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「カサブランカ」レビュー

公式動画

監督

マイケル・カーティス

キャスト

ハンフリー・ボガート
イングリッド・バーグマン
ポール・ヘンリード
クロード・レインズ
コンラート・ファイト
ピーター・ローレ

前提知識

1942年公開の映画。
名優、名台詞、名曲と三拍子そろったこれぞ映画という作品。
今観るとややチープなところもあるけど、教養として観ておいても損はない。

ストーリーはシンプルだが、時代が時代なだけに背景を知らないと理解できないところがあるので以下簡単に説明しておく。

ナチスドイツのフランス侵攻と占領

1940年、フランスはナチスドイツの侵攻を受け、6月から一部ドイツとイタリアの占領下に置かれることとなった。
そこから42年のフランス全土占領までは、一部自由区域があったらしい。
「カサブランカ」は1941年のお話なので、ナチスによるフランス全土占領直前にあたる。
簡単に言うと、ドイツがめっちゃイキってた時期。
ちなみに、ナチスのホロコースト(ユダヤ人虐殺)が始まったのが1943年なので、作中で全く触れられていないのは自然。

カサブランカってどこ?

カサブランカはモロッコの一都市で、1912年からフランス領となった。
つまり、当時カサブランカはフランス国内ということになる。

ポルトガルのリスボンにわりと近いというのも映画のストーリー上重要なので覚えておこう。

ヨーロッパ脱出

フランスはおろか、ヨーロッパ全土を掌握する勢いのナチスを嫌って、フランス国民の多くはアメリカへの脱出を図る。
当時は中立国のポルトガルからしかアメリカへは渡れなかったらしい。
ナチス占領下でフランスから陸路でポルトガルへ向かうのは難しい。
そこで人々はまず、パリから南仏マルセイユを目指し、そこから北アフリカアルジェリアのオランへ。

そしてオランから陸路で仏領カサブランカを目指すようになる。

最後にカサブランカからリスボンに行けさえすればヨーロッパ脱出が可能となるからだ。
しかし、カサブランカにももちろんナチスドイツの支配は及んでいる。
そして、当時はユーロもないからポルトガルは「外国」、渡航にはビザが必要。
戦時下のことなので、このビザを手に入れることは容易ではない……
だいたいこのへんが話の前提。

人物相関図

核心的なところはだいたいこんな感じ。

リックが闇ビザみたいなのを持っていて、それをイルザが欲しがっているのだが、当時はビザの譲渡が可能だったのだろうか?
ちょっとその辺は分からない。

「君の瞳に乾杯」

本作といえばなんといっても「君の瞳に乾杯」というキザな台詞。
「君の瞳に○○」とか「○○に乾杯」みたいなキャッチコピーの元ネタはたぶん本作に由来する。
さすがに令和の時代には古いが、90年代ぐらいまではこのキャッチコピーが世に溢れていた。

さてこの台詞だが、英語だと「Here's, looking at you kid」。
直訳するとHere'sは「乾杯」でOK。
Here'sの後に何かあれば「○○に乾杯」となる。
Looking at youは「見ている」だが、「神様があなたを見ている」という意味でもあるそう。
kidは年下の子などに使う呼び方。
アーティストがファンのことをkidsと言ったりするあれ。
これをふまえて直訳すると、

「お嬢ちゃんに乾杯」
「乾杯、君を見てるよ、お嬢ちゃん」
「乾杯、君はいつも見守られているよ」

といった感じ。
これを「君の瞳に乾杯」と意訳したのが素晴らしい。
この台詞を聞くだけでも価値があるだろう。

「As Time Goes By」(時の過ぎゆくままに)

本作では 「As Time Goes By」という曲がテーマソングとなっている。
この曲は後にジャズスタンダードとなり、ジャズ歌手が好んで歌う楽曲として知られている。
ジャズミュージシャンは必ず一度は演奏する曲。
個人的にはチェット・ベイカーの歌が好き。

デクスター・ゴードンが映画「Round Midnight」で演奏しているのもいい。

この曲も影響力が強く、個人的にはテレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」も「As Time Goes By」の影響があったのかなと推察している。

ちなみに、鳥羽一郎の「カサブランカ・グッバイ」はカサブランカの花がモチーフらしいが、映画もイメージできるので全く無関係ではない気がする。

カサブランカという飲食店

あと、モロッコとそこまで親交が深くもない日本にやたらと「カサブランカ」という名前の店が多いのは恐らくこの作品の影響だろう。
なんか渋くて格好いい印象だし、作中バーやレストランのシーンが多いので。
改めて考えると相当影響力のあった映画だということがうかがえる。

名優

リック役のハンフリー・ボガートと、イルザ役のイングリット・バーグマンといえば、戦前戦後の美男・美女の代表。

ハンフリー・ボガート

イングリット・バーグマン

個人的にハンフリーはそうでもないが、イングリット・バーグマンの息を飲むような美しさは何度観ても厭きない。
これだけでも本作を観る価値はある。

内容

さて、内容だが、前提知識が必要なことと、リックがあまりにもイケメンムーブをしすぎて個人的にはしらける。
最後の署長の行動もなんか急だし、余韻もあるようでないし、あと時代とはいえあまりにも白黒・善悪はっきりしすぎていて深みがない。
全体的にプロパガンダの匂いがしてくるのも嫌。
それでも名優、名曲、名台詞に助けられて素晴らしい作品になっているというのが本作のミソか?
そういえば現代でも、この台詞を聞くために、エンドロールのこの曲を聴くために観るという作品はあるしなあ……
映画とは不思議なもんだと改めて思えた作品。

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