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本屋大賞受賞作!『そして、バトンは渡された』を読みました。

表紙がおもしろい。主人公の女の子がバトンとして描かれています。
読み終わると、「たしかにな」って思いました。

主人公は17年の人生で、7回家族の形が変わっています。
変わる瞬間のほとんどで、主人公に親を選ぶ選択肢はありませんでした。

「選べないから、表紙の絵に手足がないのか。たしかにな」って、
思いました。

では、印象に残った残ったポイントを紹介します。

あらすじ
幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は二十歳しか離れていない“父”と暮らす。血の繋がらない親の間をリレーされながらも出逢う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた彼女自身が伴侶を持つとき―。大絶賛の本屋大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

キャラクター間の距離感がちょうどいい

主人公・優子が悲観していないところが、本書の最大の救いです。
親が次々と変わりながらも、不幸を感じていません。
高校生からの父親を「森宮さん」と苗字で呼ぶくらい、
サバサバして(?)、どこかよそよそしさもあります。

周りには親元を離れることにあこがれている人は多いけれど、私は一人で暮らしたいと思ったことはなかった。
~(略)~それに、他人だからよけいに、みんないい親であろうと一生懸命私に接してくれた。実の家族にはないきれいな距離感がいつも私のそばにある。(p26~27)

私が印象に残っているのは、「きれいな距離感」がうまいことです。

人間関係は状況によって、絶えず微妙に変化しています。
些細な一言で、距離感が遠くなったり、
大きなきっかけがないのに、近くなったりします。
まして、高校生ともなると、恋愛・勉強・進路・友人関係など様々な要素で、絶えず、距離感は変化しています。

本書では、主人公・優子と周りのキャラクターの「微妙な距離感」に
リアリティを感じました。

距離感をつくる「ことば」や「うごき」が鮮やかなのは、
人をつなぐ媒体がいい役割をしていると思います。
その最たるものは、食事です。
以下のシーンなど、派手ではない「普通」場面ですが、そうめんが「いい味」をだしています。

~略~森宮さんは「えへへ」と照れたように笑うと、「あ!わかった!」と手をパチンと叩いた。
「何?どうしたの?」
「そうめんのせいだ」
「何が?」
「優子ちゃんのパワーが出ないの。夕飯だよ、夕飯。昨日も一昨日も今日もそうめんだろ?」
「そうだけど」
森宮さんへのお中元でもらったし、暑い日には食べやすいから、最近そうめんが続いている。だけど、そうめんと私のいざこざは何の関係もない。
~略~
「もっとがっつり食べたら、優子ちゃん最強だぜ。スタミナ万全の優子ちゃんになんて、かなうわけないから、墨田も矢橋も矢守も文句すら言えなくなる」
「だから、親ばかだって。本気でやめてほしい」
私が怒るのに、森宮さんは「まあ、親ですから」と笑ってそうめんをすすった。
~略~
やれやれ、森宮さんの悪口は小学生レベルだ。けれど、森宮さんと一緒に文句を言っていると、気持ちは晴れて、いくらでもそうめんが食べれた。(p128~129)

本書では、食事のシーンがとても多いです。
食事が微妙な距離感をつくって、身近な時間をつくっています。
どこか、安心感や日常感を感じるのは、
食事が本書と読者をも繋いでいるからでしょうか。

いい親であろうとする理由

水戸さん、梨花さん、泉ヶ原さん、森宮さんなどたくさんの親が現れます。
水戸さん以外は、血のつながりはありません。
主人公・優子は結婚相手の「連れ子」という立ち位置です。

主人公・優子はどの親からも愛されています。
どの親も主人公・優子の「親になること」・「親であること」に
一生懸命です。
私はこの感覚がとても印象に残っています。

主人公を一番振り回した梨花さんのことばに、
その一生懸命な理由が凝縮されています。
梨花さんのことばを森宮さんが優子に紹介したシーンです。

「~略~梨花が言ってた。優子ちゃんの母親になってから明日が二つになったって」
「明日が二つ?」
「そう。自分の明日と、自分よりたくさんの可能性のと未来を含んだ明日が、二つやってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない?未来が倍になるなら絶対にしたいだろう。それってどこでもドア以来の発明だよな。しかも、ドラえもんは漫画で、優子ちゃんは現実にいる」

本書は、親が何度も変わる主人公・優子に焦点があたっていますが、
親の物語でもあると思います。
一緒にいる時間に、いい親であろうとする姿がたくさん見れるからです。

自分が親になったら、読み返したいなって思いました。
きっと、今と感想が異なると思います。

もし、自分が親になって、子どもがいたら、
最後のシーンで、何を思うのか、気になりました。


まあ、たぶん、号泣ですww


最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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