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オンライン対談公開 フラダンサーMiyuu・Saki×渡邊剛

フラダンス世界チャンピオンのMiyuuさん・Sakiさんと理事長渡邊が2021年10月14日にオンライン対談を行いました。お二人と研究所との繋がりや喜界島について、その対談を3人の言葉でお届けいたします!

Miyuuさん・Sakiさん
2006年𝐇𝐚̄𝐥𝐚𝐮 𝐍𝐚̄ 𝐌𝐚𝐦𝐨 𝐎 𝐏𝐮ʻ𝐮𝐚𝐧𝐚𝐡𝐮𝐥𝐮 𝐈𝐚̄𝐩𝐚𝐧𝐚 で出会った2人
2013年第1回 全日本フラ選手権に出場。 ソロ部門でSakiが優勝し Ms. Hula Japan 2013のタイトルを獲得。
2015年第3回 全日本フラ選手権に出場。ソロ部門でMiyuuが優勝し、Ms. Hula Japan 2015のタイトルを獲得。
2016年 フラ最高峰の大会である、 第53回 Merrie Monarch Hula Festivalに2人で出場。
総合優勝に輝く。
2019年8月 喜界島サンゴ礁科学研究所にて喜界島のサンゴを使ったアクセサリーワークショップを開催。
( Lanakoi webサイトより)
渡邊剛(わたなべつよし)
北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学地球惑星システム科学科 講師
NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所理事長
横浜市生まれ。1994年、北海道大学理学部地質学鉱物学科卒業。
同大学大学院地球環境科学院修士・博士課程終了後、サンゴ礁に記録される地球環境変動をテーマに、オーストラリア国立大学、フランス国立気候環境研究所、ドイツ・アーヘン工科大学地質研究所、ハワイ大学などで研究に従事。
2014年より鹿児島県喜界島にNPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所を立ち上げ、理事長に就任。

―MiyuuさんとSakiさんが喜界島に初めていらっしゃったきっかけと、その時感じたことを教えてください。
Saki:知人から「喜界島でイベントするから踊りに来ないか」と言われたのがきっかけです。「喜界島ってどこだろう」と思ったのですが、二つ返事で「はい!」と言いました。その時のイベントが、一般社団法人ACBaLさんが企画された”サンゴの唄が聴こえる”でした。
渡邊:僕も何もわからず参加していました(笑)
Saki:みんなそうでしたよね(笑)誰も何もわからず…
Miyuu:それも元々西村さん(一般社団法人ACBaL代表)が私たちのポップアップに来てくださり、アクセサリーの横に沖縄で買ったサンゴの置物を置いていたのを見て、「サンゴでできた島があるんだけど来ない?」と言われたのがきっかけでした。その時まで喜界島の名前も知らなかったです。
渡邊:すごい!サンゴのパワーをもらって。
Miyuu:そうなんですよ。サンゴきっかけで行きまして、特攻花の話や高校生の話を聞いたりしました。
Saki:海の前で渡邊先生のお話を聞いたりもして。

2019年喜界島に来島した際のMiyuuさん・Sakiさん

―渡邊先生はMiyuuさんとSakiさんの第一印象はどうでしたか?
渡邊:フラダンスをする方で世界チャンピオンという話は聞いていたので少し緊張していたんですが、すごくフレンドリーで自然な方だなと思いました。僕がサンゴの話を砂浜でした後に、自然的な流れで踊ってもらったんですね。そしたら、場の雰囲気がパッと変わって。音楽とか人の喋りで場の雰囲気が変わるというのは経験したことがあったんですが、踊ることによって雰囲気がパッと変わるという経験は初めてしましたね。感動したし、驚きました。
Miyuu:覚えてます。スギラビーチで、渡邊先生がサンゴの話をしてくださったところから始まって、音楽を奏でる人もいれば、歌う人もいる中で、私たちも一曲踊らせていただきました。その時は真っ暗でもう海は見えなかったんですが、後ろから波の音が聞こえて、ちょっとした灯りがあって。その中で、さっきまでみんなでワイワイしていたのに、波の音が聞こえるくらいスッと静かになって。皆さんが静かに、見てくれているなというのは何となく覚えていますね。

―お二人が一緒にフラダンスをすることになったきっかけを教えてください。
Saki:私たちは15年前にフラのスクールで出会いました。そこでお互いにフラの大きな大会に出させてもらって優勝したんです。2016年には、日本ではオリンピックと呼ばれるようなハワイの大きな大会で日本代表として出場し、総合優勝もしました。これまで2人ともフラが好きでいろんな機会をもらい、優勝して功績ももらいましたが、今までいろんな人にもらってきたことに対してどうやって返していったらいいかと二人で考える機会があったんです。私が元々アクセサリーを作っていたこともあり、人に形として何か恩を返せたらいいなというところから2人で一緒に活動してブランドが生まれたり、フラをいろんなところで踊ることが増えてきたりという感じですね。

