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Smashing! 佐久間イヌネコ病院

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佐久間鬼丸獣医師(受)と喜多村千弦動物看護士(攻)とその友人達のお話。 どうぞお楽しみ下さい!
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2021年10月の記事一覧

佐久間イヌネコ病院 luv.23 ウミノ湯のいま

連日俺たちの(惚気)話ですが 大丈夫かなついてきてくれてますか? 「…どこに向けて話してるんだリウは」 「UFOじゃね?あ、ていうかマミたま旨い、これは何?」 「ボボティー。ひき肉にスパイスと卵かけてグリルで…」 早朝から喜多村が朝湯に訪れ、早めの昼食をウミノ湯の食堂で食べることに。新メニューの「南アフリカ料理」に興味津々なのだ。 九十九が「お風呂屋さん」に転職して半月。時折大学に残務に行ったりはするが、ほとんどウミノ湯に常駐できるようになった。営業の合間には隣の駄菓

佐久間イヌネコ病院 luv.22 リウとマユミ

出会いはありがちな感じだったけど、お互い同性は初めて。そして立ち位置的にはガチで「禁断」。ヘタすると俺捕まってた。未成年だなんて知らなかったんです。当時どっかのお偉いさん達が不祥事で必死で言い訳してた気持ちすごくわかる。 真弓は背が高くてね、170前後の俺には、183って数字はけっこうな憧れなんだ。ひょろっと細っこいけど目つき悪いしそんであの、なんての?若い子のファッション?俺いまいちわかんないんだけど、テロテロのスカジャンみたいなやつがさゴールドだったりすんのよ。付属

smashing! うみのはて こころえがき・後

上手くいかない事なんてこの世には掃いて捨てるほどある。理不尽な理由でバイトをクビになり少々自暴自棄になっていた羽海野真弓は、上着のポケットに乱雑に突っ込んでいた煙草を咥え、薄暗い路地にしゃがんでライターで火を付ける。深く吸い込まず碌に味わいもしない煙草は当然煙臭いだけで、苦く舌をひりつかせる味は正直不快だった。 高校もあと1年足らず。同じ授業を受け同じ方向を向き、同じ「輪」の感覚を共有するのが当たり前だと皆が疑わない世界。何かが決定的に自分とは違う。羽海野はどうしても受け入

smashing! うみのはて こころえがき・前

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 近隣の商店街の外れ。こぢんまりとしているが、中に入っている店舗も設備もなかなか侮れない銭湯がある。そのウミノ湯の店主は渋い鯉口シャツにダボパンツが標準装備の、長身痩躯の松田系の美形。羽海野真弓34歳。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「あ、こういうのは避けるんだ?」 「なるべく何かしら書いてないやつがいいのよ。動物の絵とか、団体とかの名前とかも」 羽海野と一緒に、なにやらダンボール類を仕分けして

佐久間イヌネコ病院 luv.21 裸族の朝

自撮りの背後に全裸で映り込む案件について。 「どういうことなんですか」 「えだってお前があんなとこで自撮りしてるなんて」 知らなかったし。あさっての方向を向いてお菓子を食べている伊達。大体その菓子どっから出した。あ、それ俺のドンタコースだな。設楽は雲母に頼まれ「今日の設楽コーデ」を自撮りし送る。ほぼ毎日の日課になっているのだが、今朝その事件は起こった。 いつものように身支度を整えた設楽は、これまたいつものようにリビングで自撮り(明るいし照明いらないから)。すると後方

smashing! まろくおいしくあたたかく

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 この二、三日で急に冷え込み始めた。佐久間は気温の変化にいまいち疎く、こんな時期でも平気で半袖と裸足で過ごし風邪をひいたりする。それをよく知る佐久間の兄・達丸が「あったか保温グッズ」を荷物に忍ばせてくれるようになると、ああ、冬も近いな。というように喜多村にとっての風物詩になりつつある。達丸は季節の食べ物や佐久間の好物、そして佐久間の友人たちに受け取って欲しい物を、一、二か月に一度「ふるさと便」と称して届けてくれ

