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エッセイ

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#エッセイ

本日、暗闇からお届けします。

本日、暗闇からお届けします。

年が明け、お正月が終わり、仕事が始まり、日常が帰ってきた。
日常の根幹が様変わりしてしまったとはいえ、繰り返されるべきリズムがあり、自分がそこに合わせていくということには安心感がある。
安心を守れるというのは大切なことだ。

安心は安全であり、安全は安定と言える。
安定は停滞というのもよく言われる。そして停滞は、どちらかといえば良くないものとして扱われる。

私は今完全に停滞している。下の方で。

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映画と少し仲良くなれた日

映画と少し仲良くなれた日

いつの間にか11月最後の金曜日が来た。
noteは毎週金曜を更新日と決めたので、毎月4回ほど書いている。
4回と思うと少なく感じるけれど、金曜日が来るたびに「もう来たのか」と思う。

この間久しぶりに観た、映画「百円の恋」についてでも書こうかと思っていたけど、不快感しかないシーンもあったりするので書きづらいな~と思い、
その根底には全然捨てきれない自意識があることに改めて気づいたりもした。

映画

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切実さに触れたとき人の心は動く

切実さに触れたとき人の心は動く

例えば3年前の貴婦人ドレスの撮影を、スタイル抜群で美しい彫刻のような造形のモデルさんに頼んでいたらきっと私の真意は伝わらなかった。

その歌は、たとえヘタクソでもあなたが歌うから響くのであって、レディーガガの圧倒的な歌声ではきっと伝わりきらない。
しかしレディーガガの素晴らしさは世界トップレベルに違いなくて、だから、良い悪いや、上手い下手で何かをジャッジする話ではない。

ヘタクソな歌でも、自分だ

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天使のともしび

天使のともしび

あっという間に10月が終わる。年々月日がたつのを早く感じる。
毎月、「何もせずに終わった」と思ってしまうのは何故だろう…決してそんなことはないのに。

毎年この時期になると、ある出来事を思い出す。
温かい明りが灯る小さなアンティーク屋で、天使のランプを買った日のこと。

5年か6年ほど前、私はそのランプに出会った。
たくさんの素敵なアンティークのランプが吊るされている中に、それはあった。

可愛ら

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機嫌とりの話

機嫌とりの話

ミニマリストや断捨離ブームの昨今、所有欲が強い私はその言葉からは縁遠い。
書籍であふれた本棚、ときめきがギュッと凝縮された多彩なクローゼット、かたち違いの香水瓶、無駄に多いクッション・・・
アンティークを集めていた頃は全てが一点物の世界なので物欲も止まらず大変だった。

好きなものに囲まれていたいというよりは、自分の機嫌をとっていたい。

私はとても単純なので、気に入りのものを身に着けているだけで

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『個展』というもの

『個展』というもの

さっきまで自分が身を置いていた世界とはまるで違う、遮断された空間。
そこに漂う静謐な空気と程よい圧、緊張を味わいながら、作品と一対一で対峙する。
間に介入できるものは何もない。
瞬きも忘れるほどの時間が流れる。

そんな個展を目指したいといつも思っている。

個展は、作家としての力量の全てが試される場だ。
会場、装飾、配置、照明、音楽
告知、映像、写真、発信媒体。物珍しいことをやれば良いということ

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歯列矯正から得た哲学

歯列矯正から得た哲学

一大決心をした。

ずっとずっとやりたかった歯列矯正を、この夏から始めることにした。

矯正治療は保険がきかない。
高いお金かけるなんて今更かなぁ、と長い間迷いまくっていた。

そこまでして治すほどなの?と言われることも多々あったけど、最後はシンプルに、このままだったら自分が後悔するだろうなというのが決め手になった。





ちょっとスケールの大きな話になるけれど、私は、「生きる意味」とい

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初めて絵を買った話

初めて絵を買った話

初めて、絵を買った。

厳密にいうと、「その絵」を買ったのは2017年の秋。

そして2020年夏、「その絵」は私の物になり、ようやく部屋に飾ることができた。
再会を果たすまで約三年かかった。(支払いに時間がかかりました。)

長い道のりだった。

私はそれまで絵を買ったことがなかった。

私自身も作品を作って販売している身で、これまで多くの作品をお迎えいただいた。
反対に、作品をお迎えすることも

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