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産業カウンセラー。キャリアコンサルタント。公的機関で職業相談・就労支援の仕事に携わって…

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産業カウンセラー。キャリアコンサルタント。公的機関で職業相談・就労支援の仕事に携わっています。京都市在住。

最近の記事

書評「こころの処方箋」(河合隼雄・著)

55章からなる短い短編随想。人や物事を見るとはどういうことかを教えてくれる。深い示唆を与えてくれる書。本書の中から特に印象に残った一節と読後感を記す。 1)心のなかの勝負は51対49のことが多い人間の心のなかには相反する二つの考えがあってそれが葛藤を起こしていることが少なくない。それはあたかも神経系に交感神経と副交感神経があるように作用している。だからクライエントを前にしたとき、その語られる言葉とは裏腹の思いが潜んでいるかもしれないと思って接する必要がある。そこにもクライエ

    • 書評『河合隼雄と箱庭療法』(日本箱庭療法学会編集委員会・編集)パネリスト(著者):松岡和子・茂木健一郎・高木祥子・河合俊雄・川戸圓

      2008年の河合隼雄一周忌にちなんで開催された「河合先生追悼シンポジウム(河合隼雄と箱庭療法)」の記録。本来は会員向けの学会誌だったが、市販本として出版された。第一部は講演二本―①松岡和子〈世界の箱庭としてのシェイクスピア劇〉/②茂木健一郎〈無意識を耕すために〉。松岡氏のシェイクスピア劇における“計算された言い間違い”は実世界という劇場の中で生きる人間という役者の無意識を炙り出す仕掛けとして作用するものであり、劇空間が世界を投影するもの=箱庭としてとらえることができるとす

      • 書評『カルフ箱庭療法』(ドラ・カルフ 著/山中康裕 監訳/河合隼雄 解説)

        長らく積読になっていたが、大学で履修中の〈心理学的支援法〉で箱庭療法を学んでいて、読む好機ととらえ挑戦してみた。著者のドラ・カルフは箱庭療法を創始した人物で、本書は全10章から成り、第一章では総論として彼女の箱庭療法に対する基本的な考え方が紹介されている。要点としては、①人はその本質において「遊ぶ人」。遊びにおいて人は自らの全体性へ近づく、②「喜び」と「真剣さ」、「自由」と「制約」この特徴的な両極性が箱庭療法の外的形態のうちに与えられている。第二章以降では、実際のクライエント

        • 書評『箱庭療法入門』(河合隼雄・編)

          大学の総合心理学部通信課程で学修中の〈心理学的支援法〉の講義で箱庭療法を学んでいる関係で、積読のままにしてあった本書を読むべき良い機会だと考え読んでみた。まず、箱庭づくりはクライエントとセラピストの共同作業であり、セラピストはクライエントの作庭過程を暖かく見守り、共感的に接し、価値判断や断定的解釈をしないこと。そして一回きりの表現ではなく、時系列的に作られた一連の昨品に注目して、それらの発展的変化を読み取っていくことの重要性を説いている。 特に砂の触り方、玩具の置き方、空間

        書評「こころの処方箋」(河合隼雄・著)

        • 書評『河合隼雄と箱庭療法』(日本箱庭療法学会編集委員会・編集)パネリスト(著者):松岡和子・茂木健一郎・高木祥子・河合俊雄・川戸圓

        • 書評『カルフ箱庭療法』(ドラ・カルフ 著/山中康裕 監訳/河合隼雄 解説)

        • 書評『箱庭療法入門』(河合隼雄・編)

          【書評「学校では教えてくれない生活保護」 雨宮処凛・著】

          全く知らない一方で、偏見を持っていた生活保護。「水際作戦」と言われる役所窓口での相談者追い払いには憤りを覚えるが、この塩対応の背景には公務員が削減される一方で、生活困窮者支援相談が増えているという実態がある。それによって本来なら助かるべき命が失われているという悲劇が後を絶たない。ひとつ前に読んだ「エッセンシャルワーカー」という本でも指摘されていることであり、日本という国がだんだん住みづらい国になっていることを感じる。個人の尊厳と自立を取り戻し、護ることが即ち「失われた30年」

