精神科医が教える、少し早めの五月病対策
4月も下旬に入りました。
ゴールデンウィーク(GW)までもう少しですね。
今年のGWは長ければ10連休の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私の場合は暦通りの休みなので、それほどゆっくり…、という感じではありません(休みが長くても、どのみち医療従事者は外出は控えておりますので、自宅で過ごすことになりますが…)
さて今回の記事では少し気が早いかも知れませんが、”5月病とその対策”について書きたいと思います。ちなみに本記事は、数年前に某新聞の取材で回答した内容をベースに作成しております。
【五月病とは?】
・五月病は、主に新入学生や新入社員が5月ごろから心身の不調をきたすことを指す言葉です。ちなみに海外でも、長期休みや新学期後に生じる1月憂鬱(January blue)、 9月憂鬱(September bule)などの言葉があります。
・ところで、五月病とは医学用語(専門用語)ではなく、俗称です。諸説ありますが、1960年代に使われ始めたと言われています(比較的最近の用語なのです)。医学用語にあてはめるとすれば、「適応障害」が妥当ではないでしょうか。
適応障害の診断基準は以下の通りです。
【五月病の症状】
・症状は多種多様ですが、"仕事や学業に身が入らない"が、主訴として最も多いのではないでしょうか。
・このほかにも、抑うつ、不安、意欲・集中力の低下、イライラなどの精神症状、睡眠障害、頭痛、めまい、動悸、腹痛、疲労感、性欲の低下、免疫力の低下(風邪をひきやすくなるなど)などの身体症状、を認めることがあります。
【五月病の原因】
・原因はズバリ環境の変化です。4月からの環境の変化に心身がついていけない状態なのです。また、長期の休みによって緊張が緩んでしまうのも原因です。
・背景としては本人の性格や気質が関係します。あくまで私の臨床経験ですが、まじめだが頑固、几帳面、ひとに聞けない、断れない、傷つきやすい、完璧主義などの方は要注意と思います。
・最近では大人の発達障害を背景とした不適応が問題となっています。
【五月病の予後】
・基本的には一過性なので、時間の経過とともにほとんどの症例は軽快します(「適応障害」という観点から言うと、通常半年以内に症状は消失)。
・しかし、症状が長期間続けば、いわゆる「うつ病」になる可能性があるので注意が必要です。
【五月病の対策】
・五月病にならないためには、周囲とのコミュニケーションが大事です。これは五月病になる方の多くが新しい環境に馴染めず、孤立しているケースが多いためです。
・生活リズムを維持しましょう。特にGW中はついつい夜更かしをしたり、食べ過ぎたりしていないよう気をつけましょう。
・オンオフの切り替えをしっかり行いましょう。家に帰ったら、仕事のことは忘れることが五月病予防につながります。仕事以外に楽しめる趣味などをもつと良いでしょう。
・ウォーキングやジョギングなどの運動習慣はメンタルヘルス向上に役立つので、おすすめです。
・しかし、なかなか体調が改善しない場合は専門家(精神科医、カウンセラー)に相談してみましょう。
【まとめ】
【参考文献など】
1.「五月病」という言葉がいつ頃から使われ始めたか知りたい。レファレンス協同データベース。
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000217467
2. American Psychiatric Association. Adjustment Disorders Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM‑5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013: 286-289
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