『カスタマーサクセス』ってどういうものだっけ?という話。
こんにちは。小木曽と申します。#cmkt アドベントカレンダーの記事をお送りいたします。
cmktは『カスタマーマーケティング』がメインテーマのコミュニティですが、ゴールとしては顧客のサクセスがあると思うので、『カスタマーサクセス』という観点で記事を書かせてください。そちらの方が書き慣れております。
また、この記事は新たなフレームワークだったり、自社事例だったり、具体的な話は特にございません。そういった記事はもうたくさん世に溢れていて、私が改めて書いても得をする人が少ないと考えたからです。
じゃあ何を書くのかというと、改めて『カスタマーサクセス』ってどういうものなんだっけ、みたいなことを書きます。
色々と他社の人と話したりする中で思うこともあったりするので、その辺りを徒然なるままに書いていきます。言葉としての『カスタマーサクセス 』と実態としてのカスタマーサクセスがごっちゃになっていたり、これでいいんだっけ?って思うところもあるので、自分自身の頭の整理もかねてまとめておきます。
そんな感じでゆるゆると書いていくので、だいぶ抽象的になると思います。通勤中の読み物程度に眺めていただけると幸いです!
はじめに
一昨年頃から『カスタマーサクセス』という言葉が、SaaS界隈を中心に広まってきました。青本や赤本と呼ばれる本が日本でも出版され、カンファレンスなども開催されるようになり、ますます関心が高まっている印象です。
ただ個人的には、なんとなく言葉だけが一人歩きしているケースがあることも否めず、「カスタマーサクセスって結局なんだっけ?」と思うことがしばしばあります。
カスタマーサクセスは直訳すると”顧客の成功”という”とても聞こえがいい言葉”です。とはいえ、そうはいってもビジネスなので、戦略的に設計をしないと、そもそもの自社のグロースが止まり、結局は顧客の成果を最大にできない、という本末転倒なことも起こりかねません。
だからキレイごとや形だけのカスタマーサクセスではなく、真の意味で顧客と伴奏するパートナー的な立ち位置を目指すべきなのですが、言うは易く行うは難し、なかなか苦戦している企業も多いはずです。
そんな感じで色々と思うことがあり、改めて、カスタマーサクセスってどういうものだっけ?と考えてみたくなりました。そんなテンションで筆を走らせています。
なので、繰り返しになりますが、本記事は「リード獲得したノウハウ」とか「成果に繋がった秘訣」みたいな具体的なTipsではなく、もう少し根っこのところの話をしますので、ご了承ください。そういうノウハウ的な話は、然るべきタイミングと場所で、そのうちお話しいたします。タイミングが来たらですけど。
本題の前に軽く自己紹介
本題の前に少しだけ自己紹介をさせてください。
私は『Cloud CIRCUS(クラウドサーカス)』というデジタルマーケティングプラットフォームを提供する、Mtame株式会社で働いています。もともとはスターティアラボという親会社へ新卒で入り、分社化のタイミングでMtameに移籍となったので、今年で8年目になります。うち4年半くらいはカスタマーサクセスの役割を担ってきました。
最前線で取り組んでいたのは2014年〜2018年頃で、カスタマーサクセスの立ち上げからマネージャーまでを経験しました。その後はいろいろと他部署へ浮気して、今期からまた既存顧客関連の施策立案・実行に携わっています。
この辺りは以下の記事なんかを参考にしてください!
