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クリエイティブとビジネスの「こだわり」

 クリエイティブな活動にこだわりが必要なことと比べて、ビジネス的な活動には必ずしもそれが必要ないことがある。これは、一般的なこだわりというよりも「個人的なこだわり」の話だ。創造的な活動にとって、そうした個人的な想いはとても重要であり、それが全てだとすら言えるほどのものである。
 一方で社会課題や資産や他者のための活動には、個人的なこだわりが邪魔になることも少なくない。よってこれらは相反するものなのではないかと思える、ということだ。

 実際のところ、クリエイティブとビジネスは、当然に違うものであって相いれない。クリエイティブとしてこうしたいのに、ビジネスが障害になること、あるいはその逆もあるだろう。この2つは同じ属性ではないのだ。同じ側にいないもので、常に牽制し合っている分野同士と言うこともできる。
 それほどまでに、クリエイティブとビジネスは異なる思想を持つが、とはいえ、ビジネス的なクリエイティブ、クリエイティブ的なビジネスというのは存在するのである。それらは、一体どうしてバランスを保てているのか?

 一見したところ、相反する課題や目的や思想を抱えているクリエイティブとビジネスが手を組む時、当然そこには妥協が発生する。妥協とは要するに、「どちらがどちらに合わせるのか」、もっと言えば、「どちらの目的のためにどちらが協力するのか」という具体的な項目として表れることになる。
 即ち、ビジネス的なクリエイティブの場合、ビジネスがクリエイティブに合わせることになる。最大化されるのはクリエイティブにおける自己満足だ。その実現のために、ビジネスはどのように仕事をするのかが目指される。結果として、きちんとビジネス側が妥協して、クリエイティブに合わせることができたのなら、それは最高のクリエイティブになるだろう。

 そしてクリエイティブ的なビジネスにおいて重要なのは、クリエイティブ側がその自己満足を制限することである。つまりビジネスとして成り立つように、クリエイティブはリソースを考慮しなければならない。商売倫理に耐えられるように表現を工夫しなければならない。何より、誰もが手に取りたくなるように分かりやすくあらねばならない。
 そういったことが、クリエイティブ的なビジネスには求められる。

 そう考えると、この場合は両者ともに「こだわり」は必要になってくることがわかる。なぜならこだわらなければ、どこまで譲るのかという基準があいまいになるからだ。そんな状態では、ビジネス的なクリエイティブも、クリエイティブ的なビジネスも立ち行かなくなってしまう。
 そしてこの「こだわり」は、普段はあまり縁のないビジネス側がきちんと意識せねばならないものとなる。いつもはそういったものではなく、もっとわかりやすく目に見えるものでルール化しているビジネスは、クリエイティブと組むことでこだわりを見出す必要にかられる。

 ビジネス的な活動にはこだわりが必要なわけではない。しかしあらゆるものが簡単にすぐ融合し、そしてそれが求められる今、ビジネスにもきちんと「こだわり」というものが設定されていること、理解することが求められている。

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