【書評『「甘え」の構造』(土居健郎・著)】


初版本。出町桝形商店街の古本屋〈上海ラジオ〉で購入。

初版刊行が1971(昭和46)年2月。精神科医の視点による日本人の行動と思想を分析し、それらの基底にはすべからく「甘え」の構造があると指摘する。例えば具体的には日本人が美徳としてきた恥、義理人情に基づいた行動体系は相手の理解を求める感情が暗に込められており、そこに相手への依存という「甘え」の気持ちがあると論断する。さらに逆らえない相手との同一化や親子間の葛藤超克の不十分さ、さらに同性愛的感情による自立心の不全などもその根底には「甘え」の意識が働いていると踏み込んだ分析をしている。ルース・ベネディクト著「菊と刀」や夏目漱石の著作を多く引用して論考を展開しており、その視点の鋭さに驚くばかり。現在心理学専攻中なので、座右に置いて随時紐解きたい書物。 

(2023.10.29読了)

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