佐久間イヌネコ病院 luv.20 ダテ軍団

伊達ファミリーの朝は低調である。男子の低血圧は珍しいことではないが、特に低いのは設楽泰司。上が80下が50。おまそれ水死体じゃんかと伊達が笑うので、設楽は大抵後ろから羽交い締めしてティクビをギュッしての仕返し。ちんkという場合もあり。 一方の雲母は正常値。朝から目覚めすっきり、夜は事を終えればぐっすり。そして今朝もいつものようにシャワーを浴び、身支度を整えながらメールチェックのためタブレットを開いた雲母の目に飛び込んできたあるもの。 成程、すごいのがやってきた。 「…大

smashing! がりょうてんせいなせんせい

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 先日露呈した事実。佐久間は「画伯」。 喜多村は全身全霊で吹き出さないよう、最新の注意を払った上で佐久間の「作品」を目にする。深呼吸して気合いを入れる喜多村。目の前に現れたのは。 「…鬼丸、こ、れは…」 「これは自信作なんだ。リアリティにこだわったんだけど…」 「…ウン、すごいよ今にも動…」 「すごいな千弦は。俺のことなんでもわかっちゃうんだな」 そら勿論。喜多村は己を無にするべく瞬き禁止で佐久間の絵を

smashing! ひとをおもうそのこころ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。彼らの友人、小越優羽と結城卓。彼らは同性で恋人同士。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ひとりになるのが苦手なくせに ひとりになりたがるとこがある 大抵の行き先はわかってるから、猫たちにおやつをあげて、戸締りして財布とケータイだけ持ってふらっと出る。昨日まで大きな庭園をチームで仕上げてようやく完成したから、ずっと気分がいい。仕事がうまく回ったことが、植えた植物からストレスの気配が消えるのが嬉しい。 商店

smashing! あなたがたはぼくのアート

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。非常勤である、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は恋人同士。そして最近、伊達の後輩獣医師・設楽泰司が加わった。雲母公認・伊達の彼氏として。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「なんか最近、コイビトって打つと行為他人て出るんですよね」 「なにお前もう俺を捨てる気なん?」 「いえ今のところは。まあ、若気の至りってやつですね」 「キーーーッ!お前の育てたカルビ全部食ってや

smashing! きみのせかいからこぼれおち

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 薬の袋にイラストを入れたらいいんじゃないかな。 先日、スタンダードプードルの龍馬の整腸剤を処方した時、飼い主であるウミノ湯主人・羽海野真弓が喜多村に言っていたのだ。羽海野が常用している(これも整腸剤)ヒトの薬の袋と似ているため、間違いそうになるのだという。 「…マミたまいっそ同じの飲めばって言ったら詰め寄られた」 「あでもそれ、いい考えかもしれないなあ」 住居部分屋上。喜多村と佐久間は今日も夕飯~晩酌の

佐久間イヌネコ病院 luv.19 設楽

伊達さんは遠慮なく「見る」。 風呂上がりとか寝起きやら素っ裸やら、それも無防備なのが好みらしく、普通チラ見のテンションのやつでも嬉しそうにガン見かましてくる。 「伊達さんてオレの裸好きですよね」 そう言うとこれまた嬉しそうに「うん」って返ってくる「しだらのもいいけど、ハルちゃんのも大好き」。 かと言ってコーフンしてるわけじゃない。伊達さんちんkは通常サイズ。よって問題ないけど、問題なのは。 「…設楽、お前ってほんとわかりやすいね」 御意。見られるとコーフンする

smashing! あんたになぞのしゅごを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている(伊達が攻)。その上で伊達と付き合い始めたのは彼の後輩、設楽泰司(伊達が受)。 午前の診療が終わってやって来たのは伊達。勤務の日でもないのに。何故かスーツの入ったガーメントバッグ持参で。聞けば今日伊達は、この間から一緒に住み始めた設楽の実家に「挨拶」に行きたいのだという。何故か設楽本人には内密で。

佐久間イヌネコ病院 luv.18 ハルちゃん

雲母春己 ハルちゃんは俺のコイビト 今はお互いの家行ったり来たり この間からもう一人 俺の後輩で 昔からなんだかんだあった 設楽泰司も加わって 今は三人で暮らしてる 昨夜はちょっと遅くまでかかって 設楽と一緒にハルちゃんの家に戻って ハルちゃんの作ってくれてた生姜焼きと 佐久間んちから千弦が差し入れてくれた ツナと塩昆布の炊き込みご飯 みんなで美味しい美味しい言って 全部食べちゃったん 設楽は相当疲れてたらしく ビール1本で 珍しく落ちた あいつが疲れるとさ でかい鼾