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人間ってこうやってできている――「類語辞典」を開く

人間ってこうやってできている――「類語辞典」を開く

ものを書くことの初心者・スタートに立つための情報をお届けする「ものかき未満」。
「この場面、どうやって表現すればいいんだろう」と悩んだり、書き進める中で「この表現いつも使ってしまうなあ……」と気づきつつも、”どうにもできないもどかしさ”を感じたりすることはありませんか?
今回は、そんな時に役立つ「類語辞典シリーズ」を紹介します。

「類語辞典シリーズ」とは、ついついワンパターンに陥りがちな表現から

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今が狙い目!?「お仕事ファンタジー」を書いてみよう|三村 美衣

今が狙い目!?「お仕事ファンタジー」を書いてみよう|三村 美衣

 仙人は霞を食って生きていけるかもしれないが、たいていの生き物は食事が必要で、自給自足が出来ない場合は、食事にありつくには対価を支払う必要がある。
 今回のテーマは生活の基盤を作ってくれる「仕事」だ。

 ファンタジーは事件に巻き込まれて日常から逸脱していく話が多いため、癒し系や人生やり直し系のお店ものをのぞくと、仕事を意識した小説はあまり多くない。少ないはチャンスということで、今回はお仕事ファン

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物語に深みを与える、魔法の過去・現在・未来|三村 美衣

物語に深みを与える、魔法の過去・現在・未来|三村 美衣

 「魔法」というのは普通では考えられない何かを起こす力だが、メカニズムが見えないだけに、便利で万能なご都合主義的なツールになりやすい。他の作品で見かけたものを安易に持ち込むとリアリティのない薄っぺらいものになり、考えずに連発すれば整合性を壊すことにもなる。
 このファンタジー最大の飛び道具、そのままメインのテーマにもなりうる「魔法」にリアリティを持たせ、テンプレから脱出するためにできることを探って

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動物もののヴァリエーション:ドラゴンは動物ですか?|三村 美衣

動物もののヴァリエーション:ドラゴンは動物ですか?|三村 美衣

 ファンタジーは、人の社会や現代社会に囚われず、広い視点から世界を見直すことができるジャンルだ。動物を登場させ、その動物の視点や考え方を描くことで、そんな異化作用を物語に導入することができる。
 というわけで、今回は動物ものへのアプローチを考えてみよう。

動物の習性や動きを観察しよう 動物の登場するファンタジーには、様々な種類がある。
 まず、ごく普通の動物が主人公や仲間の支えとなるもの。犬、馬

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世界を創るには、モデルとなる国・時代を決める|三村 美衣

世界を創るには、モデルとなる国・時代を決める|三村 美衣

 ファンタジー小説の自由度は高い。物語の舞台がこの地球上にある必要もないし、主人公に羽があっても角があってもいい。場所も、時代も、その世界を貫く法則も、何もかも好きなように設定できることがファンタジーの楽しさだ。

 しかし、現代社会ほどではないにしても、剣と魔法の世界だってそんなに単純ではない。『指輪物語』(映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作)のトールキンは、世界が誕生した時からの長大な年表

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これだけ押さえればOK! 和風ファンタジー設定の肝|三村 美衣

これだけ押さえればOK! 和風ファンタジー設定の肝|三村 美衣

 今回のテーマは人気の「和風ファンタジー」。
 わかるようでわかりにくい漠然としたお題だが、今回は広めにとって日本の神話や伝承や習俗など和の要素を取り入れたファンタジー作品というくくりでアプローチを考えてみたい。

時代を選ぶ 同じ日本が舞台でも、時代が変わればまったく別の物語になる。
 たとえば古代であれば、『古事記』をベースにした神々の世界や、ヤマトタケルのような英雄伝説を描くことができる。社

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旅に出よう! ファンタジーの神髄|三村 美衣

旅に出よう! ファンタジーの神髄|三村 美衣

 ファンタジーの根底には、「懐かしいどこかに帰りたい」という望郷の念と、見たことのない異国の風景や文化への憧れとが同居している。日常から離れ、未知の場所へと向かう旅や探求の物語は、そういう意味でファンタジーの真髄と言えるかもしれない。というわけで、今回のテーマは「旅」なのです。

旅立ちの動機と目的 農耕社会においては、生まれた土地を耕して暮らし、家族や縁者に見守られながら生涯をとじる人生こそが真

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ダークヒーローからゴシックロマンまで 闇/病み小説|三村 美衣