ちなみにですが、ハイタッチのカスタマーサクセス職に関しては絶賛募集中らしいので、リンクを貼っておきます。私も求人ページを今知りました。
あと最近は自社サービスのロゴのキャラをコンプリートするために動物園へ遠征したり、セルフインタビューなんかを上げたりしています。
そんな感じの人間です。よろしくお願いします。
やってる会社はもともとやっていること
ゆるゆると本題に入って行きたいと思います。
私が最近特に思うのが、「とりあえず部署を作っただけ」のカスタマーサクセス(?)と、しっかりと顧客起点で考えたカスタマーサクセスで、実際の成果や活動の継続可否がどんどん分かれてきているのではないか、というものです。
そもそもなんですが、『カスタマーサクセス』という言葉が流行り出す前から、多くの企業で近しい活動はおこなわれていました。また、そういった活動を支援する企業も然りです。
少なくとも、SaaS系のサービスに限らず継続売り上げがLTVにヒットするような業界は、大昔からカスタマーのサクセスのために開発からマーケティングから何から何までやってきたはずです。なんなら今も『カスタマーサクセス』という言葉を使わず顧客成果を重要視している会社は山ほどあります。
なので、あくまでここ最近のカスタマーサクセスブーム的なものは、体系化された手段が日本に輸入され、ようやく言葉としての理解が進み、徐々に広まってきた、という側面が大きいのではないかと思うのです。そして、広まってきたと感じるのも、実態としては、すでに取り組んでいた企業が名称を変えているケースも多く含まれるのではないかと考えています。
そもそも、BtoBで何かしらのサービスでしっかりと価値を提供するためには、濃淡はあれど顧客との接点全てが重要になるので、いち部門を作っただけでは不十分です、そのため、部門を超えたサービス全体の設計がないと、顧客も自社も幸せにはなれません。こう書くと、当たり前の話なんですよね。
とはいえ、現場ベースでまずはできることからやってみよう、となるケースもあるのも現実です。これまで体系的に取り組んで来なかった場合、会社の上層部を説得するには何かしらの成果と、取り組む”意義”が求められます。
ビジネスには結果が必要です。そのためには短期的な成果に向けた行動を取らざるを得ない時があります。ただし、これはあくまで手段であり一時的なものなので、そこさえクリアすれば改めて組みなおしが必要です。
そこでしっかりと成果が出なければ、当面の間はそういった活動は承認されないですし、社内理解は得られないでしょう。しかもその「成果」をどこに置くのか、何を指標にするのか、いつまでにやるのかなど、考えなければいけないことは山ほどあります。
そのくらい、0→1で『カスタマーサクセス』に取り組むのは大変なことです。当たり前ですけど。
なので、例えば『カスタマーサクセス』という言葉をどこかで知って、「なるほど、これからは顧客の成果を重要指標にしていこう!」みたいなテンションで取り組むと、どうしても手段が目的になってしまい、「成果にも繋がらないし大変だから、これまで通りの活動に戻そう」となってしまいます。
ただし、それ自体が必ずしも悪いとは思っておらず、『カスタマーサクセス 』的な手法をとらずともしっかりと顧客をサクセスしていただければいいのです。そもそもサービスとして顧客のサクセスは大前提なので、やり方の違いだと思います。
そのため、ここで私が言いたいのは、流行り言葉に飛びつくのではなく、まずは目の前の顧客に対してどういったアプローチをすれば、もっとも高い価値を提供できるのかを考える必要があり、これまでやってこなかったなら、それなりの覚悟が必要だ、という話です。もちろん言葉の力で組織が少しずつ変わることもあるので、すべてを否定はしませんが。
『カスタマーサクセス』はみんなでやるもの
もう聞き飽きて口にするのも恥ずかしいくらいなのですが、そもそも「カスタマーサクセスはみんなでやるもの」とよく言われていて、これは本当にその通りだと思います。
例えば、弊社の主力事業であるWeb制作は、セールスがやんちゃしてもダメだし、制作が杜撰でもダメだし、カスタマーサクセスが頼りなくても最高の結果は出せません。もちろん完璧な組織などないのですが、少なくともそういうマインドで社員1人1人が考えるようにしなければ、どんどん負の連鎖が進んでいきます。
だから先ほども例として挙げた「とりあえずやってみよう」のテンションだと、なかなかビジネス的に成功する成果までは生み出せないのです。そもそも組織を作っただけで完成するカスタマーサクセスなんて存在しないですし、そんなものは勝手に満足している独りよがりの施策に過ぎません。
また、そのあたりを踏まえたうえで自社のビジネスに『カスタマーサクセス』を新たに取り入れたいのならば、重要なのは”組織づくり”というよりも”組織改革”です。本当に求められるのは、実は組織を動かす力とか、文化を変えていくための力であって、カスタマーサクセスの手法はその後でもいいのでは?とも思います。もっと言えば、自社の商材理解や業界理解の方がよっぽどカスタマーをサクセスさせるためには役立つこともあるでしょう。
もちろん戦略を決め、社内理解を得るためには説得力のある根拠が必要なので、カスタマーサクセスという言葉や他社の事例を使って提案するのは有効です。言葉として使うには、共通認識も得られやすく有効なので。
