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季語哀楽

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季語をテーマにした投稿まとめ。 365日が目標。
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#恋愛

春日傘

春日傘

今までで思い出に残っているプレゼントは、と言われたら思い当たるのが、実は折り畳み傘だったりする。
それは、いつぞやの4月の誕生日に、突然、郵送で届いた。
花緑青の目を引く色使いに、大判のアネモネ柄。

なぜ、印象深いかといえば、デザインが気に入っているのもさることながら、それは半年ほど前に彼が住む関西へ遊びに行ったときに、お店で一緒に眺めていたものだったからだ。色違いと迷った挙句こっちがいいな、と

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花筵

研究室の仲間と花見に来ていた。新歓も兼ねた、お酒も飲めるやつ。
桜は既にもう散り始めていて。ピンクの地面に敷いたシート。僕の隣には二つ下のあの子が座っていた。
初めて配属されてきた時から、可愛いなと思っていたあの子。

どうやら彼女はあまりお酒が強くないらしい。ほろよいの缶酎ハイも空け切らないまま、頬は赤みを帯び、心なしかいつもよりにこにこと笑っていた。僕の方も、久しぶりの楽しいお酒の席に、かなり

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花冷え

花冷え

今夜、蛍烏賊とりに行こうと思うけど来る?

突然のLINEに、まだ職場にいた私は浮き足立つ。前に行きたいと言ったの覚えててくれたんだと言う喜びと、明日も仕事の最中、ちょっと流石に急すぎやしないかと社会人の理性が働く。されど、いまだ見たことのない景色への好奇心に負けた私は、結局二つ返事でOKしてしまった。

満開の夜桜を余所に、私たちは深夜の海へと向かった。
いわゆる、花より何とやらである。

暖か

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蕗の薹

蕗の薹

蕗の薹。
早春、周囲を葉に包まれて顔を出す、淡緑と萌黄色のつぼみたち。

大学時代、あなたの恋人になってから、
車を買うとき、就職先を決めるとき、自身のアパートを契約するとき、そんな人生の決断をする度に、私は無意識になるべく身軽でいようとしていた。
あなたが呼んだら、いつでもついていけるように。

これまでの一つ一つの思い出が玉のように連なり、身を寄せ合っては私を形作っていた。

あなたに恋い焦が

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