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smashing! きみのせかいからこぼれおち

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。


薬の袋にイラストを入れたらいいんじゃないかな。

先日、スタンダードプードルの龍馬の整腸剤を処方した時、飼い主であるウミノ湯主人・羽海野真弓が喜多村に言っていたのだ。羽海野が常用している(これも整腸剤)ヒトの薬の袋と似ているため、間違いそうになるのだという。

「…マミたまいっそ同じの飲めばって言ったら詰め寄られた」
「あでもそれ、いい考えかもしれないなあ」

住居部分屋上。喜多村と佐久間は今日も夕飯~晩酌の間をここで過ごそうと、色々持ち込んで「基地」状態。テント持って来たら泊まれるよね。嬉しそうにしている喜多村をやんわりと佐久間が止めた。

「えーテント楽しそうじゃない?鬼丸はだめ?」
「うーん、だめじゃないんだけど」

千弦とゆっくりしたいから。その一言で白目を剥き気味に魔神チェンジしかかる喜多村をこれまた佐久間はやんわりと止める。慣れって結局身を護るよね。今日は黒霧島のお湯割りを側に、佐久間は持参したタブレットを開く。

「今日なに?何の配信?」
「いや…ウミノ湯のマミたまが言ってたやつ、ちょっと試してみようかなって」
「ああ!イラスト入れたらってやつか!俺見ててもいい?」
「いいよ。でもほんと俺、こういうの苦手なんだけど…」

その割には手慣れた様子でタブレットペンを繰り、佐久間はすいすいと画面の中になにかを象り始めた。しばらくの間嬉しそう&楽しそう&佐久間の真剣顔にチソチソ暴走気味で騒いでいた喜多村が、徐々に大人しくなっていく。

「えと、これは…ク…?」

「これはネコなんだ。ピンクとキイロとかあってもいいかな。楽しくなってきた…俺もうちょっと描いてみるよ」

以前、確かバレンタインのチョコにデコレートペンで俺の顔を描いてくれたことあったな。喜多村が思い出したのはあの微笑ましくも辿々しいチョコレートのイラスト。あれは小さなチョコの表面だからああなってたんだ、そう思っていた。小さな丸に髪の毛数本、キリリ眉なら十中八九俺だろ?だからこそ気づけなかった。えこれ、俺のあの顔の眉ないだけじゃ…そこに、あ、足?触角?4本…?

ここにきて初めて露呈した佐久間の「画伯」っぷり。

(…俺あれ本気でクラゲだと思ったよかった言わなくて…さて、どうしようシコいな。何なんだよ鬼丸の野郎クッソシコ…)

「こういうのでいいのかな、薬の袋にワンポイント…」
「もちろんコレで!まあ俺は出たやつ全種コンプするけどな!」
「…千弦にはこの袋じゃもらえないよ?」
「袋だけいただきたいですくださいお願いします院長」

イラストを褒められ上機嫌の佐久間は、お湯割りをハイピッチで空けながらも力強くしっかりした線で仕上げていく。ねえ鬼丸、それ紙にも描いて。タブレットに向かう佐久間が集中しているのをいいことに、髪や頬に思い切りキスを降らせる。鬼丸の頭の中の世界、思いがけずいま俺は覗けているんだなあ。独り占めよりも幸福なその満足感に浸る。

喜多村は酌をしながらも、Tシャツやら何やら、グッズに明るい雲母ハルちゃんに頼んで発注してもらおうと企み始めたのだった。


もちろん自分。そして佐久間とのペア用で(ペアルック大好き)




↓バレンタインの色々の回です♡


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