【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
5. 令嬢、逐電する ③(挿絵あり)
「へぇ~! 本当に出来たばかりの街なんだなぁ! 」
デビットが感心した声を上げた通り、夕方近くなって辿り着いたルンザの街は、木製の質素な塀や柵で囲まれ、その中に在る建物も、目ざとい商人や投資家達が青田買いしたであろう出来立ての店舗を除けば、長旅をするキャラバンのテントの様な簡易住居が立ち並ぶ非常に簡素な建物で溢れ返っていたのであった。
住居であろう建物と同様な、布と粗末な柱や板で拵えられた露店の類も、街のそこかしこに点在している。
「まあ~! マリア! 見て御覧なさい! もう夕方だと言うのに、人々が露店で買い物をしているわ! 不思議ね、お家に帰らなくても良いのかしら? 」
貴族街では、夕暮れ前には全ての照明の類は火を消す。
朝日と共に目覚め、日暮れと共に休む、貴族とはそういう物だと教えられてきたアメリアならではの言葉であった。
貴族街では夕食の準備が整い始める時間であるのだから、初めて市井の営みを目にしたアメリアの驚きも当然の事だろう。
「お嬢様、私も新兵の頃に経験して驚いたのですが、民はこの夕暮れからが楽しい時間であるようで、我々貴族とは違い、暗闇の中を蠢く物なのですよ! 酒場や娼館で羽目を外し過ぎた者を捕まえる為に出動した事もありましたよ! まあ、私の場合は二週間だけの研修でしたが! 」
デビットが懐かしそうに言い、イーサンが感心したように返した。
「ほう、デビットは庶民の暮らしに詳しいのであるな、これは頼もしい、この領地までの旅では貴殿に頼らせて頂くとしよう! 」
マリアが何故か誇らしそうに続いた。
「ええ、デビットはこう見えて世情に詳しいんですのよ、いつだったか金貨? 貨幣と言う物も使用した事もあるのだとか? そうでしたわね? デビット? 」
その問い掛けに胸を張って答えるデビットは嬉しそうである。
「ああ、金貨な、金貨! あれは紋章の代わりにもなるらしい大変便利な物だと聞いた事があってな! 試しに使って見た事はある! 金属を平たく丸く加工してありましてな! 紋章を持たない庶民たちはそれで売り買いの対価にしているのですよ! ははは、使う際は緊張しましたよぉ! 」
イーサンもアメリアもビックリ顔であった。
「な、なんと! たかだか金属片が紋章の代わりに…… 本当なのか? 」
「信じられませんわ、デビット! いつもの冗談では無いのですか? 」
慌ててデビットが答えた、兜を上にずらして顔を見せながらだ、これは彼が真剣な時の行動であった。
「本当ですって! この剣を求めた時に金貨? と言う奴で支払ったんですよ! 確か四十枚だったでしょうか? それを渡したら、店主のドワーフは笑顔でこの逸品を私に譲渡したのです! 本当の事ですよ! 」
アメリアは顔を顰めて言う。
「金属片で、ですか? うーん、俄かには信じられませんわね、本当の事なのですか? マリア? 」
「ふふふ、どうでしょう? デビットの言う事ですからね? お嬢様、信じてはいけませんわ! 」
「おいおいマリア! そりゃないだろうぉ! 信じて下さいよぉ、お嬢様ぁ! 」
「ははは、普段の行動のせいだな! デビット! これに懲りたら少しは冗談を控えるのだな! 」
「そうですわね、ふふふ」
「うふふ」
「ああーあ、分かりましたよ! ちぇっ! 」
楽しく話している内に、漸く貴族の紋章で宿泊する事が出来る宿屋、王家に与えられた印を掲げたそれなりに立派な一軒を見つけたアメリアたちはチェックインを果たすのであった。
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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