イノベーション_スキルセット

【読んだ】 イノベーション・スキルセット

最近、デザインのお仕事もしているエンジニアです。😎
Takramの田川さんが書かれた『イノベーション・スキルセット』という本を読んだので、簡単に紹介したいと思います。

1.なぜこの本を買ったのか

先月、2014年に発売された『takram design engineering | デザイン・イノベーションの振り子』という本を読了した時、まだ色あせない内容に新鮮味を感じながらも、5年前と変化している現状を踏まえ、内容をアップデートして本を書いて欲しいなと思っていた。まさに、その数日後、Twitterで田川さんのこのツイートが流れてきた。

そして、進化/洗練されたであろう内容に期待を抱きながら、ポチッと反射的に予約注文した。新たな「学び」と「気づき」を求めて・・。

2.何が書かれているか

<目次>
 第1章 第4次産業革命の読み解き
 第2章 イノベーションを加速する人材像
 第3章 BTCトライアングルとデザイン
 第4章 BTC型人材へのファーストステップ
 第5章 デザイン駆動型プロジェクト
 組織に「CXO」が必要な理由 − おわりに代えて

デザインなしでは成功しない時代において、デザインを「課題解決のデザイン」と「スタイルやブランドをつくるデザイン」の2つに整理し、どのようにデザインを理解し、身につければよいかが書かれている。

また、産業革命の歴史からデザインが求められる時代背景を紐解き、いま必要なスキルとして「B:ビジネス」「T:テクノロジー」「C:クリエイティビティ」の3つの領域を統合した『BTCスキル』を人と組織にあてはめて紹介し、BTC人材になるための実践方法まで丁寧に解説している。

3.ビジネスの変化とイノベーション人材

本書には以下のように書かれている。

世界はいま第4時産業革命(コネクテッドの時代)に突入し、あらゆる産業に変革の波が押し寄せている。(中略)そして現在、世界でイノベーションのホットゾーンになっているのが「ハードウェア」「エレクトロニクス」「ソフトウェア」「ネットワーク」「サービス」に「データ」と「AI」を加えた複合領域です。

これからはソフトだけでなくハードとの結合が重要視されるそうで、日本企業もまだ生き残れる可能性があると希望を感じた。しかし、日本にはイノベーション人材がいまの10倍以上必要らしい。高度成長期の終盤から企業にはオペレーション人材が組織の大半を占めており、理想の配分は「1:8:1」というのも明確で分かり易かった。

1:たす人
 新しい価値、ルール、仕組みを作るイノベーション人材
8:みがく人
 
ルールを守り、仕組みに乗っ取り効率良くこなすオペレーション人材
1:ひく人
 
古くなった仕組みを解体して引き算する人材


又、本書の中でも紹介されていたが、ジリアン・テットの『サイロ・エフェクト』という本も合わせて読むと、なぜBTC型の組織や人が必要なのかを腹落ちできるのでお勧めしたい。

『サイロ・エフェクト』には、多くの事例が書かれている。特に、大企業になって衰退していったソニーの物語と、まだスタートアップだったフェイスブックが、急成長しながらもソニー化しないために取り組んだ事例はとても読み応えある。

インターネットやスマホの登場で、世界の人と人がより近づいた一方で、企業においては組織は細分化し専門家が増えていった。そんな歪みがある現代社会だからこそ、境界を越えていくBTC型の組織や人が求められるのだろう。

4.BTC型人材になるには

組織においてはTakramの人材育成方法が紹介されており、メンバーは得意領域に50%、不得意領域に50%という割合でアサインされ、チームの中でお互いの持っているナレッジを交換するという方法はとても参考になる。

ただ、いきなり不得意領域に関して専門性を高めるのは難しく、

第二の専門分野については「スキル」というレベルではなく「リテラシー」というレベルを目指すのでも構いません。

という言葉に、ある種のプレッシャーから解放され、少しホッとした。

そして、「ブランドやスタイルをつくるデザイン」であるクラシカルデザインにも言及し、センスの磨き方を「ふせんトレーニング」というやり方で紹介している。

「センスはジャッジの連続から生まれる」

このふせんトレーニングは誰でも簡単に取り組めるので、やる気さえあれば誰でもセンスを磨くことができる。

5.BTCの実践

本書の第5章には、「デザイン駆動型プロジェクト」としていくつか事例が紹介されているが、なかなか新規性のある事業に携われる人も少ないのではないかと思う。とても参考になる事例ではあるが、どこか雲の上を見ているような感覚になってしまう。

そんな人には 是非、特許庁がユーザー視点で行政サービスの改善に挑戦した事例をみると参考なるはず。

3.公表資料
「デザイン経営プロジェクト」レポート(PDF形式:3,157KB)

おそらく、このプロジェクトに取り組んだ多くの方は、従来とは異なるアプローチで業務に取り組み、片足を新たな領域に踏み出した人も多くいると思うと、少し勇気を与えてくれる。

6.参考リンク

本書の中にも関連書籍がたくさん紹介されているが、書籍以外で参考になりそうなものを記載しておく。
 ・「デザイン経営」宣言を読む 〜 GoodPatch土屋さん x Takram田川
 ・「産業競争力とデザインを考える研究会」の報告書を取りまとめました
 ・越境するデザイン Designship 2018
 ・TakramCast「Design Engineeringとは #1
 ・TakramCast「Design Engineeringとは #2
 ・TakramCast「Design Engineeringとは #3
 ・TakramCast「Design Engineeringとは #4
 ・TakramCast「CXOのリアル」

7.最後に

本書は、ビジネスパーソンが生き残る上での必読書だと思った。これからの時代、積極的に自分の領域を越境していかないと、数年後には、越境したはずの領域がAIにとって変わっているという事も十分にあり得る。越境はストレス負荷が多くかかる事だが、新たな学びを楽しみ、味わいながら越えれるようにしたい。😋

いつの日か、コネクテッドの時代から新たな時代に移り変わるだろう。VR・ARによって現実の空間は拡張され、更にその先の未来にはバイオテクノロジーが発展しているはずだ。未来は正確に予測できないが、少し先の未来を見据えながら小さなイノベーション人材を大きな可能性を持って育てることはできるはずだ。是非、子育て世代の親にも読んでもらいたいなと感じた。




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