弁護士服部啓一郎

弁護士(東京弁護士会)。 刑事弁護、ネット上の表現トラブル(発信者情報開示請求など)を中心としています。 共編著『先を見通す捜査弁護術』(第一法規)など。 ご連絡はh@hklaw.jp 事務所 http://hklaw.jp

弁護士服部啓一郎

弁護士(東京弁護士会)。 刑事弁護、ネット上の表現トラブル(発信者情報開示請求など)を中心としています。 共編著『先を見通す捜査弁護術』(第一法規)など。 ご連絡はh@hklaw.jp 事務所 http://hklaw.jp

最近の記事

【殺人被告事件】審理不尽の結果、重大な事実誤認をした顕著な事由

講談社元編集次長が、妻に対する殺人罪で起訴された事件で、最高裁判所は、2022年(令和4年)11月21日、東京高等裁判所の有罪判決を破棄し、審理を差し戻しました。 東京高裁が改めて公判を行うことになります。元編集次長が無罪となる可能性もあります。 今回の最高裁判決はこちらをご覧下さい。 元編集次長を有罪とした第1審判決(東京地裁)と控訴審判決(東京高裁)は第一法規などの判例データベースで見ることができます。 事実関係の争点は多岐にわたるので紹介は最低限とし、この記事では、

    • 特定少年の実名公表事例を考察する【解禁6か月】

      2022年(令和4年)4月、特定少年(18歳及び19歳)のうち一定の要件に該当した場合、実名犯罪報道が可能となりました。 実名公表の基準については、5月の記事で取り上げました。 本記事では、約半年間に検察庁が特定少年の実名を公表した事例、公表しなかった事例を紹介し、実際の運用について考察します。 1 特定少年の実名報道の流れ(1) 検察庁は、特定少年の実名を報道機関に公表します。 (2) 報道機関は、実名報道するかどうかを各社の判断で決めています。 検察庁が公表しなくても

      • 【施行直前】新たな開示手続にメリットはあるか【令和3年改正②】

        SNSや掲示板の権利侵害に対する「発信者情報開示請求」について、2021年(令和3年)、新たな裁判手続が創設されました。 発信者情報開示命令事件といいます。 いよいよ2022年10月から新手続の運用が開始されます。 新手続にメリットはあるか、5つの観点から検討します。 なお、実際の運用は裁判所やプロバイダの対応で左右されるので、ご注意ください。 プロバイダ責任制限法令和3年改正は、以下の記事でも紹介しています。 重要な前提 ~従来の裁判手続も利用できる新制度は、従来の手

        • DM晒し行為の何が問題か?

          他人から来たTwitterのDM(ダイレクトメッセージ)やLINEのメッセージを、無断でインターネットに晒す(暴露)行為がよく見られます。 SNSで見かける「晒し」には金銭トラブル、ハラスメント、メディアの取材トラブル(ノーギャラ、依頼方法が無礼など)が多いようです。 弁護士や医師のような専門家がターゲットとなることもあります。 ガーシーこと東谷義和氏が参院選で当選するなど、最近は「暴露」が必ずしもネガティブには捉えられていないようです。 今回は、他人から来たDMを晒す行

          【無罪】時短協力金詐欺事件判決を公開します

          2022(令和4)年7月5日、東京地方裁判所(榊原敬裁判官)は、東京都の時短協力金を詐取したとして起訴されていたグエン・ズイ・ドン氏(ベトナム国籍)に無罪を言い渡しました。 弁護人は趙誠峰弁護士(主任)、須﨑友里弁護士(副主任)、服部でした。 (※2022年7月22日追記、検察官は控訴せず、本件判決は確定しました) 詐欺容疑での逮捕は2021年6月7日です。当時、メディアは、都の時短協力金詐欺の初摘発ということで大きく報じました。 その事件が無罪となったことは、特筆される

          実名犯罪報道ツイートの削除を命じた最高裁令和4年6月24日判決

          最高裁判所第二小法廷は、2022(令和4)年6月24日、Twitter社に対し、ある一般人の逮捕報道を紹介した投稿14件を削除するよう命じました。 逮捕や刑事処分は、8年以上前のことでした。 実名犯罪報道やこれをインターネットで転載・紹介する行為には、誹謗中傷を招いたり、更生を妨げる弊害があり、深刻な議論が続いています。 Googleの検索結果については、2017(平成29)年1月、厳しい要件を満たした場合に限り削除を認めるという最高裁決定が出ていました。「忘れられる権利」に

          弁護士服部啓一郎 プロフィール

          ご挨拶都内に服部啓法律事務所を開設して10年経ちました。 刑事弁護、インターネットトラブル、債権回収、債務整理、不動産トラブルの解決を中心としてきました。 現在は、芸能事務所、広告代理業、各種士業、通販事業など各企業の顧問弁護士を務めております。 ご連絡先 h@hklaw.jp 経歴2002年3月  明治大学付属明治高等学校卒業 2006年3月  明治大学法学部卒業 2009年3月  早稲田大学大学院法務研究科修了 2010年12月   司法研修所(新63期)修了 2011

          特定少年の実名公表基準【情報公開】

          少年法の改正で、特定少年(18,19歳)の犯罪が公判請求された場合、実名報道が可能となりました。 検察庁が、特定少年の実名を報道機関に公表し、あとは各社の判断で報道します。 実名報道解禁となった今年4月以降、検察庁が実名を公表したケースと見送ったケースが割れており、運用が模索されています。 先立つ2022年(令和4年)2月8日、最高検察庁は、各検察庁宛てに、特定少年の実名公表の基準を通知していました。 公表基準の全文を取得したので、公開します。 こちらは検事総長に行った情

