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5分で垣間見せる、システム思考の歴史


システム思考の歴史をさかのぼる前に。
風が吹けば桶屋が儲かるっていうことわざってきいたことありますか?

強い風によって砂ぼこりがたつと、砂ぼこりが目に入ったために盲人がふえ、その人たちが三味線で生計を立てようとするため、三味線が多く必要になり、三味線の胴に張る猫の皮の需要も増え、そのために猫がへり、その結果、増えた鼠が桶をかじるので桶屋がもうかって喜ぶというもの。


砂埃→盲人っていう流れが謎ですが笑 世界は繋がりあってることを示していて、システム思考の肝をよくあらわしてると思うんですね。世界って直線的に繋がっているというイメージよりかは、因果関係が複雑でもっとネットワークのようにつながり合ってるイメージなんです。


さて、今回はシステム思考の歴史。「システム思考 歴史」とGoogleで打つと、みなさんまとめてくださってる。

なので、こちらをソースとしつつ、自分の観点も入れながら、システム思考の歴史をさっと読めるようにふりかえります!


※そもそもシステム思考とは、物事をシステムとして捉えること、また解決アプローチ。システム思考・システムとして見る、システムアプローチなどいろいろな言葉あるけど、全部、事象の見えてる部分だけでなく全体像を捉えて、物事の本質から世界を捉える見方と、課題解決のアプローチのこと。厳密に定義づけて違いをいわなくてもいいと思う。あと、全体論の考え方自体もシステム思考的。


システム思考の歴史、還元主義の行き詰まりへの最初のアンサーは「一般システム理論」



還元主義的な世界観だけでは説明しきれない1+1=2ではなくて、1+1=2+αの事例は、福岡さんのノックアウトマウス実験のお話をしました。

ノックアウトマウス実験。

マウスの脾臓の一部のDNAをとって、脾臓の機能のパーツをなくしたマウスを人工的に作り出した。マウスの脾臓は、消化酵素をうまく分泌できなくなって、栄養失調になるに違いない。

結果、、、、何事もなく、成長した。

生命とは機械ではない。そこには機械とは全く違うダイナミズがある。
生物はそれぞれのパーツが機械のように組み重なって、生命活動をしているのではない。
                   2009年 動的平衡 福岡伸一著


産業革命以降、科学を席巻してきた還元主義。しかし、1940年ごろから、還元主義の考え方では説明しきれない(ノックアウトマウス実験のような)ことから、違う見方に基づくものはないだろうかという機運が高まった。学問でも専門が細分化しすぎて、専門家が専門外のことがよくわからないという弊害も起こる。そこから、生物学の世界を皮切りに、還元主義、論理の行き詰まりを「システム」で捉えなおす道筋が始まった。

理論生物学者のルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ一般システム論という論文で初めてシステムという言葉を出す。

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1937年、理論生物学者のルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィは、有機体論を発表します。ベルタンフィは、細胞や心臓や脳といった生物を構成する要素と外部環境との相互作用に注目しました。生命をシステム(要素と要素間の相互作用)の観点から見ることにより、細胞などの各要素が生命体全体を維持するための説明できるとしました。(開放システムと定常状態の理論で数学的に説明できる)


それまで生物学者の中では、還元主義に基づく考え方、いわゆる「機械論」:生命とは機械なんだっていう考え方が強かった。そんな中で、生命とは有機体なんだ!と違う見方を掲示していくわけですね。


ちょっと外れるんだけど、一般システム論は、アメリカの仏教哲学者であり、社会活動家であるジョアンナ・メイシーが傾倒する学問となった。また、ジョアンナ・メイシーと、前回の記事に書いたワークショップの第一人者である中野民夫さんは、民夫さんの留学先のCIISで出会っている。その中で、一番影響を受けたのがジョアンナのワークショップだったことを言及している。

こういった繋がりや文脈がワークショップの流れにもあると知れるのは、非常におもしろい。


世界大戦から生まれた功績:フィードバック制御システム



さて、生物学と同時に違う流れも起こっていた。文化人類学の視点を上げると、同じような文化って世界で同時多発的に起こることもあるらしい。


世界大戦では、航空機の戦いが主軸に置かれていた。なので、対空レーダーの制度をあげる必要があった。そこから、MITの数学者ウィーナーは、フィードバック制御という生命をもしたシステムを構築した。

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敵機を捉えて、弾を発射した後も、レーダーで敵機と弾の位置を捉え続け、その情報を高射砲システムに戻して、砲はそれに合わせて角度を修正し続けるシステム。情報がたえず、動的にもどってくる。飛行機はたえず動いているので、位置情報を動的に修正するシステムであった。