          【書評「学校では教えてくれない生活保護」 雨宮処凛・著】

          【書評「エッセンシャルワーカー 社会に不可欠な仕事なのに、なぜ安く使われるのか」 田中洋子・編著】

          エッセンシャルワーカーという言葉を初めて見聞きしたのは新型コロナウイルスが猛威を振るっていた2021年頃。その意味は「社会生活を維持していくのに不可欠な仕事」である。まずは感染リスクの高い現場で働く医療従事者や介護職がそれに該当する。続いて教員、保育士、ごみ収集作業員、建設請負業者、トラックドライバー、スーパーマーケット従業員といった職種もマスメディアで取り上げられたことで該当することを確認。またその際、こうした仕事に携わる人たちの低賃金および長時間労働という苛酷な現状とそれ

          【書評「エッセンシャルワーカー 社会に不可欠な仕事なのに、なぜ安く使われるのか」 田中洋子・編著】

          【書評  超訳ニーチェの言葉  フリードリヒ・ニーチェ 編訳・白鳥春彦】

          ニーチェは虚無主義者でもなければ無神論者でもない。形骸化したキリスト教倫理からの人間性の解放とそこからの新しい人間観の構築を提案している。折にかなうニーチェの言葉、それは鋭く、外科医のメスのように腫れて澱んだ心を切り裂いて膿を出す。すべての箴言の裏に深い人間洞察があり、中には、〈危険に見えることには挑みやすい〉など社会心理学の実験で取り扱われたテーマに関するものもあり、まさに哲学が心理学の母であることを認識した。 (2024年3月31日読了)

          【書評  超訳ニーチェの言葉  フリードリヒ・ニーチェ 編訳・白鳥春彦】

          【書評「モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない」(マリー=フランス・イルゴイエンヌ[著]、高野優[訳])】

          2024年の現在では、「モラル・ハラスメント」という言葉はすっかり定着している。これには本書の邦訳が流布されたことが寄与している。しかしながら、言葉として市民権を得た割には、事例の発生は後を絶たない。考えられる理由は二つある。一つは被害者が事案をモラハラとしてメタ認知し顕在化させたこと。いまひとつは、相変わらずの日本の組織の閉鎖性が原因で被害者は告発しにくく、果てはメンタル不調に追い込まれてはじめて事態が明るみに出ること。特に昨今ではモラハラ指摘を恐れる加害者が表面上の正当性

          【書評「モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない」(マリー=フランス・イルゴイエンヌ[著]、高野優[訳])】

          【書評「キャリアコンサルタントのためのカウンセリング技法 “雑談”の効果」(松尾一廣 編)】

          キャリアコンサルティングを進めていく上では、カウンセリング同様に傾聴が基本にあることは間違いない。ただし、それは1~2時間という長さの時間的条件が与えられていればという前提がある。それならば、カール・ロジャースのイメージするような徹底した傾聴を通して自己への気づき促し、行動変容へつながるということになるのだろう。しかし、実際にハローワークの窓口で約20分という限られた時間内で受給者相手に職業相談を行う場合、単に傾聴していただけでは相談者が話すことを聴くだけで終わってしまい、就

          【書評「キャリアコンサルタントのためのカウンセリング技法 “雑談”の効果」(松尾一廣 編)】

          【書評 「最後の授業 心をみるひとたちへ」(北山修・著)】

          著者の20年にわたる九州大学での最終講義。セラピストは人間の裏の面を取り扱う仕事である。患者が心おきなく自らの裏側をセラピストに語ってくれるためには、セラピストが患者との間に「ここだけの話」という空間を意識して設けておく必要があるという。セラピストと患者の間はパーソナル・コミュニケーションの世界であり、そのためにはセラピストは自分自身の裏側を見せないようにすることが必要だという。これはカウンセラーとクライエントという立場で置き換えても全く同じ。いくら自分のことであっても何もか