          プロバイダ責任制限法令和3年改正① SNS・掲示板に対する開示命令の取下げ

          通称『プロバイダ責任制限法』が2021年(令和3年)に全面改正されました。 同法では、SNSや掲示板で匿名発信者から誹謗中傷等の被害を受けた場合、発信者を特定するための手続が定められています。 新法は、現時点では未施行です。施行は2022年10月と思われます。 本記事では、新法で気になるトピックを1つ取り上げます。 今回の改正については、以下の概要説明や新旧対照表もご覧下さい。 ・新法の概要について https://www.soumu.go.jp/main_content/

          退職後の競業避止義務 ~企業の場合と弁護士の場合~

          『退職後の競業を禁止する合意』が弁護士間で話題です。 この「退職後の競業避止義務」は、勤務弁護士に限ったテーマではなく、一般企業の労働トラブルでも見かけるものです。 たとえば、不動産仲介会社に就職する際、「退職後3年間は、不動産仲介業その他競業を営んではならない。不動産仲介業を営む会社その他競業の会社に就職してはならない」という合意書を交わしていることがあります。 転職するとき、このような合意が、足枷となってくるわけです。 「在職中」と「退職後」の競業避止義務競業避止義務に

          【元日産ケリー事件】司法取引と保釈

          2022年3月3日、日産元代表取締役のグレッグ・ケリー氏の金融商品取引法違反事件で、東京地裁は懲役6月・執行猶予3年を言い渡しました。 しかし起訴された大部分の事件は無罪となりました。 ケリー氏は一部有罪を不服として控訴、東京地検も一部無罪を不服として控訴しました。 この裁判では、元秘書室長ら2名が司法取引で免責を受けた上で証言していましたが、東京地裁は、その証言の信用性を、慎重に判断した模様です。 判決文はまだ入手できていないので、ざっくりと司法取引に関する意見を述べたい

          乳腺外科医事件 最高裁判決への疑問

          乳腺外科医が準強制わいせつ罪に問われた事件で、2022(令和4)年2月18日、最高裁判所第二小法廷は、東京高裁の有罪判決を破棄・差し戻しました。 筆者の感じたいくつかの疑問を提示したいと思います。 本文中の記述は、主に最高裁の判決文をベースとしています。 事案・判決の概要最高裁判決の冒頭で、事案概要がまとめられております。 以下のリンクで読めます。 本件の起訴事実は、2016(平成28)年、乳腺外科医である被告人が、患者女性の右乳腺腫瘍摘出手術をした後、病室ベッドで横た

          コロナ陽性が判明した被疑者の釈放

          今年に入り、コロナ陽性(無症状)の被疑者を弁護する機会がありました。 軽微な暴行事案であり、逮捕されるほどの事件とは思えませんでしたが、不幸にも現行犯逮捕されました。 留置場に入る前の検査で、被疑者の陽性が判明しました。 今回知った、新型コロナウィルス陽性者に対する警察・裁判所の対応、顛末について、備忘として記します。 コロナ陽性被疑者に対する運用まず、警視庁の一部の署に、コロナ陽性者の専門フロアがあります。 面会室では、被疑者と弁護人を隔てる窓は、ビニール袋で覆われてい

          レスバ・論争と著作権① スクショ引用

          2021年12月、著作物の引用に関連する判決が相次ぎました。 今回は、東京地方裁判所令和3年12月10日判決(同年(ワ)第15819号)を紹介します。他人のツイートのスクリーンショット画像を、自己のツイートに添付する行為の適法性が争われました。 判決の内容は、裁判所ウェブサイトに公開されています。 興味ある方は、ぜひ全文をお読み下さい。 事案概要発信者情報開示訴訟という形式をとっています。 そのため、実際にスクショ画像を投稿した匿名ユーザー2名(発信者)ではなく、プロバイ

          地番まで記載した実名報道とプライバシー(東京高判令和3年11月18日)

          静岡新聞が、薬物事件で逮捕された夫婦(のち不起訴)について、地番(住所)まで記載して実名報道した事件が話題となっています。 夫婦は、静岡新聞社に損害賠償請求の訴えを起こし、2021年(令和3年)5月7日、静岡地方裁判所(増田吉則裁判長)は、新聞が地番まで記載したことはプライバシー侵害にあたるとして、夫婦を一部勝訴とする判決を言い渡しました。 夫婦と静岡新聞社双方が控訴したところ、東京高等裁判所(渡部勇次裁判長)は、2021年(令和3年)11月18日、原判決を取り消し、静岡新

          ぼったくり?ガールズバー無銭飲食事件無罪判決を公開します

          2021年11月29日、服部が弁護した詐欺被告事件で、東京地裁の渡邉一昭裁判官は無罪を宣告しました。東京地検は控訴せず、判決が確定しました。 報道では、ガールズバーの客だった被告人が本当はぼったくり被害者だった可能性があると紹介されました。 以下の記事もご覧下さい。 判決文の公開報道案件であること、刑事事件の事実認定等において参考となることから、判決文を公表することにしました。 関係者は仮名、個人情報はマスキングしています。 裁判所は、弁護人の主張をかなり取り上げてくれた