実験は大切

毎朝、和歌を一首書いている。鉛筆を使って楷書で丁寧に書く。所要時間は3分程度。二年ほど前から始めているが、最初は百人一首からだった。一首書いて覚えたら次のを書く。百人一首については三十首ほどは子どもの頃のかるた取りや学生時代の古典の授業で覚えていたので、毎朝書いて新たに覚えたのは七十首。これに一年を要した。今は古今和歌集に取り組んでいる。

毎日一首ずつ書写

一首覚えるのに平均5、6日かかるわけだが、そこで学習心理学で教わった「意味的記憶の定着」というテーマが想起される。丸暗記的に覚えても一日経てば忘れてしまうが、毎日習慣的に書くことで長期記憶に定着する。それに要する時間が6日程度となる。1~3日目は書いてから直後30分程度は覚えているが、翌日には全然記憶に残っていない。4日目あたりから断片的に思い出せるようになり、5日目で三~四句、6日目で全句暗唱できる、といった具合である。

この意味的記憶が短期から長期に移行するメカニズムはよく考えてみると不思議だ。そこに何らかの法則性があるのではないか、という疑問が生じる。それを具体的に考えていくと、大脳皮質が何らかの作用をして、それに要する時間は6日前後という仮説が立てられる。ただし、この仮説は客観性、公共性、信頼性が担保されていないので一般的法則とは言えない。そこで、複数の被験者に協力してもらって、仮説を検証するための実験という手続きが不可欠であることに気づく。

科学としての心理学を考える「心理学研究法」の講義レジュメにも客観性、公共性、信頼性ということが書いてあるが、説明が観念的でピンと来ていなかった。ところが、身近な事象に引きつけて考えてみたとき、心理学ではなぜ実験が大切であるかが腹に落ちた。自分の立てた仮説については卒業研究の候補にしようかな。学習心理学の教授に相談してみよう。

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