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smashing! あんたになぞのしゅごを

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佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている(伊達が攻)。その上で伊達と付き合い始めたのは彼の後輩、設楽泰司(伊達が受)。

午前の診療が終わってやって来たのは伊達。勤務の日でもないのに。何故かスーツの入ったガーメントバッグ持参で。聞けば今日伊達は、この間から一緒に住み始めた設楽の実家に「挨拶」に行きたいのだという。何故か設楽本人には内密で。

「ごめ千弦、ちょっと髪の毛やって欲しいん…」
「雅宗先輩、俺が持ってるのトリマーなんだけど…」
「ハルちゃん急な仕事で出ちゃったんよ…」

セットぐらいならいいよ。リビング窓際、バーバー喜多村仮オープン。いつも佐久間の髪をカットする時のように伊達の髪を整え始める。途中、買い物から戻って来た佐久間が興味津々で観察している。

「千弦器用だな…」
「あと、カンがいんだろね♡」
「実家にいる時、パ…父さんの頭よくセット頼まれたから」

綺麗にセットし終えた姿を合わせ鏡で見てご満悦。伊達はスーツの襟元を整えながら、マッシュポテトにコンビーフこれメケメケのやつ!佐久間の用意してくれたサンドウィッチを喜んで食べている。軽く食べてくとお腹鳴ったりしないからね。なんだか佐久間も嬉しそう。
簡単に支度を整えた喜多村は、めかし込んだ伊達を連れ設楽の実家へと向かった。

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「雅宗先輩、本気なんだねえ、設楽のこと」
「俺はいつでも本気なんよ?ウン、ただ設楽はね、特に…」

ハルちゃんが、なのよ。

あの二人は兄弟みたいに仲がいい。今思えば初対面から気が合っていたように思う。完璧でもどこかしら綻びを持った雲母、他人を放っておけない世話焼き世話好きの設楽。もちろん二人とも大好きで伊達の大事な存在。
ただ、あの二人を結び付けてるのが自分じゃなかったとして、付き合うという形でなくても、会ったらソウルメイトみたいになってたんかな。伊達は静かに続ける。

「そこに俺が入るとこうしてややこしくなるんかもねえ」
「ややこしいと思うから余計に、じゃないかなあ」

いつものあんたらしく、全部自分のペースに引き摺り込んで「あの子を俺にくださいお入りくださいありがとう」的な挨拶、かましてくりゃいいんだよ。

ん、じゃ、行ってくるん。

ありがとねちぃたん。助手席から外に降り立った伊達は数回深呼吸。次に喜多村に向き直った時は、すっかり目と眉も近づいて、いつもの不敵ないいカオになっていた。フロントガラス越し、設楽の実家に向かっていく伊達の後ろ姿に「俺が今まで見た中で、二番目くらいにカッコいいよ」届かない声を贈る。


あんたなら何も心配いらないよ。喜多村は車の中で、遠ざかる設楽の実家に向け、それでも謎の念を飛ばしたりするのだった。


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