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老人福祉センターをご存知ですか?

(前の記事)私の仕事と「福祉」

突然ですが、みなさんの地域(市町村)に、老人福祉センターはありますか? 老人福祉センターがある地域にお住まいの方は、老人福祉センターがどういう施設なのかご存じでしょうか?

もしご存じであれば、その「のどかでほんわかした」イメージの公共施設が、私が管理者として勤務している職場になります。

1.老人福祉センターとは

老人福祉センターは、「老人福祉法」で規定された、「老人福祉施設」の1つです。老人福祉法は昭和38年施行の古い法律です。

(第五条の三) 
この法律において、「老人福祉施設」とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター及び老人介護支援センターをいう。
(第二十条の七) 
老人福祉センターは、無料又は低額な料金で、老人に関する各種の相談に応ずるとともに、老人に対して、健康の増進教養の向上及びレクリエーションのための便宜総合的に供与することを目的とする施設とする。

名古屋市の場合、老人福祉センター(A型)を「福祉会館」と呼びます。名古屋市は16区ありますが、各区に1つ福祉会館があります。私は中川区にある中川福祉会館の館長として、様々な事業の管理だけでなく、企画運営、対外交渉、関連機関との連携、職員の育成など、(意外に?)忙しい日々を送っています。ちなみに、私は名古屋市職員ではなく、NPO法人の職員で、名古屋市から指定管理制度による受託事業として運営しています。なので、私はNPO本体の業務も一部受け持っています。

2.老人福祉センターの事業

さて、老人福祉センター(A型)の事業などについてはこのように規定されています。

老人福祉法による老人福祉センターの設置及び運営について(昭和52年)
別紙一老人福祉センター設置運営要綱
 第三 老人福祉センター(A型)
一 事業
老人福祉センター(A型)においては、次に掲げる事業を行うものとする。
(1) 各種相談
ア 生活相談
老人の生活、住宅、身上等に関する相談に応じ、適当な援助、指導を行うこと。
イ 健康相談
老人の疾病の予防、治療に関する相談に応じ、適当な援助、指導を行うこと。
(2) 生業及び就労の指導
老人の生業及び就労等について指導を行い、必要に応じ授産事業を行うこと。
(3) 機能回復訓練の実施
老人の後退機能の回復訓練を行うこと。
(4) 教養講座等の実施
老人の教養の向上及びレクリエーション等のための事業を行い、又はそのために必要な便宜を提供すること。
(5) 老人クラブに対する援助等
老人クラブの運営について援助を行うとともに、老人に対する調査、研究、広報等の事業を行うこと。

名古屋市の福祉会館は、名古屋市内に住所を有する60歳以上の方が利用できます。福祉会館に来館すれば、生活相談は随時可能です。私と相談業務担当の職員が対応します。健康相談は月2回、医師に健康に関する相談ができます。あくまでも「相談」なので「診察」は致しません。また、区役所福祉課がある条件を満たした世帯に設置する「高齢者福祉電話/あんしん電話」設置宅への電話相談事業も行っています。こちらはボランティアの相談員さんにお任せし、私と担当職員が管理と援助をしています。

機能回復訓練は、中川福祉会館では「健康体操講座」として月1回、中川区の地域医療支援病院から理学療法士を派遣していただいて行っています。

教養講座は先ほどの健康体操講座を含めて27講座運営しています。講座の種類については、各区の福祉会館に独自性があります。私の中川福祉会館の場合は、ほかにも書道・華道・茶道・日本舞踊・民謡・詩吟・社交ダンス・コーラス・ボイストレーニング・ヨガ・太極拳・オカリナ・大正琴・手芸・英語などがあります。1人で受講できるのは3講座まで可能としています。「公平性」ということです。ちなみに私は前職(学習塾運営)の経験を生かして英語講座も月1回2クラス講師として受け持っています。

レクリエーション等のための事業は、福祉会館の場合、囲碁・将棋・卓球がこれにあたります。先ほどの趣味講座は、月1~2回のものばかりですが、囲碁・将棋・卓球は毎日行っています。
また、他にも「必要な便宜を図る」という部分については、「同好会」という趣味のサークルのような団体の結成を奨励し、同好会運営規定を整備して、同好会に対して福祉会館の部屋利用に便宜を図っています。

二 建物等
(1) 建物の構造、規模
ア 老人福祉センター(A型)の建物の構造は、利用者の便、防災等について十分配慮したものとし、その規模は495.5平方メートル以上とする。
イ 老人福祉センター(A型)には、もつぱら当該施設の用に供する次の設備を設けなければならない。ただし、他の社会福祉施設等と設備の一部を共用すること等により、当該施設の運営上支障が生じない場合にはこの限りでない。
所長室、事務室、生活相談室、健康相談室、機能回復訓練室、集会室、教養娯楽室、図書室、浴場、便所
(2) 立地条件
老人の利用上の便宜を図ることが可能であり、かつ、事業を円滑に行うことのできる場所に設置するものとする。