2019年夏、喜界島でアクセサリー作りのワークショップを行ったお2人


その際は喜界島のサンゴを使いました

―フラダンスといえばハワイのサンゴ礁や海との繋がりがあるようにも思いますが、フラダンスとサンゴ礁の繋がりが感じられることはありますか?
Miyuu:フラダンスは元々ハワイの伝統文化なので海とも密接なつながりがあります。今でも大会前はダンサーたちが海に入って身を清めてから、大会までの禁止事項を守って、清い体で大会に出るような教室もあります。私たちの教室では、大会で使うお花とかに自分の魂が乗り移るので大会後にゴミとしては捨てられません。人工物などを取り除いて植物だけにして、海に持っていってお祈りをしてから返すという儀式を毎回します。

―ではフラダンスを通して海やサンゴ礁に対して考えることはありますか?
Saki:最初に私たちは人だけではなく環境に対しても何か恩返しをしたいと考えていたんですが、少しでも私たちが作ったものが環境につながればいいなと思い、最初に販売したTシャツの売り上げを寄付しました。
Miyuu:やはりフラダンスをするときに身につけているものも自然からもらったものなので、何か自然に返したいという思いがあり、沖縄の保全活動をしている団体さんに寄付をさせていただきました。今は喜界島のサンゴ研さんを私たちも使わせていただいているので少しでも返せたらいいなと思い、寄付という形を取らせていただいています。

―ありがとうございます。研究所というと硬いイメージを持たれがちなのですが、お二人が研究所に初めて来られた時にどのようなことを感じられましたか?
Miyuu:もう渡邊先生のイメージでした。硬いとかはなかったですね(笑)
渡邊:そんな感じだったんだ(笑)
Saki:でも話を聞けば聞くほど、サンゴに対して知らなかったことを聞けて、サンゴがどれだけ私たちや地球に関係しているかということもわかりましたし、研究に対する先生の熱意が感じられました。
Miyuu:私は最初にスギラビーチで渡邊先生が私たちに投げかけた質問をすごく覚えています。「サンゴは動物だと思いますか、植物だと思いますか、石だと思いますか」という質問だったと思うんですけど。言われてみれば、動物にもなるし、植物にもなるし、石にもなるなと。サンゴはサンゴということしか考えたことがなかったので、サンゴがどういう仕組みでどう成り立っているのかを初めてぶつけられた感じがしました。海の中で大きなサンゴの塊を見て感動していたのですが、そのサンゴ自体が何なのかを考えるきっかけは渡邊先生の質問だったことを覚えていますね。

"珊瑚の唄が聴こえる"のイベントでフラを踊るMiyuuさん・Sakiさん

―渡邊先生がMiyuuさんとSakiさんからもらった発見はありますか?
渡邊:めちゃくちゃありますね。研究者や科学者は少し理屈っぽいところがあります。「100年後に残したい」といった想いは研究者としてありますが、研究者の強い想いだけでは理屈っぽくなってしまいます。その時に感じたままを表現できて、かつ伝えることができるお二人を見て、その中に我々が表現したいことのほとんどが詰まっていると感じました。自然だったり、海だったり。ハワイではサンゴは”生”の象徴だったりします。自然の中に人間が生まれてそこにいさせてもらうということを、感動を生みながら地域の人たちや未来を担う子どもたちに伝えていけている。研究者も発見を未来に伝えていきたいという想いがあり努力していますが、お二人はフラダンスを使って一瞬のうちにそういうことができていました。素晴らしいですし、すごく参考になるというか学ばせてもらいたいと思います。

―では先生も喜界島でフラダンスを(笑)
Miyuu:そうですね、一緒にしましょう(笑)
渡邊:結構練習したんだけどね。まだ手の振りが付けられてない(笑)

―MiyuuさんとSakiさんの魅力はたくさんあると思いますが、一言選ぶならなんですか?
渡邊:自分の世界観を作り出すということかな。そこに自分も入っていっちゃうよね。
Miyuu:かっこいい!(笑)
渡邊:もちろんそこに至るまでの時間と努力というのはあると思うんですが、何も持たずにパッとできるというか。僕もそうなりたいけどまだまだできないです。

―MiyuuさんとSakiさんが渡邊先生を一言で表すとどうですか?
Miyuu:難しいなー。いろんな面を持っているので。それこそ、渡邊先生自身も動物か植物か石かわからない(笑)研究者の面もあるし、陽気な面もあるし、いろんな面を持っていますね。
Saki:海かな?(笑)