          【書評 「最後の授業 心をみるひとたちへ」(北山修・著)】

          【書評 「心の病」の脳科学  なぜ生じるのか、どうすれば治るのか 林(高木)朗子/加藤忠史・編】

          「心の病」と呼ばれるものには、うつ病、統合失調症、自閉症スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、双極性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)等々ある。本書は精神医療の第一線で活躍する脳科学者のグループがその発生のメカニズムを実証研究により明らかにし、併せて治療法および治療薬の現状と将来展望に言及している。各章ごとに執筆者が異なっており、研究内容もバラエティーに富んでいる一方、精神疾患の原因は脳の特定部位の機能不全で、疾患ごとにその部位も異なっているというところが本書を

          【書評 「心の病」の脳科学  なぜ生じるのか、どうすれば治るのか 林(高木)朗子/加藤忠史・編】

          【書評「群衆心理」(ギュスターヴ・ル・ボン/著、櫻井成夫/訳)】

          社会心理学に興味を持ったきっかけは、エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」だった。同著では自由という観念をテーマに個人とその有機的集合体としての社会の変質に焦点があてられているが、個人と社会の関わりを心理面から探求するという学問的姿勢に共感を覚えた。本書はその「自由からの逃走」より46年前に刊行され、社会心理学の嚆矢とも称されている。個人が多数集合したとき、どのような心理的特性を持つことで群衆となるかという視点から説き起こし、群衆固有の暗示にかかりやすい、極論に走りやすいなど

          【書評「群衆心理」(ギュスターヴ・ル・ボン/著、櫻井成夫/訳)】

          【書評『「甘え」の構造』(土居健郎・著)】

          初版刊行が1971(昭和46)年2月。精神科医の視点による日本人の行動と思想を分析し、それらの基底にはすべからく「甘え」の構造があると指摘する。例えば具体的には日本人が美徳としてきた恥、義理人情に基づいた行動体系は相手の理解を求める感情が暗に込められており、そこに相手への依存という「甘え」の気持ちがあると論断する。さらに逆らえない相手との同一化や親子間の葛藤超克の不十分さ、さらに同性愛的感情による自立心の不全などもその根底には「甘え」の意識が働いていると踏み込んだ分析をしてい

          【書評『「甘え」の構造』(土居健郎・著)】

          実験は大切

          毎朝、和歌を一首書いている。鉛筆を使って楷書で丁寧に書く。所要時間は3分程度。二年ほど前から始めているが、最初は百人一首からだった。一首書いて覚えたら次のを書く。百人一首については三十首ほどは子どもの頃のかるた取りや学生時代の古典の授業で覚えていたので、毎朝書いて新たに覚えたのは七十首。これに一年を要した。今は古今和歌集に取り組んでいる。 一首覚えるのに平均5、6日かかるわけだが、そこで学習心理学で教わった「意味的記憶の定着」というテーマが想起される。丸暗記的に覚えても一日

          実験は大切

          ウチの会社は違うと思っている経営者諸公は本当にそうなのか自社の業務を点検していただきたい。

          会社を辞めた今だからこそ言えるが、在職中は「無駄な頑張り」のオンパレードだった。本文に書かれているように「やめることの難しさ」を何度感じたことか。日本企業が本気で再生を考えるなら、経営者が「無駄な頑張りをやめる勇気」を持つことだ。

          ウチの会社は違うと思っている経営者諸公は本当にそうなのか自社の業務を点検していただきたい。

          信州駒ヶ根ハーフマラソン第10回記念講演会小平奈緒 「愉しく 生きる」 2023.9.23(土)メモ

          2022年10月21日引退。その後、講演依頼が多くなり、今回で79回目。現在は相澤病院の広報企画室に勤務。病院というのは閉鎖された空間。そこでどのようにして人々が前向きに生きていけるかを考えている。 知るを愉しむ 「心」りっしんべん 「兪」はこぶ 心を動かされる    ↓ 好奇心・興味を持つことで困難なことでもたのしめるのではないか 三人姉妹の末っ子。メンタル強。 観て、考えて、やってみる。・・・試行錯誤 「ホンモノを観に行こう!」清水宏保(長野五輪金メダリスト)のロケッ

          信州駒ヶ根ハーフマラソン第10回記念講演会小平奈緒 「愉しく 生きる」 2023.9.23(土)メモ