三 職員
老人福祉センター(A型)には、施設の長、相談・指導を行う職員、その他の必要な職員をおくものとする。ただし、施設の運営に支障がない場合には、他の社会福祉施設等の職員との兼務は差し支えないものとする。

四 その他
浴場については、公衆浴場法(昭和二三年法律第一三九号)第二条第一項による許可を受けたものでなければならない。

名古屋市の福祉会館には「浴場」があります。ただし地域の銭湯などに配慮して、午後の1時間程度しか浴場は運営していません。

所長室はありませんねえ。あると「考える仕事」がはかどるんですけどね。

職員は私が「施設の長」と「相談・指導を行う職員」を双方兼ねています。あと看護師が常駐しています。衛生管理と健康相談の保佐、相談・指導を担当しています。あと介護福祉士が1人いますが、「介護業務」はしていません。その他の職員として、事務処理や運営補佐をしていただく職員さんが3名います。さらに清掃担当としてシルバー人材センターから2名派遣してもらっています。

3.なんと、利用料は「無料」

はい、冒頭で掲載した「老人福祉法 第二十条の七」で「無料又は低額な料金」と規定されていますから、名古屋市の福祉会館は利用料は「無料」です。英語講座受講も無料です。同好会を立ち上げるのも無料です。入浴も無料です。すごいですよね? なお、教材費や材料費などの実費は必要です。また、同好会では講師を招聘するなどのために会費をとっている場合もあります。

先ほども書きましたが、利用できるのは名古屋市内に住所を有する60歳以上の方に限りますので、59歳以下の方や、60歳以上でも名古屋市外に住所を有する方は利用できないことになっています。そのため、初回来館時に本人確認書類を持参いただいて、利用証を発行し、2度目以降の来館時には受付窓口にその利用証を提示することで利用していただきます。「顔パスでええだろう?(名古屋弁)」とよく言われますが、ごめんなさい、都度見せてくださいね。

ちなみに1日あたり平均160名くらい来館されます。160回は利用証を拝見することになります。

4.時代の流れと地域福祉に貢献するために

老人福祉法が昭和38年、運営要綱が昭和52年ですから、「老人福祉センター」は、ある意味「時代の遺物」的な要素が満載の「老人福祉施設」です。「特養」と同じくくりで規定されているのが驚きです。この記事のタイトルは、「老人福祉センターをご存知ですか?」ですが、きっと多くの方はご存知ないでしょう。実際、私自身も、赴任して初めて「福祉会館(老人福祉センター)」の存在を知りました。

なので、そもそも論というか、当時の時代背景が、

60歳で定年 → おじいちゃん・おばあちゃん、ありがとう 
→ いきいきとしたセカンドライフの手助けを

という感じですから、その匂いがプンプンとするような事業内容になっています。でも、現在60歳になられたばかりの方は、あまり福祉会館には来ませんね。おそらくまだバリバリと現役で働いていらっしゃる方がほとんどではないでしょうか。来たとしてもすごく若く見えます。「Tシャツにジーパンで髪は茶髪」なんて珍しくありません。

なので事業内容についても、例えば、生活相談や電話相談ですが、介護に関するものは「地域包括支援センター」がありますから、福祉会館に持ち込まれたものは入り口部分だけの対応になります。関連機関へのつなぎ役のような感じですね。ただ、私がFPの資格を持っていたりと、様々な経歴を持っているので、中川福祉会館は比較的いろんな相談を受けているほうかもしれません。「振り込め詐欺」に関するものも結構受けたことがありますし、「孫の英語教育をどうしたらいいか?」というのもありました。あと「恋愛相談」もありましたよ。

趣味講座についても、「いきいきとしたシニアライフを」というよりは、「ただで1年間書道ができる」といった感じで、たくさんの方が申し込みをされるため、抽選でごく一部の方だけが受講できるだけです。運よく受講できる方にとっては「介護予防」になるのかもしれませんが。

そんな背景もあってか、名古屋市の福祉会館では上記事業に加えて、「認知症予防事業」として「認知症予防教室」という講座のようなクラスと、「認知症予防リーダー養成講座」という、地域の高齢者サロンや認知症カフェへ出向いて「認知症予防に関する啓発活動」を行うボランティアを養成する講座を3年前から始めています。私は両方とも統括していますが、とくにリーダー養成講座のほうは直接運営をしています。この事業はおそらく名古屋市の自主事業だと思いますが、おかげで様々な関連機関と連携して地域のために活動する機会が増えました。

なので、次回以降の記事で、認知症施策や地域福祉、ボランティアに関する問題点とか、「カスタマーハラスメント」の足音などなど、福祉会館の事業に絡めて、思うことを書いていきたいと思っています。

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