アクセサリーを身に着ける渡邊先生

―新型コロナウイルスの影響もあったのではないかと思いますが、いかがでしたか?
Miyuu:フラはそもそも一緒に踊るということが大切だったので、コロナで誰とも会えないというのは、一緒に踊る楽しさを知っている分結構辛い時期で辛い方もたくさんいたと思います。だからこそ一緒に踊っていたあの空間がいかに幸せだったか、そこに音を奏でてくれる人がいることのありがたさ、見ている人がその場で反応を返してくれる場所があるということが幸せだったということ、そんな当たり前のことに改めて気づけるいい機会だったと思います。またこれが終わってそういう世界に戻れるようになった時にありがたみを忘れないように、さらに噛み締めて、爆発させて行いければいいなと感じています。
Saki:コロナでいろんなことが変化して、苦しんでいる人たちの声も聞こえてくるのですが、その中で私たちが発信したことが発見や励みになったという声もたくさんいただいて、だから伝えていかなきゃいけない、やめちゃいけないということも感じました。ただやっているだけではなくて、どうしていくかという方向に考え方がシフトしました。自然環境に対しても意識が高まってきている時だし、いろんなことが不便になって全てのことがシンプルになってきていると思うので、考え方や物の見方をシフトするいい機会にはなっていると思います。

―渡邊先生も今のMiyuuさんとSakiさんのお話に共感される部分が多いのではないでしょうか?
渡邊:コロナで多くのことが変わって、行きたいところにいけないことが辛いと感じる時期もありましたが、本当に大事なことを内省する時間をもらえたのはよかったですね。あと、ちょっとずつ動けるようになった時に、どこに行く・誰と会うということをよく考えるようになりました。動けないことが当たり前になって、動ける時に何をするかと問われたら、大事なものを自然と考えるようになりましたね。

―コロナ禍があけて、Miyuuさん・Sakiさんがサンゴ研と一緒にしたいこととしてどのようなことがありますか?
Saki:いろんなことをやってみたいです!
Miyuu:サンゴを使ったアクセサリーのワークショップはまたしてみたいなと思いますし。
Saki:喜界島の人たちがもっと楽しめて、喜界島のことをもっと知るきっかけになったらいいと思いますし。発信したいと思ってくれる人が増えるようなことができたらいいですね。

―渡邊先生はいかがですか?
渡邊:めちゃくちゃありすぎてね(笑)僕はもう勝手にお二人が僕の中にいるような感覚がしています。何か新しいことをやってみたいと思ったりしたときに、フラダンスだったらどうなるんだろうと考える癖ができました。サイエンスとアートの親和性が高いだろうと考えて、アーティストの方と一緒にいろんなことをやってみようと試みていて、その中で最近は平田オリザさんに教えてもらいながら、研究者と地域の人が一緒に演劇を作るという取り組みをしています。そこで平田さんにもよく言われるのが、演劇は人が作るからその場にある音楽や芸能といった物も大切にしながら作っていかなければならないということ。そんな時、僕たちは今まで考古学者や人類学者を連れてきて、たくさんデータを集めて学問的にしようとするんですが、お二人のフラダンスを見て我々にないところを補ってくれるような気がしてます。「サンゴの唄が聴こえる」で知り合ったアーティストさんともまだ繋がりがあるので、また同じようなイベントができたらいいなと思いますし、一方でいろんなプロジェクトが動いているので、これフラダンスでやったらいいだろうなと思うこともいっぱいあります。コロナが終わったら爆発させましょう!
Miyuu:はい、爆発させましょう!

Miyuuさん

―今、お話を聞いていて純粋に疑問に思ったんですが、お二人がフラダンスを始めたきっかけって何ですか?
Saki:詳しくは覚えていないんですけど、私は3歳の時に祖母が社交ダンスの繋がりでフラダンスをしていて、そこで祖母が孫にもフラをさせたいと思って教室の先生に頼み込んだことがきっかけです。
Miyuu:私は家族でハワイ旅行に行った時に、ワイキキのビーチで無料でやっているフラダンスのショーを見て、子どもながらに老若男女が輝いているこの踊りは何だと印象に残って、日本に帰ってきてから小学校に上がる前に母から何か習い事初めていいよと言われた時にフラダンスをしたいと言って、5歳の時に始めました。私もSakiちゃんも違う教室でフラを習っていたんですけど、15年前に同じ教室に入って同じクラスになって、年が近いこともあってそこからずっと一緒に踊っています。
―3歳と5歳から続けているということもすごいですが、フラダンスを通した繋がりがここまで残っていることが素敵ですね。

