アジャイルをヒントに「チーム観」を見直す
20代のころ、ソフトウェア開発の制作現場でプロジェクトマネジャーをしていました。もう20年以上も前の話です。
お客さまとミーティングをして、仕様や納期を決めます。それを社内のタスクに落とし込んで、指示書を書き、ガントチャートを書いて、進捗を管理します。最後は、仕様通りにできているか確認し、修正を加えて納品となります。
開発現場のほとんどが、このような「ウォーターフォール」型でした。
この考え方には隠れた前提があります。それは、チームメンバーに「何も考えずに作業させること」です。少なくとも私はそういう感覚が強かったように思います。
では、誰が考えるのか。それは、リーダーです。
多くの経営者、リーダーが多かれ少なかれこうしたチーム観を持っているのではないかと思います。リーダーがすべてを把握し、最適解を考えて作業に落とし込み、あとはメンバーが粛々と作業をする。結果、手戻りがなければみんながハッピーだ、というわけです。
これは、リーダーとしての責任感の表れでもあります。それ自体は否定しがたいものです。ゆえに厄介でもあります。
ここで問わなければならないのは、リーダーは、「何に対して責任を持つのか」ということです。リーダーは、チームの「成果」と「学習」について責任を持ちます。
まず、成果です。成果は何よりもお客さまの役に立つことでなくてはなりません。つまり、お客さまが決めるのです。にもかかわらず、ウォーターフォールの中で起きがちなのは、「言った、言わない」です。本来、言ったかどうかは問題ではありません。お客さまと共に問題を解決することが目的です。「言った、言わない」は、リーダーが立場を守ろうとする内向きな思考の表れです。
そして、学習です。状況は常に変化します。したがって、その都度工夫をしながら仕事を進めることが必要です。そのことが知恵を生み出します。この知恵は、ただ進捗管理をしているだけではチームの財産に昇華できません。やったことを振返り、次に活かせるように互いに学んでいくコミュニケーションの場が必要です。
こうした問題意識を持つ人たちが、ウォーターフォールに対するものとして「アジャイル」を実践してきています。
アジャイルは、その手法だけが独り歩きしがちですが、本質はその考え方です。これは、ソフトウェア開発だけではなく、ビジネス全般に活かせる考え方です。多様な価値観を持つお客さまからチームとして学ぶための考え方が上記のマニフェストに表現されています。
リーダーには責任があります。
ただ、その方向性が独りよがりのままだと、リーダーもチームも限界を超えていくことができません。疲弊し、その役割や責任にやりがいを感じなくなってしまいます。
ぜひこの機会に、自社の組織がどのようなチーム観で成りたっているか考えてみてはいかがでしょうか。
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