ダークヒーローからゴシックロマンまで 闇/病み小説|三村 美衣

 「闇」はファンタジーとはとても相性の良いテーマだ。
 ざくっと思いつくだけでも、光と闇の対決を描く異世界ファンタジー、暗黒と恐怖を物語の中心に据えたゴシックロマンや伝奇小説、夜や闇の中で生きる種族もの、死や暗黒への畏れや憧れ、不安や心に巣食う闇(病み)が起爆となるダークファンタジーなど、闇は深く、広く、さまざまなアプローチがとれる。

光の残酷、闇の魅力 闇といえば、主人公たちは世界が闇に支配さ

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王位争奪、政略結婚、絢爛華美な宮廷ファンタジー|三村 美衣

王位争奪、政略結婚、絢爛華美な宮廷ファンタジー|三村 美衣

 令和を迎えるにあたって、TVやネットでは退位・即位に関する様々な儀式が中継されているが、ファンタジー好きは「剣璽等承継の儀」を始めとするさまざまな儀式に刺激を受けたのではないだろうか。
 というわけで、今回のテーマは「宮廷/王族/継承」である。宮廷陰謀劇や貴種流離譚や後宮もの、さまざまなアプローチを考えてみよう。

王になるのは誰? 男系のみか、女系も是とするか、などの差はあるが、現実の王家は王

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日常系から大冒険まで ほっこり/ほのぼのファンタジー|三村 美衣

日常系から大冒険まで ほっこり/ほのぼのファンタジー|三村 美衣

 これまでは設定やガジェット(道具立て)に関するテーマが主だったが、今回は「ほっこり/ほのぼの」という物語や文章の雰囲気でくくってみた。温かみがありくすりとできるような作品、かわいらしく愛嬌のある、どこかのんびりした牧歌的なファンタジー作品をお待ちしています。
 さて、その「ほっこり/ほのぼの」の王道といえば、ちょっと不思議な要素が入り込んだ日々の暮らしを描く日常系だ。まずはこの日常系のアプローチ

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ゲーム的テンプレ脱却!説得力ある人外/異種族の書き方|三村 美衣

ゲーム的テンプレ脱却!説得力ある人外/異種族の書き方|三村 美衣

 エルフ、ドワーフ、ゴブリン、トロール、ノーム、人獣、ケンタウロス、ケルベロス、ユニコーン、ドラゴン、グール、オーガ、河童、天狗。ファンタジーの世界には人間以外にも様々な種族が暮らしている。
 とりあえず古典的種族を並べたが、幅を広げて宇宙人、ロボット、人工知能を種族と考えてもいいし、人魚や精霊、それに吸血鬼やゾンビといった闇の種族もいる。それぞれに、その種族ならではの文化的背景や身体特徴などの面

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動きと勢いを物語に折り込む ゲームファンタジーのルール|三村 美衣

動きと勢いを物語に折り込む ゲームファンタジーのルール|三村 美衣

 小説の中に、ゲーム/遊戯を道具立てに持ち込むと、物語内にわかりやすくルールや障害、競争や成長、目標や賞罰などを設定することができる。先行作の多いジャンルだが、まだまだ描き様はある!(ハズ)。というわけで今回はゲーム/遊戯ファンタジーへのアプローチ方法を考えてみよう。

RPG世界の利点と問題点 目が覚めたらゲーム/ゲーム風世界の中にいた。もしくは主人公や登場人物は意識していないようだが、これはど

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恐怖を目的としないゴースト・ゾンビ・魔女の書き方|三村 美衣

恐怖を目的としないゴースト・ゾンビ・魔女の書き方|三村 美衣

 近所のスーパーマーケットに夕食の買い物に行ったら、チョコパイやポテトチップスの前に、籠いっぱいの大鎌が特売で売られていた。近年、盆と正月とコスプレパーティー を併せたような盛り上がりを見せているハロウィンが、当たり前のように、家々の玄関先を襲う日も近いのかもしれない。

 クリスマスもそうだが、イブのお祭騒ぎが終わり、夜があけたら昨日の片付けをして日常に戻ってしまうのだが、ファンタジー小説を書い

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絶望感が最大の燃料になる 時を越えるファンタジー|三村 美衣

絶望感が最大の燃料になる 時を越えるファンタジー|三村 美衣

 今回のお題は「時を越えて」。
 時というのは無常であり、川のように流れ続ける。「行く川の流れは絶えずして」な平安文学の昔から、文学はこの無常観をテーマにし続けてきた。

 でもですね。時を川の流れに例えるなら、必死になってボートを漕いだり、船に乗ったり、飛行機や魔法の箒を使って飛べば川を遡ることだってできるのではないか。探求心によって突き動かされ、澄んだ源流や仄暗い淀みに憧れ、そして必要にかられ

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