―初めて聞きますが、渡邊先生が研究者になろうと思ったのはなぜですか?
Miyuu・Saki:それ聞きたい!
渡邊:中学生の頃には科学者になりたいとは思っていましたね。未知のものを明らかにするということに漠然とした憧れがあったんだと思います。だけど、未知のものにはなかなか出会えないし、発見をするということは難しい。博士号をとるのに気がついたら30年くらいたっていました。そういう意味では、3歳・5歳から始めて早いうちから才能が開花するということは羨ましいですね。フラダンスをする上で大事なものって何ですか?
Miyuu:フラは元々ハワイの伝統文化なので、違う国の文化を継承させてもらってます。今はフラダンスにもいろんなスタイルがありますが、教わったことを道から逸れないように正しく受け継いでいくということは一つ大事なことだと思います。
渡邊:伝統を正しく受け継ぐということなんですかね。

―やめたいと思った瞬間はありますか?
Saki:フラを踊るということを人生ではじめてしまった瞬間からフラはやめられないんですよね。気づいたら人生の一部になっていました。フラから離れると人生がダメになっていくし、フラに人生が現れるというか、もうフラはやめられないですね。
Miyuu:辞めたいと思うことがあっても、「食べて・寝て・踊る」といったように毎回引き戻される。
渡邊:フラダンスは人生そのものになっているわけですね。
Saki:ハワイの人たちもフラの曲を通して、何かを伝えたり時代を埋め込んだりするので、踊る人たちも表現力が求められますね。喜界島で踊った時もその空間で感じ取ったことがパッと出ていく感覚でした。

―ではMiyuuさんとSakiさんから渡邊先生に聞いてみたいことはありますか?
Miyuu:なぜサンゴなんですか?
渡邊:今思うとサンゴでよかったなと思いますが、成り行きかもしれません(笑)それも含めて縁だと思いますね。研究者になりたいという思いはあったものの何をしたいかはわからずにいた時に「若者とバカ者は北を目指す」という流れの中で、北海道大学でたまたま出会ったのかもしれないですね。
Miyuu:出会うべくして出会ったんですね。
Saki:喜界島みたいな研究所をもっと増やしていこうと考えたりしないんですか?
渡邊:増やしたいとは思っていますね。これまで我々がしてきた研究者やアーティストが子どもたちに残していこうという動きが普遍的にいいものであればどこででもできるはずです。今は奄美群島の島々に展開していますが、実際言葉が通じない海外でも根本は一緒だからできるんじゃないか思っています。ぜひそういうところにも来ていただきたいです。やっぱり踊りは言葉がなくても通じるので可能性を感じています。

Sakiさん

―フラダンスは、人が人を介してつなげてきたものですよね。今、研究所では「100年後に残す」を理念に掲げています。お二人が未来に残したいものを教えていただきたいです。
Miyuu:そもそもフラ自体がそういう想いが繋がってきたものなので、それを私たちもつなげていきたいですね。フラって素晴らしいんだよといっても、どれだけの人に伝わるかはわからないですが、幼いころの私たちみたいに誰かにピカッと光って、何かを感じて、その子がまた次の世代へ繋げていくという流れが私たちの知らないところでも起こっていったらいいなと思います。フラは文字がない頃からあると言われていて、ハワイの神話や王族のことを今の私たちが踊りを通して学んでいるので、私たちが何かを作り出せるかと言われれば難しいけれども、次の世代につなげていくことはできると思います。歴史の通過点の一人になれればいいですね。
Saki:私も伝えるのに何が大事かと考えると、”知る”であったり、”見る”であったり、”感じる”であったり、最近では”悟る”ということが大事だと思います。人のありがたみを悟るということがフラで表現できると、また人に繋がって波紋みたいに繋がっていくなと思いますね。

−最後に渡邊先生がこれまでのお二人とのつながりやこの対談を通して感じたことを教えてください。
渡邊:はい。僕がよく子どもたちにいうのは、研究は「感じる・見つける・伝える・残す」ということです。今は情報がいっぱいあるので一見するとどんな知識も手に入るような気になりますが、実際自分自身でそれを消化するということは難しいです。情報があることは悪いことじゃないけど、自分ごとにならない。このミスマッチが起きていると未来に伝えたいことが結局は残らないんじゃないかなと思っているんですが、お二人の「フラを続けたい」「フラは人生の一部」というお話を書くと安心するし、情報に載せられない何かを届けられるんじゃないか、そんな力があるのではないかと思います。今後も一緒に活動したいなと改めて思いました。


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