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2種類の「注意力」

認知的、感情的、身体的のいずれかを問わず、あらゆる自発的な努力は、少なくとも部分的にはメンタルエネルギーの共有プールを利用していることを決定的に証明した。
(『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』より)


『ファスト&スロー』を読んだ感想、第3回です!

第1回 人の意思決定プロセスは、2種類ある
第2回 「瞳孔」を手がかりにする心理学


第3章 怠け者のコントローラー
論理的思考能力を備えたシステム2

きょうは第3回ということで、本の第3章の内容について見ていこうと思うのですが、本性はシステム2(遅い思考)の説明に重点が置かれています。

これまでの2回で、システム1(速い思考)はあまり注意力を要さず、システム2はたくさんの注意力が必要になるという話をしてきました。

第3章では、その『注意力』という概念に対する解像度がさらに上がるようなことが書かれています。


結論からいうと、注意力を2種類に分けて、1つを『タスクへの集中』、もうひとつを『注意力の意志的なコントロール』としました。

つまり、僕たちが持っている注意力を、対象に向ける前者と、その注意力自体を維持するために注意力を使う後者ということですね。


なぜ注意力をこの2つにわざわざ分けたのかというのと、一言で『注意力を使っている』と言っても、場合によっては、すごくタスクに集中できているのに、その集中を維持するためにエネルギーを用いていない、無敵状態があるという説を、とある研究者が提唱したからです。

それは一般的に、『フロー』と呼ばれるものです。

人によっては、『ゾーン』なんて呼ぶこともあります。

(フローとゾーンの厳密な定義の違いに対する論争については、今回の内容の本筋からズレるので触れません!きょうのnoteでは、フローで統一します)


フロー状態になってしまえば、この活動に完全にのめり込むので、注意力の集中を維持するのに何らセルフコントロールを必要としない。
(『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』より)


ただ逆に、本来集中すべき対象以外に、注意力を削がれる対象があったり、その対象に集中することに対して本人の気が進んでいなかったりする場合は、『注意力の意志的なコントール』に膨大な注意力を使います。

だから、『タスクへの集中』があまりできなかったり、できたとしても長時間持たなかったりするのです。

たとえば、クイズ番組などで、制限時間ギリギリでカウントダウンが始まって、回答者がパニックになって答えられないというシーンがありますよね。

あれなんかは、『ああー!やばい!』と言ってる時点で、もう問題に対する意識は向けられていません。

本来注意を向けるべき『クイズの答えは何か』ではなく、『時間がなくなる』事象に対して、注意が向けられてしまっているのです。


あとは、本人がその対象に集中することに対して、なんらかの嫌悪感がある場合です。

たとえば、数学の苦手な人が数学の課題をするとき、その数学の課題を解くために必要な注意力が10だったとして、数学が好きな人は、その10の注意力を維持するために5の注意力、逆に苦手な人は20の注意力が必要だとすると、後者のほうが同じ数学の課題を解くのに、2倍の注意力を要します。


このようにして、注意力を『タスクへの集中』と『注意力の意志的なコントロール』に分けて考えると、ぼくたちが普段の生活で感じていることへの理解度が少し上がります。

この3章までは主にシステム1と2、それぞれの解説だったんですが、4章以降は具体的にお互いのシステムがどのように関連して、ぼくたちが普段の生活のなかで意思決定を行っているのかという内容が多くなってきます。

ではまた明日!



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