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「因果関係」の杜撰さ

因果関係を巡る直感の重要性は、本書で繰り返し取り上げある重要なテーマである。
というのも人間には、統計的な推論をすべき状況で因果関係を不適切に当てはめようとする傾向があるからだ。
(『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』より)


『ファスト&スロー』を読んだ感想、第6回です!


第1回:人の意思決定プロセスは、2種類ある
第2回:「瞳孔」を手がかりにする心理学
第3回:2種類の「注意力」
第4回:「言霊」と「笑う門には福来たる」の科学的根拠
第5回:「ウソ」を信じ込ませる方法


きょうの話の結論は、『人間は無理やりにでも因果関係を見出そうとする』です!

本中でその例として挙げられていたのは、サダム・フセインがイラクの隠れ家で逮捕されたときの話でした。

サダム・フセインが逮捕された日の午前中、アメリカの国債価格は上昇したそうです。

その事象に対して、ブルームバーグというメディアは、以下のように報じました。

『米国債価格は上昇中。フセインの逮捕はテロ抑止につながらない見通し』。


この見出しについては、本中にこれ以上の記述がなかったので、金融知識ぼくなりの予想補足をしておくと、国債って、たぶん投資対象として『ローリスクローリターン』なんですよね。

絶対に返ってくるだろうけど(相手は国だから)、でも逆にそのリスクが低い分、リターンも小さいという。

だから、情勢が不安定なときに『いまはリスクをとって投資をするべきときじゃない!』というロジックで、(比較的安全な)国債が買われるのでしょう。


しかし、実はストーリーにはまだ続きがあって、『米国債価格は上昇中。フセインの逮捕はテロ抑止につながらない見通し』というニュースが流れた30分後、実は国債価格は下落しました。

すると、今後はこのような見出しが出たのです。

『米国債価格は下落。フセイン逮捕の影響でリスク資産に魅力』。


『フセイン逮捕』という事実は、その日起こった世界的な出来事としては、最もインパクトの大きいものでした。

そして、そのインパクトある1つの事実に対して、まったく違う2つの事象が発生して、まったく違う理屈が組み立てられたのです。

二つのヘッドラインは、一見すると、市場の動きの説明になっているように見える。
だが二つの正反対の結果を一つの理由で説明できる文章には、何の意味もない。
ヘッドラインは結局のところ、つじつまの合う説明をほしがっている読者のニーズを満足させただけだった。
(『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』より)


人間は、とある結果に対して、その時点で思い浮かんだそれっぽい事実を結びつけて、多少強引にでも因果関係を見出そうとします。

そっちのほうが、脳がスッキリするからです。

本中ではこれを『知的努力の節約』と呼んでいます。


この本中での人間の意思決定に関する解説の、基本的な出発点は『脳はとても楽をしようとしている』という性質です。

これを意識して読むだけで、かなりいろんな話がつながって理解しやすくなります。



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