【書評 「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか 林(高木)朗子/加藤忠史・編】
「心の病」と呼ばれるものには、うつ病、統合失調症、自閉症スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、双極性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)等々ある。本書は精神医療の第一線で活躍する脳科学者のグループがその発生のメカニズムを実証研究により明らかにし、併せて治療法および治療薬の現状と将来展望に言及している。各章ごとに執筆者が異なっており、研究内容もバラエティーに富んでいる一方、精神疾患の原因は脳の特定部位の機能不全で、疾患ごとにその部位も異なっているというところが本書を貫く思想となっていてユニークである。 特に印象に残ったのは、ロボットを活用した自閉症スペクトラム症(ASD)の人の支援。ASDの人は「他者の視点に立って考える」ことが苦手なので、例えば就職面接などで面接官の視点がわからず、採用が難しい現実がある。そこで面接シミュレーションで面接官役のロボットをASDの人が操作して面接官視点を学ぶというもの。この訓練は効果を上げているとのことで、キャリアコンサルティングにも導入展開できたら面白いと思った。 (203.11.9読了)
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