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「瞳孔」を手がかりにする心理学

バザールでは、買い手が自分はどのぐらい書いたがっているのかを売り手に悟られないよう、黒いサングラスを着用することなども紹介されている。(中略)
瞳孔が知的努力を敏感に示すバロメーターになる、という指摘である。
(『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』より)


『ファスト&スロー』を読んだ感想、第2回です!

第1回 人の意思決定プロセスは、2種類ある


第2章 注意と努力
衝動的で直感的なシステム1


きのうのnoteでは『意思決定に際しての思考プロセスには、システム1と2の2種類存在する』ということと、『人は基本的にはシステム1をメインに意思決定していて、大事なときだけシステム2の比重を大きくする』ということを書きました。

それらを踏まえたうえで、本の第2章をまとめるきょうのnoteでは、各システムの特性について、もう少し詳しく書いていきます。


各システムの特徴のひとつを述べると、システム1(速い思考)は『注意力をさほど要しない』、一方でシステム2(遅い思考)は『とても注意力を要する』というものがあります。

ただ、注意力自体は目に見えるものじゃないので、その人がいまシステム1をメインで稼働させているのか、2を稼働させているのか、外からでは分かりません。

本人でさえも、高速に使うシステムを入れ替えたり、0か100かではなく、割合を微調整したりしているので、『いまどっちの思考プロセスで判断しているのか』ということは自覚的になりにくいのです。


そこで、本書の著者のダニエル・カーネマンは、他の研究者の『瞳孔は魂の鏡だ』という言葉にヒントを得て、とある実験を思いつきます。

それは(簡略化すると)、実験参加者にカメラの前に座ってもらい、いくつかの課題に答えてもらうという実験です。

カメラでは、実験参加者の瞳孔の大きさを観察するのですが、実験の結果、難しい課題について考えているときは、瞳孔が大きくなり、簡単な課題のときは小さくなりました。


つまり、瞳孔が大きくなっているときは『これは注意力を要する場面だ!』と脳が判断してシステム2(遅い思考)が働いているときであり、逆に小さくなっているときはシステム1(速い思考)が働いているときだということです。


この人間の生理的な反応を利用しているのが、たとえば恋愛テクニックとして語られることのある『口説きたい人とは、暗いお店やバーに行こう!』です。

吊り橋効果と似たような理屈なのですが、暗い場所に行けば、少しでも光を集めようとして、自然と人間は瞳孔を大きくします。

だから、本当は『暗いから』瞳孔を大きくしているんですけど、脳はその動機を判別しきれないので、『自分の瞳孔がいま大きくなっているのは、この人に興味があって注意深く見たいと思っているからだ!』と勘違いして、結果的にデートもうまくいくという理屈です。


ただ、このまま恋愛と絡めて2つのシステムに関するもう少し詳しい話を進めますが、本中にて『脳がダッシュしているときは、人間は実質的に目が見えなくなる』という記述があります。

ダッシュというのは比喩表現で、つまり『システム2(遅い思考)』が活動しているときのことです。

『恋は盲目』なんて言葉もありますが、システム2に切り替わったとき、人はとても脳のエネルギーを用いてその対象の情報を集めようとしますが、逆にその対象に『だけ』エネルギーを注いでしまい、視野の広さはグッと狭くなります。

つまり、きのう概要に加えて、各システムの特徴を書くなら『システム1は注意対象を広く浅く、システム2は狭く深く見る』というイメージです。


いかがでしょうか!

このnoteを読んでくれている人たちの、各システムに対するイメージが、きのうより少しでも鮮明になっていれば幸いです。



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