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「ウソ」を信じ込ませる方法

誰かに嘘を信じさせたいときの確実な方法は、何度も繰り返すことである。
聞き慣れたことは真実と混同されやすいからだ。
独裁も広告主も、このことをずっと昔から知っていた。
(『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』より)


『ファスト&スロー』を読んだ感想、第5回です!

第1回:人の意思決定プロセスは、2種類ある
第2回:「瞳孔」を手がかりにする心理学
第3回:2種類の「注意力」
第4回:「言霊」と「笑う門には福来たる」の科学的根拠


第5回のテーマは『認知容易性』

少し言い方を変えると『正しいこと』と『正しいと感じること』の間には、実は大きな隔たりがあるのではないか?という話です。

そして、実はあんまり正しくないのに、ぼくたちがそれを『正しいと感じてしまう』ことの背景に『認知容易性』という概念が関わってきます。


認知容易性とは、ぼくたちにとってその言葉や対象がどれだけ思い出されやすいのかということ。

つまり、認知容易性を高めて思い出されやすくしてもらえれば、本当のことを言っていなくても、本当のことだと錯覚しやすくなります。


そして、その認知容易性を高めるのに効果的な手段のひとつが、『繰り返すこと』です。

単純だけど、これが強い。

多少ウソが混じっていても、繰り返しているうちに、なんだかそれっぽくつじつまが合うようになってきてしまうのです.......


あとは文章でいうと『韻文』にすることもオススメだよと本中では語られているのですが、どうして繰り返すことや韻文が認知容易性に寄与するのかというと、『脳に負担がかからないから』です。

脳は基本的に、とてもサボりたがり。

『いかに脳のエネルギーを使わずに判断するか』ということに、心血を注いでいます。

だから、繰り返すことと同じくらい単純ですが、『文字が大きい』なんてことも、実はとっても有効な手段です。


あとは『繰り返すこと』が効果的な手立てであることの理由をもうひとつ付け加えるなら、『単純接触効果』の話もする必要があります。

単純接触効果というのは、どんなものでもとりあえず繰り返し触れていれば自然と好感度や親密度が増すという現象を指すのですが、まさに『繰り返しているとウソも本当のように感じやすくなる』そのものですね。


どうして繰り返していると好感度や親密度が増すのかというと、『繰り返すことができている』という事実そのものが、相手にとっては脳に負担をかけずに『この対象や人物は信用に値する!』ということの判断材料になるからです。


いまでこそ、ぼくはいま毎日安全に暮らすことできていますが、昔は動物と一緒のフィールドで活動していたり、なにがあるのか分からない自然のなかで暮らしていたりして、常に生命の危険と隣り合わせの生活をしていました。

言ってしまえば『危険』が基本設定だったわけです。


基本的にはみんな危険なもので、みんな警戒すべき対象なのに、この対象物はこの人物は、何回も接触しているのに害を与えてこない→信用しても大丈夫だ!というロジックですね。

危険の多い世界で生き延びるためには、生命体は新たに出現した刺激には慎重に反応しなければならない。
恐れを抱くことも必要だし、場合によっては逃げ出す必要もある。
新奇なものに疑いを抱かない動物が生き延びる可能性は低い。
だが刺激が実際に安全であれば、当初の身長さが薄れることに慣れていく。
単純接触効果が起きるのは、刺激に反復的に接していても何も悪いことがおきなかったためだ
(『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』より)


話がちょっとずつ具体的なものになってきて、本の展開も盛り上がってきましたね!!



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