1948年ウィーナーは制御工学・通信工学を融合して、生命の仕組みを模したこの分野をサイバネティクスと名付けた。ギリシャ語の操舵手(キベルネクスから)


生命をシステムとしてとらえることから始まったのが一般システム理論。
生命を模してシステムを考えたのがサイバネティクス。



二つの文脈は、応用性の高い「システム・ダイナミクス」へ
 


一般システム理論の文脈があり、サイバネティクスの流れもある中、もっとシステム的な見方を様々な分野で応用しはじめたのが、MITのジェイ・フェレスターだった。その手法は「システム・ダイナミクス」と呼ばれ、ちょっとぶっ飛ばしていうと、G Eの経営立て直しを導く。その成功を機に、ボストン市長がジェイ・フォレスターに目をつけ、ボストンの都市問題も「システム・ダイナミクス」によって解決の一助をたどることになる。

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経営から都市課題の解決まで応用できる。そんなジェイ・フォレスターが作った手法はローマクラブが発表した未来予測のシュミレーション「成長の限界」の計算モデルと採用されました。このシュミレーションモデルは「WORLD 3」と呼ばれているらしい。


システムダイナミクス
は、システム内でつながり合う要素同士の関係を、ストック・フロー・変数・それらをつなぐ矢印の4種類で表す。


成長の限界の計算モデルから想像するに、例えばエネルギーだったら(石油、石炭など)などのストック(埋蔵量など)、フロー(消費量など)が変数(新たな発見、世界の景気、世界動向、etc)をどういう関係性にあるかをつなぐようなイメージかと。


分析は、微積分の知識や複雑な計算をするパソコンソフトが必要で、システム的な見方の理解や仕組みを知らないクライアントや導入したい人たちに説明をするのは、簡単とはいえなかったことは容易に想像できる。

複雑な計算をもっとシンプルな図に:因果ループ図


システム思考図


1970年に、システムダイナムクスの定量的なモノな測り方をもっと直感的にわかるように、シンプルにしたのがMITのピーター・センゲでした。それは「因果ループ」と呼ばれ、システムを形づくる要素を俯瞰し、どのような関係があるのか俯瞰的にみれる図を作った。システム的な見方は、経営や組織開発、ビジネスの文脈にも応用され、組み込まれていった。

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日本でも最初に入ってきた1990年代は「最強組織の法則」という邦題だった。(どことなくダサい涙)1990年代は、バブルが弾けた後に企業がどのように立て直しを測っていくか暗中模索だった時代に、システム思考が入ってきたのは興味深い。


システム思考=ピーター・センゲのループ図を想像する人が多いと思うけど、おおもとは生物学からスタートし、世界大戦のシステム開発、経営の問題抽出や都市問題解決、未来予測へのシュミレーション、組織開発など様々な領域、様々なレイヤーでシステム思考、システム的に世界を捉える見方は浸透して、今に到る。


歴史をちゃんと追うと、全体を捉えて課題解決しようぜ、っていう軽いメソッドではなくて、世界をシステムとして捉える「哲学」なんではないでしょうか。(もちろん、サイエンスなんですが。)


ブッダもシステムシンカーだった?



よくよく考えると、システム思考って西洋からの文脈の言葉だけど、そもそも仏教でいう「諸法無我」に近い。自分も最初にシステム思考を学んだときに仏教的世界観、東洋的世界観に近いなと感じた。


日本人は、世界は繋がりあってるよね、っていうことを直感的に理解しやすくないですか。なので、そもそもシステムシンカー(システム思考を使う人たち)なんじゃないか説がある気がしてきました笑


はじめての試み:次回予告は「レバレッジポイント」




システム思考の歴史は紐解いてもらえましたか。次回、システム思考の歴史を理解してもらった上で、システム的な見方をしたときに使うフレーム「レバレッジポイント」について書こうかなと思っています。レバレッジはてこって意味ですね。


背景として、まちづくりの文脈でワークショップや議論なんかをすると、最終的に「教育が大事、教育を変えよう!」「人を変えないと、変わらないと!」っていう意見が落ちていくポイントってありませんか?


もちろん、そのこと自体悪いことじゃないんですが、もっと考えれることがあるはずなのに、終始「人材育成」「教育」の議論におちついてしまうのは残念だし、もったいないっていうのが、自分の経験でありました。


その傾向になりがちな思考を整理するフレームが「レバレッジポイント」なんです。12個フレームがあります。その中で、「人が変わらなきゃ!」ってかなり難しいレバレッジのポイントなんです。


他にも11個あるので、フレームを知ればもっと幅広く議論のテーマがひろえるし、みなさんの整理に役に立つと思います。大事なフレームだと思うのに、あまり検索に出てこないのが残念だと感じていたので、がんばって書きますね〜!


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