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ルイス・キャロルの「アリス」考察

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『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』および関連作品の考察。 作中のパズルを解く記事が中心です。
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#チェス

『鏡の国のアリス』のチェス問題⑩(手順のルーツ)

「フィドルディディーの謎」の続きです。

詩のメイン部分(再掲)①Says the fly, says he,
②"Will you marry me,
③And live with me,
④Sweet bumble bee?"

⑤Says the bee, says she,
⑥"I'll live under your wing,
⑦And you'll never know
⑧That

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『鏡の国のアリス』赤の女王の年齢は

赤の女王についての追加項目です。

『鏡の国のアリス』第9章の女王たちの試験の場面で、赤の女王がアリスに言う台詞、「この国ではたいてい昼も夜も一度に2つか3つある」は、チェス回答手順と詩の関係を示していると考えられます。
(1手=複数行とか数手=1行とか)

しかし、「私が貴女の5倍お金持ちで5倍賢いのと同じ」の方は、赤の女王が未来のアリスとすると「年齢が5倍」という意味ではないでしょうか。
(原

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『鏡の国のアリス』赤の女王の正体は

第9章のアリスの台詞
「イングランドの歴史上一度に1人より多くの女王がいたことなんてない」

3人いるクイーンのうち、1人がアリス、白のクイーンがヴィクトリア女王とすると、赤のクイーンは一体何者なのでしょうか。

第9章Queen Aliceの宴会は
アリスが来る前から始まっていました。
ならば宴会の主催者は?

宴会で給仕に命令を出していたのは赤の女王。その後アリスも給仕に命令を出します。

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『鏡の国のアリス』登場人物表の意味

『鏡の国のアリス』初版のチェス問題に添付されていた登場人物表について考えます。

チェス回答手順の駒たち白のポーン
d2に(リリー)とあるのでアリスの初期位置がd2であることを示します。
横隣のe2にfawnもいます。

白のクイーン
「白の女王」はd1に配置されていますが、横隣のc1に「羊」があります。
4、5、7手目の動き及び白のポーンとの関係を考えると初期位置はc1の方になります。

白のナ

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『鏡の国のアリス』白の王の「4207」

『鏡の国のアリス』第7章の冒頭で、白の王が座って兵士の数をメモしている場面。

"Four thousand two hundred and seven, that's the exact number," the King said, referring to his book,
(「4207人、これが正確な人数だ」と王は手帳を見ながら言いました)

「何千人もいたと思う」と言うアリスに王が返す

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑨(詩との関連5)

白の騎士の詩とチェス手順との関連です。
この詩も8行×8連+19行×1連+挿絵1枚→84で42や21の倍数になっていますね。

対応関係を見ていきましょう。

第1連=1~3手目
1・3・4行目→赤のクイーン、白のナイト、白のポーン登場
7・8行目のthrough→巻頭の問題図に添えられたチェス手順の2.Alice Through Q's 3d。→3.○d4

第2連=4~7手目
1行目butte

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑧(詩との関連4)

第9章で白の女王が披露する「fishの謎々」について述べます。謎々の答が「牡蠣」だというのは有名ですね。
(英語で貝をshellfishということから)

この謎々詩とチェス手順の関連について。

" 'First, the fish must be caught.'
That is easy: a baby, I think, could have caught it.
'Next, the f

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑦(詩との関連3)

The Warlus and the Carpenter双子兄弟が歌う「セイウチと大工」の詩とチェス手順の関連です。
実はテキストによって挿絵の位置がまちまちなので少し曖昧になってしまうのですが。

詩18連+挿絵3枚→21手ですが、挿絵の位置がハンプティ・ダンプティの詩のような「詩の中に挿絵が埋め込まれている」タイプなのか、連と連の間に入るタイプなのか不明。

前者なら連と挿絵がセットでチェス手

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑥(詩との関連2)

引き続き、詩との関連です。

ハンプティ・ダンプティの詩ハンプティ・ダンプティがアリスに聞かせる詩は、二行連句が20連と挿絵が1枚。
20連+1枚→21手で、詩の1連と挿絵の1枚がそれぞれチェス手順の1手に対応していると予想されますが、少し違うようです。

第15連が、1行目~挿絵~2行目という順序で配置されていて、詩と挿絵がセットで2手に相当するという意味のようです。

チェス手順の15手目は1

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『鏡の国のアリス』のチェス問題⑤(詩との関連1)

チェス手順と詩との関連です。今回は"Jabberwocky"の第2連~第6連について。

4行×5連=20行が基本的に1行=1手の比率でチェス手順に対応しています。

1行目(第2連1行目)=1.○Nd4
Beware the Jabberwock, my son!が「花壇の中央の木が敵を追い払う」に対応。

3行目(第2連3行目)=3.●Nd5
Beware the Jubjub birdが「

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『鏡の国のアリス』のチェス問題④(日付との関連)

今回はチェス手順と日付との関連です。

1手=1日対応では、21手のチェス手順はLentの後半3週間に相当しています。

Lentは、元々40日間の断食期間だったのが、期間中の6回の日曜日を「断食を休む日」にして46日間になったという経緯があります。

白の女王の台詞「breakfastの前に6つのあり得ないことを信じた」の「あり得ないこと」というのは、Lent期間中の日曜日のこと。
そもそも朝食

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『鏡の国のアリス』のチェス問題③(時間との関連)

チェスの回答手順と時間の関係です。
1手=1年、1手=1日、1/2手=1時間の3種類がありますが、今回は「年」と「時」です。

1手=1年Alice Liddellは1852年5月4日生まれ。
そのアリスの半生と『鏡の国』のチェス手順が連動しています。
第1手=1852年、第2手=1853年、・・・第21手=1872年という対応です。

1852年(1.○Nd4)
アリス・リデル生まれる(数え年1

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『鏡の国のアリス』のチェス問題②(物語との関連)

回答手順と物語の関連(主なもの)1.○Nd4 花壇中央の木、「バウワウ」①
1.●Qh5 赤の女王「2,3,4,5」と数えて去る
2.○Nf5
2.●Nf6
3.○d4 双子との会話、"harf past four"
3.●Nd5 ナイチンゲール来襲②
4.○Qc4 白のクイーン、赤のナイトを攻撃
4.●Nf4 白のナイト孤立(牢の帽子屋)
5.○Qc5 白のクイーン、白のナイトを守る
5.●Ng

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『鏡の国のアリス』のチェス問題①(回答手順)

『鏡の国のアリス』巻頭のチェスプロブレムへの私の回答です。
『鏡の国』は、この回答手順を踏まえないと作者が表現しようとした内容のうちの半分も理解できないのではないかと思います。
来年2021年は『鏡の国』刊行から150年。
『不思議の国』は大好きだけど『鏡の国』はちょっと、という人もこれを機会に挑戦してみては如何でしょうか。

回答手順 1.○Nd4・・・1.●Qh5
2.○Nf5・・・2.

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