シェア
KH1992
2020年7月29日 09:04
熱が引くまでに一週間、熱の花が治るのにもう一週間を要した春風邪は、元より世間との隔たりを感じさせていた僕を、更に奥まった場所まで追いやってしまったらしい。 数人の友人からは、ある時を境にさっぱりと連絡が途絶えてしまい、稀に姿を見せるのは、病人に自らの悩みを相談しにやってくる斉藤君くらいであった。彼が手に下げる袋の中、スポーツドリンクや菓子類、カップ麺などの非常食については、台所に保管された後
2020年7月28日 20:27
通りを歩く人々は、次第にその身から厚い上着を剥がしていくものの、未だ冷気を感じる盆地に残った空気、新年明けて早二ヶ月が経過したにも関わらず、年始の余韻からなかなか抜け出せぬ街並み。そんな要素が僕の腰を重くさせるのは当然の事だった。 生駒山から煙のように巻き上がる花粉は目と鼻を執拗に刺激する。マスクをして頻繁に目薬を差すこの姿を見た斉藤君が「なんか俺まで目が痒くなってくるなァ」と文句を言うのも