書評『箱庭療法入門』(河合隼雄・編)
大学の総合心理学部通信課程で学修中の〈心理学的支援法〉の講義で箱庭療法を学んでいる関係で、積読のままにしてあった本書を読むべき良い機会だと考え読んでみた。まず、箱庭づくりはクライエントとセラピストの共同作業であり、セラピストはクライエントの作庭過程を暖かく見守り、共感的に接し、価値判断や断定的解釈をしないこと。そして一回きりの表現ではなく、時系列的に作られた一連の昨品に注目して、それらの発展的変化を読み取っていくことの重要性を説いている。
特に砂の触り方、玩具の置き方、空間配置の方法などの何をどのようにして作ったかに着目し続けることで、クライエントの内面に起こっている、あるいは起こりつつある変化を敏感に感じ取ることができるとする。 確かに本書の中で紹介された事例における一人の人間の箱庭の変遷過程はその人の成長の向けての可能性を示しているようだ。その途中過程では、戦闘や大災害による死あるいは傷病など関わるものが登場することもあって、セラピストが見るに堪えないものもある。
しかしながら、それも人格・精神の統合に向けて必ず踏まなければならない段階だとして、セラピストは受容しなければならないとする。そうなると、箱庭の作成そのものにも治療効果があるとする考え方は支持できる。本書の各事例におけるセラピストの見立てはいずれも今の自分にとっては「そんな風に見るのか」「目をつけるのはそこなのか」と思わせることばかりで、未熟さを痛感させられる。だから、そうした見立てができるようになることが今の自分の課題となる。場数を踏んで「心の眼」を養っていくしかないのだろう。
(2024.7.20読了)
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