見出し画像

シューズのサイズ悩み解消に向け、業界の常識を変える!

株式会社DIFF. 代表取締役社長 清水 雄一さん

《原体験》サッカーシューズが足に合ってない?

サッカーに打ち込んでいた中学・高校時代。私は、ある慢性的な悩みを抱えていました。

それは、なぜか右足の親指の爪だけ内出血することです。内出血しては爪が剥がれる…その繰り返しで、スパイクをいろいろ変えてみたりしたものの解消されず、ガマンしながらサッカーを続けていました。

やっと原因がわかったのは、大学生になってからでした。左右の足サイズを測る機会があり、右足が左足よりも5mmほど小さいことがわかったのです。

要は小さい方がシューズの中で足が動くため、爪に衝撃が加わり、内出血を起こしていたんです。ただ、この原因がわかったところで解決策は特になく、お店に相談しても「サイズ違いで2足買っていただくしか・・・」という話に。悩みは解消されないまま、月日だけが流れました。

大学卒業後は「モノづくりがしたい」という思いと、その中でもやはり「サッカーシューズを作りたい」という思いから、スポーツ用品メーカーに就職。さまざまなスポーツ用品の仕事に関わりました。

転機が訪れたのは、入社から4年ほど経った頃。私は当初の望みだったサッカーシューズの開発に関わることになりました。そこで足の形やサイズに関するデータを調べたり、シューズ職人の製造技術を知ったり、流通の仕組みを学んだりした私は、それらの知識と自身のかつての悩みを結びつけていました。

足のサイズが左右で5mm以上違う人は約5%(20人に1人)もいる…

店舗で勧められるサイズが左右で異なる人は約20%(5人に1人)…

職人は足にフィットするシューズを作るため膨大な手間をかけているにも関わらず、履く人の足サイズに差があれば、その手間が顧客満足につながらないことも…

でも、シューズは左右セットで流通するのが常識なので、仕方ない…

こんなモヤモヤを抱いている中で浮かんできたのが「片方ずつ別サイズでシューズを販売できないか」というアイデアでした。「左右セット販売」という業界の仕組みを変え、片方ずつ買えるようにすれば助かる人は増えるはず。そんな思いが強くなり、私は会社の新規事業としてアイデアの実現に挑みます。

しかし、事業化に取り組む中で次のような思いも抱くようになりました。
「私の会社のブランドだけで実現しても、すべての困っている人を救うことはできない。他のメーカーも巻き込んだ事業にしないと意味がないのではないか?」

いつしか私は自分で起業して、この夢を実現しようと考えるようになります。そして、経済産業省の起業家支援プログラムに採択されたことや、会社に勤めながら起業する「出向起業」への支援制度を知ったことで、私は起業を決意しました。

入社からちょうど10年が経った頃、私は株式会社DIFF.を設立。それから約1年半。実際に起業してみて、学んだことがたくさんあります。

「自分で会社のことをすべて決める」という自由と責任感は、実際に経営してみないと味わえないことでした。良いことも悪いことも、すべて結果として自分にふりかかってくるため、意思決定の経験値を大幅に増やすことができます。

また、事業を形にするための仲間も自分で集める必要がありますが、自分の理念に共感してくれる人が仲間に加わる喜びは、起業してみないと味わえなかったものです。

そして何よりの喜びは、自分たちのサービスを必要としてくださるお客様の存在です。設立から約半年後、弊社はシューズを片方ずつ別サイズで販売するECサイトをオープンしましたが、翌日の朝に最初の1足が売れたんです。

私はすぐにお礼のメールを送り、さらに電話でもお話しました。そこで「シューズが届くのを楽しみにしています」と言っていただき、自分たちの掲げる理念が間違っていなかったことに大きな喜びと自信を感じました。

しかし、足の悩みを抱えている人は世界中にまだまだいます。私たちだけですべて解決することはできないので、たくさんの人や企業を巻き込みながら事業を前に進め、自分の足に最適なシューズを当たり前に買える世界を築いていきたいと思います。


《現在の事業》左右別サイズでシューズを買えるEC運営

2023年4月に、シューズを左右片方ずつ購入できるECサイトをオープンしました。現在はサッカーシューズとランニングシューズを販売し、ラインナップの拡大とユーザーの増加に向けてチャレンジを続けています。

同時に、シューズを左右別サイズで買うことを世の中の「当たり前」にするため、企業や消費者を巻き込んだコミュニティづくりにも力を入れています。私たちの事業に共感してくださる人が増えることで業界の常識が変わり、「地球上のすべての人が自分に合ったシューズを簡単に手に入れられる世の中にする。」という私たちのミッションが達成できると信じています。


《10代の皆さんへメッセージ》

私がおすすめしたいのは、自分の夢や興味のあること、やってみたいことを「身近な人に伝える」ということです。まずは誰かに向けて発信することで、夢の実現に向けて動き出せると思います。

ただし、重要なのは「言ったからといって、必ずしも最後までやり続けなくてもいい」ということ。別に途中でやめてもいいし、一度決めたことを変えてもいいと思います。

ただ、とりあえず動き出してみないと、自分に合ってるのかどうかもわかりません。だから宣言することが大事なんです。

私自身、「サッカーシューズを作りたい」と10代の頃から周りの人に言い続けてきました。でも今は「経営者」という全然違う仕事をしています。10代の頃、自分が将来起業するなんて夢にも思っていませんでした。

将来、自分の考えがどう変わるかなんてわかりません。だから「絶対にこれをやり続けないといけない」という制約を自分にかける必要はないと思います。今、持っている興味・関心を大切にして、それを発信し、めいっぱい楽しむことが大切だと考えています。

また、私が10代の頃は「起業」なんてものすごく遠い話でしたが、今は学生のうちから起業する人も増えています。せっかくそんな時代に生きているので、大きなことにチャレンジしている人と積極的につながってみてはいかがでしょうか。

「こんなことがしたい!」と熱量を持って発信し、同じく熱量を持った人とつながれば、必ず興味を持って聞いてくれると思います。若さの特権があるので、大人も応援してくれるに違いありません。それをくり返していれば、自分が本当にやりたいことが見えてくると思います。

余談ですが、私は若い頃に簡単なバイトの仕事もこなせず、何度かアルバイトをクビになりました(笑)。それでも今は会社を経営しているので、皆さんも心配することはありません!

(取材日:2024年5月21日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?