コーヒーの始まりについての話
むかしむかし、アラビア半島のへそのあたりに位置するちいさな王国に、ひとりのお姫さまがおりました。姫は真夜中に大好きな母親を亡くして以来、すっかり夜ぎらいになり、日が暮れると部屋にカギをかけて閉じこもり、誰とも口をきこうとしません。困り果てた王様がわらにもすがる思いで祈祷師に相談したところ、一計を案じた祈祷師は姫の前で空に手をのばし、夜をひとさじ掬って、一杯の湯にぽたりとたらしました。するとどうでしょう。たちのぼるのは馥郁たる香り、口にふくめば神秘の味わい。のどを通れば元気が体