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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
6. 令嬢、逐電する ④
「お嬢様、お待たせしまして大変申し訳ありませんでした」
イーサンとデビットが馬たちに飼い葉と水を与え、身体を労わって戻って来た時はすっかり日が暮れていたのである。
部屋で待っていたアメリアは笑顔で答えた。
「いいえ、普段した事も無い馬の世話をしてくれたのですもの、お疲れさまでしたわ二人とも! 私とても嬉しく、そして心強く思っていますのよ! ただ…… この宿でお食事を頂ける時間が過ぎてしまったらしくて…… 今夜はお食事が頂けないらしいのです…… 私のせいで皆に辛い思いをさせてしまう事が、心苦しくて……」
アメリアの表情が曇った瞬間、三人が慌てたように言ったのである。
「いいえ、勿体ないお言葉でございます、我々など何日食べなくともお気に掛けて頂く事ではございません! 」
「そうですとも! いや、私たちが飢えようとも、お嬢様のご夕食が…… 何か食べて頂かなければいけませんわ! デビット? 」
「ああ、その通りです…… そういえば…… 確か、居酒屋、とか…… パブリシャスとか言う酒を飲ます店があると聞いた事があります…… それらの店舗では食事も提供しているとかいないとか?
どうですか、イーサン、マリア! お嬢様をお連れしてみては? お食事を摂って頂けるのでは無かろうか? 」
「ほう、そんな場所があるのか」
「安全ですの? 心配ですわ」
心配するマリアの声に答えたのは他ならぬアメリアの声である。
「面白そうですわね! 行ってみましょうよ! 楽しそうでは無くって? 」
鶴の一声で居酒屋か酒場に向かう事に決定してしまった一行は、宿のフロントで情報収集した結果、まだこの町には貴族の紋章で飲み食いできる飲食店が存在しない事を知り、言われるままにこの場で両替して貰った金貨一枚を持って一番近い飲み屋に向かうのであった。
因みに金貨一枚分の両替手数料はボリ捲りの銀貨六枚であったが、世間の相場を知らない一行の中に異論を挟む者などいる訳も無く、気持ち良くボラれて行くのであった。
「らっしゃーい! 」
「あの、四人分のディナーを頂きたくて来たのですが…… 宜しいでしょうか? 」
マリアの言葉に気さくに答える店員の声。
「喜んでぇ! お客さん四人様ぁ! テーブル席にご案内ですぅ! 」
「「「「四人様! ようこそ! 喜んでぇ! 」」」」
イーサンが満足げに言う。
「お嬢様、庶民たちも喜んでいるようでございます! どうぞ、お席に着かれませぇ! 」
「ええ、イーサン、人々の元気な姿を見る事ができて私も嬉しいですわ! 」
言いながらイーサンが引いた椅子に腰を降ろすアメリアである。
今日は珍しく二頭立ての質素な馬車で疲れてしまっていたのであろう、ややはしたなくストンと座ってしまったアメリアに居酒屋の店員のお姉さんは聞くのであった。
「今日のお料理は、鶏肉か牛肉、お魚の煮つけも数人分残っていますけどぉ、どうなさいますかぁ? 」
アメリアが答えた。
「ディナーを頂ければいいのです、お願いできますか? 」
言われたお姉さんはキョトンであったが、頑張って答えたのである。
「チキンで? チキンで宜しかったのでしょうか? 」
「そうですわね…… それで宜しくてよ…… キチンで……」
まあ、どこにもキチンなんて料理は存在しないだろう、でもお姉さんは流してチキンを持って来てくれたようだ。
モグモグ美味しくて柔らかいチキンを食べながら、隣の席に座っていた冒険者風の庶民の声に耳を傾けていたアメリアは不穏な言葉に息を飲むのであった。
「なあ? お前聞いたか? 魔王、ザトゥヴィロが復活したんじゃないかって噂……」
「ああ、聞いているが…… ザトゥヴィロだろ? 流石に嘘だと思っていたが…… それ、本当なのか? 」
「まあ、魔王ですって! 」
思わず声を上げてしまったアメリアに冒険者風の男たちはギョッとした視線を向けて会話を中断したのである。
「お嬢様、どう致しました? 魔王、でございますか? 」
食事中に大きな声を出したアメリアにマリアが心配そうにしながら声を掛ける。
因みにアメリアの食事中はイーサンとマリアは彼女の後ろに立ったままで、デビットはテーブルの反対側で警護の目を光らせていた。
アメリアはマリアに対して答える。
「今こちらの方々がお話になっていらっしゃったのよマリア、魔王が復活したのですって! 恐ろしそうなお話では無くって? さあ、あなた達も聞いてごらんなさい、ではお二方、お話を続けてくださいな、どうぞ」
「あ、ああ、まあ聞きたいってんなら話すけどよ、只の噂かも知れないぞ? と、ところでお嬢さんよ、アンタの連れの人達ってなんで立ったままなんだ? なんか、落ち着かないんだが……」
男の言葉に周囲を見回したアメリアはやや顔を赤らめながら答える。
「まあ、ここでは全員着席するのがマナーでしたのね、失礼いたしましたわ、マリア、イーサン、デビットも席に着くのです、こちらの方々の様にお茶会の要領で一緒に食べる方式での食事を実践してみる事と致しましょう、これで宜しくて? 」
「ああ、実はな────」
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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