でも、やっぱり最終的には、言葉にとらわれ過ぎないようにして、顧客のことを一番に考えていくしかない、自分たちで試行錯誤して最高の形を作っていくしかない、と考えています。それを「新しいことやるぞ!」みたいに安易に飛びつくと、「思っていたのと違う」となりかねません。
顧客理解なくしてサクセスはない
これまでの話も踏まえて、本腰を入れて全社的にカスタマーサクセスの活動に取り組んでいこうとなった時に、当たり前ですが、まずは顧客ことをしっかりと理解をする必要があります。
その時に顧客の声を直接聞いて回るのも非常に重要なのですが、そもそも自社がペルソナになるような形が作れたならば、顧客目線の設計もしやすいことを学びました。
例えば弊社では、「WebサイトやMAツールを活用して新規の案件を獲得していきましょう!」みたいな提案をすることも多いのですが、実は弊社自身、かつては新規の営業活動としてテレアポばかりしていました。
昔は自社サイトからの問い合わせも皆無で、メルマガを送ることもほとんどありませんでした。でもやたらと営業は強かったし、人は悪くなかったので、地道に事業を伸ばせてきたのだと(勝手に)思っています。この辺はまだ私が入社する前からの話なので半分くらいは想像ではありますが、少なくとも私が知っている限りはそうです。
そんな弊社でも、今ではほとんどプッシュの営業なんてしませんし、デジタルを活用した営業活動が行えています。手前味噌ですが、生産性も年々上がってきました。
そんな経緯があるからこそ、テレアポばかりのプッシュ営業からプル型に移行したり、デジタルを取り入れる上での状況もよくわかります。現場はどんな感情か、組織で何が起こり、どういうことにつまづくのかなど、想像がつきやすいのです。
特にMAツールなんかは、あっても使わない機能とか、使いこなす前にやった方がいいこととか、ちゃんと”新規の受注ができる”という観点から開発もCSもセールスも設計しているつもりです。
我々自身、例えばテレアポの際のリスト管理の重要性がわかってますし、リードのありがたさも身を以て知っています。だから設計で挫折しがちなMAツールなどのプロダクトも、当時の私たちが「本当に使える」機能を搭載しています。
これはたまたまペルソナ=自社になりうるサービスだったからなんですが、そのくらいの粒度で顧客理解ができていると、サクセスまでのロードマップが引きやすいなと思いました。
ただし、昔の我々がこうだったから今もこうだろう、と決めつけるのはよくないので、そこはしっかりと生の声を収集する必要があります。そこのところはバランスです。生の声やデータなどをちゃんと平等に評価して、判断するよう心がけています。
いろんな顧客、いろんなカスタマーサクセス
実は昨年、自社ツール(CMS BlueMonkey)のパートナーを開拓する活動をしていて、その中でも『カスタマーサクセス』の話をしていたのですが、Web制作会社の方々にはびっくりするほど刺さりませんでした。
もちろん、大多数の会社に共感してもらえるとは思っていませんでしたが、それにしても反応が薄すぎて、この切り口は難しいなと早々に思いました。顧客理解を怠った苦い経験です。
弊社はたまたまツールベンダー兼Web制作会社だったのと、元々はSaaS系のものも扱うソフトウェアのメーカーだったので、ちょっと特殊なパターンだったんですよね。だから同じ型はなかなかフィットしない。条件がかなり絞られるなと、反省しました。
ちなみにいうと弊社も『カスタマーサクセス』という名称の組織は存在しません。やっていることや目的はいわゆるカスタマーサクセスでも、組織の名前は全く別です。同様に、いろんな会社が、いろんな形で顧客のサクセスを目指しています。
もちろん、0→1で車輪の再発明をするのは無駄なので近しい成功事例から学ぶのは大切ですが、会社によって様々な顧客がいて、最適なカスタマーサクセスの形があります。また、時代も変わっていきます。だから最終的には、自分たちで顧客に向き合って、自分たちで決めて、実行し、改善していくしかないなと。
そのために、しっかりとトップから現場までの意思統一、文化の醸成、それをサービスに落とし込む仕組みの設計などがとても重要です。これをいうと元も子もないのですが、結局は会社としてのスタンスや価値観も試されます。だからこそ、強い会社は圧倒的に強かったりするので。
ということで、ここまでだいぶ偉そうに書いてしまいましたが(すみません)、私自身も、目の前のお客様が最高の成果を出せるように、全体の仕組みづくりや業務を遂行していきます。今年はCMを流したりロゴをリブランディングしたりと様々な施策を実施しているのですが、だからこそ、より一層気を引き締めて参ります。
その結果として、ターゲットが困った時にちゃんと想起される、強固なブランドにしていければと、一従業員ながら思うのです。そんな私は、今日も顧客のことを考えています。
最後に
言葉にとらわれず〜という話をしましたが、そうはいっても参考になるコンテンツなどもたくさんありますので、ここでいくつか紹介します。先人たちに学ぶのも大事なので。ちなみに独断と偏見で選びました。
他にもあったら教えてください。
今回は以上!
小木曽
Twitter→小木曽一馬
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~追伸~
2021年4月、弊社からついにCSツールがリリースされました!私は直接はかかわっていないのですが、弊社のCSへの想いが込められた良いツールに育っていくはずなので、ぜひお気軽にお試しください!無料から使えます!!