを済ませ外に出た設楽の携帯が小さな音を立てる。画面には「しだらハラへった」と「お迎えに出なくて大丈夫ですか?」。伊達さんたちもう帰ってたのか。設楽は少し笑って画面に指を滑らせる。

「御意」

仕事終わりでくたびれてても、車着けられないからって両手いっぱいの荷物で重くても、あの二人のこういうの見たらそんなの、秒で吹っ飛ぶような、自分にとって最も価値のある、そんなひと時なのだ。




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