【書評「キャリアコンサルタントのためのカウンセリング技法 “雑談”の効果」(松尾一廣 編)】

キャリアコンサルティングを進めていく上では、カウンセリング同様に傾聴が基本にあることは間違いない。ただし、それは1~2時間という長さの時間的条件が与えられていればという前提がある。それならば、カール・ロジャースのイメージするような徹底した傾聴を通して自己への気づき促し、行動変容へつながるということになるのだろう。しかし、実際にハローワークの窓口で約20分という限られた時間内で受給者相手に職業相談を行う場合、単に傾聴していただけでは相談者が話すことを聴くだけで終わってしまい、就労意欲の喚起には結び付かない。
 
そこで、私は随時、相談者(雇用保険受給者)の話の流れに沿った範囲内で余談を適宜入れている。それに対する相談者の反応や応答から、興味や関心が読み取れることも多く、求職活動にも有効な提案につながることも少なくない。本書では数名のキャリアコンサルタントが豊富な現場経験の中から体得した雑談技法を紹介しており、私が普段の相談業務の中で実践していることも“余談”の効果として、あながち的外れなものではないことの確信を得た。
 
(2024.2.23読了)

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