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”伏線” の張り方を考える:その2 「前から」

 物語にとって大切な伏線というものは、物語のある要素同士を ”繋げる” ことを意味する手法であるが、これを予め、全て決めておくことは困難を極める。
 実際のところ伏線というのはその繋がりこそが大切であって、仕掛けに凝りすぎては分かりにくくなったり無理矢理になってしまうことも少なくない。そうなっては本末転倒なので、もっとシンプルに考えるべきものであると言える。

 そう考えると、伏線を形作るやり方の1つとして「前から繋げていく」というのは、とても単純にして扱いやすい方法だ。

 前から要素を繋げていくとは、物語そのものの時系列(物語の受け手にとっての時系列)における「前に起こったこと」が原因となり、後に波及していく、という流れを作ることだ。
 即ち、

 猿を飼っているAがいて、その家に初めてBが招待される。Bはウキウキで家を見回すが、猿の声が聞こえてとある部屋の扉を開ける。Bが忠告するがもう遅く、猿が飛び出し、Bの持ち物を奪って逃走してしまう。

 これは、とても単純な伏線の例である。猿という要素が、Bの身に降りかかる事件の原因として波及し、伏線を回収している。伏線を効果的にするために、すぐには原因→結果とはならず、しばらくの間Bは楽しそうな状況にいる。結局、Bは原因によって被害に遭う。
 ただ、これは前から繋げていく伏線の1つの例だが、少し分かりやすすぎて、伏線と思えない人がいるのも事実である。伏線とはその名の通り伏していなければそうではないという感覚も、また間違ってはいない。
 特に、前から要素を繋げる場合、どこに伏線があるかはとても分かりやすく、もっと複雑な伏線を望む需要に応えにくい。そこで、前から繋げる場合にも、もう少し要素を隠していく──つまり、よく考えればこれが原因かと思えるような事件や結果を起こすことも大事になっていく。

 ともあれ、伏線を張る場合に最もシンプルなのは、その原因を前に、結果を後に「思いつく」ことである。つまり物語を作る側が、物語の時系列に従って、前に起きたことから後の事件を作っていくことになる。
 この方法はシンプルで間違いがなく、とても素直で分かりやすい伏線を作ることができる点で優れている。結局のところ、伏線といってもそれが理解されなければなんの意味もないのだから、この方法は物語の作り手が、受け手に寄り添う1つの手法である。
 伏線とは物語を楽しくするための手法だ。時に作り手の独りよがりになりやすいこの技術は、もっとシンプルに、前から張られていくことも検討されなければならない。

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