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6月1日 読書会報告

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

2024年6月1日の夜に開催した、東京読書倶楽部の読書会の報告です!

この日は新規の方が3名、リピーターが8名の合計12名でお酒を飲みながら読書会、その名もBOOK & BOOZE!

モンゴメリの『赤毛のアン』風に言えば、「腹心の友」として、お酒や食事を取りながら、好きな本について語り合い、親睦を深め合うことは素晴らしいことである。

紹介して頂いた本

読書会終了後に撮影

永井均「子どものための哲学対話」講談社

主人公である「ぼく」とペットのペネトレ(哲学猫)との対話からなる40篇。哲学史ではなく、「根暗と根明の違い」や「困っている人を助けてはいけない」など、現在に即したテーマを扱うのがわかりやすい。

ちなみに、「困っている人を助けてはいけない」理由は、助けようとしている貴方が深い悲しみを味わったことがないならば、本当の意味で困っている人に寄り添うことができないからだと言う。

哲学とは、自ら問いを立てて、自ら解決作を見出すこと。過去に哲学者が言ったからではなく、この本に書いてあるからではなく、自ら考え、答えを探すことのできるものなのだ。

 荒木あかね「ちぎれた鎖と光の切れ端」講談社

とある孤島を訪れた8人の男女。語り手である自分は、その内の全員を殺害しようと企てていた。しかし、情が移り直前で取り止めるのだが、翌日に一人殺害され、その翌日にも第一発見者が殺害されていく。

一体誰が犯人なのか分からないまま、第1部は幕を閉じる。第2部は先の事件から数年後、とある連続殺人事件を追う警察の視点で物語が進む。

これまでのスペクタルを全て伏線にしてしまう筋書きは、流石としか言いようがない。Z世代のアガサ・クリスティーとして評価されつつある著者。今のうちに読んでおけば、古参厨として名乗れるぜ。

長月達平・梅原英司「Vivy prototype」マッグガーデン

コンサートで歌を披露するために想像されたAI ヴィヴィは、未来の使者と名乗るAI マツモトに人類存続の危機を救うべく、事件の解決に協力するよう要請される。

ヴィヴィ自体は「心を込めて歌うこと」を求められたただのAI。しかし、そもそも「心を込めて」とは一体何なのか。引いて考えると、AIが自我を持つこと自体どうなのか、という問題提起もうかがえる。

2021年にアニメも放映したけれども、カットされた部分もあるからぜひ原作を読んで頂きたいとのこと。

東畑開人「野の医者は笑う―心の治療とは何か?―」誠信書房

野の医者とは、臨床心理の資格を持たない、民間療法やスピリチュアル的な方法で治療を行う医者を指す。分布としては沖縄に多いらしい。

ここで語られるのは、そもそも心を癒やすとは何なのか、心の病が完治するとはどういう状態ないのか、全国の野の医者たちに聞いていくルポルタージュ。

心の病を抱えたまま前向きに生きることも、トラウマ自体を克服することも、人によっては心が癒えたとも言える。何を持って心を癒やすか分からないままでは、いかに優れた資格も役に立たないのかもしれない。

谷崎潤一郎「春琴抄」 / 江戸川乱歩「芋虫」

この2つの作品の共通点は、身体的に不自由を負った者が登場すること。「春琴抄」は盲目の三味線奏者、「芋虫」は四肢を失った軍人の夫。介護する側と介護される側の描写がある作品である。

紹介者自身、介護施設に勤務している経験から「どんな人からでも、自分にないものを与えてくれる」ことを理解している。目が見えないならば、目が見えないなりに必死に生きようとしていることを、私は知っているんだと。

可哀想だとか、不純な気持ちがあるのではと言われることもあるけれども、私にとって今の仕事が天職なんだって。当日誕生日を迎えた紹介者は、ここにいる誰よりも仕事に対する情熱を持っていた。

美味しい料理やお酒と共に

大田ステファニー歓人「みどりいせき」集英社

退学寸前の高校2年生の主人公。少年野球をしてた頃ピッチャーだったかつての友人に誘われ、主人公はもう一つの世界に足を踏み入れることになる。

ここ最近、「世界を変えた植物」や地政学にまつわる本を読んでいくうちに、既視感を覚え紐解いたという作品。間宮改衣さんの「ここはすべての夜明けまえ」のような読みづらい文体だが、考察の余地があって面白い。

裏世界における「みどり」って何を指すと思う? CHEHONの「みどり」って何を表していた? タイトルは「みどりぃ・せき(咳)」なのか、「みどり・きせい(規制)」なのか。

千種創一「砂丘律 千種創一歌集」筑摩書房

現代短歌の歌人 千種創一氏の詩集。詩集を体系的に解説することは難しいのだが、この詩集からはフリースタイルのラップのような魂を感じたという。

詩集特有の余白で語る感じが特に好き。人間、会話や対話で余白が生まれることを恐れがちであるからこそ、詩集だと余白がより一つ一つの物語を深めるのだと。

ロートレアモン「マルドロールの歌」現代思潮社

皆さんご存知、シュールレアリズムの先駈けとも言える作品。「手術台の上に並んだ、ミシンとこうもり傘」というフレーズを1度は耳にしたことはなかろうか。

我々はモノを思い浮かべる時に、その用途や行為に囚われている。布を縫うためにしか存在しないミシンと、雨を防ぐためにしか存在しないこうもり傘というように。

これらをお互いにぶつけることにより、ミシンやこうもり傘は日常的にある用途としての価値や意味を失い、物自体を見出すこと(異価)になるのだという。

アガサ・クリスティー「春にして君を離れ」早川書房

娘の看病を終えてインドからイギリスに帰る電車の中で、母は取り返しがつかないうちに、真実に気づくべきなど悟る。しかし、駅のホームで迎えに来てくれた夫を見た瞬間、自分自身に蓋をしてしまう選択をする。

最初に読んだ頃は娘の立場から、歳を重ねてからは母の立場から感情移入してしまった作品として、昔から大好きな作品と仰る。

木寺一考「正義の行方」講談社

飯塚市内で起こった幼女誘拐殺人事件(通称 飯塚事件)は、DNA鑑定の結果、一人の容疑者が逮捕・実刑判決が下される。

否認する容疑者だったが、再審請求の準備中に死刑は執行されることとなる。だが事件の鍵を握ったのはDNA鑑定の結果のみ、かつて冤罪となった「足利事件」と同様、信憑性に疑惑は残ったままであった。

警察としての正義、検察としての正義、被害者遺族として正義。様々な正義がせめぎ合うドキュメンタリーともいえる作品。

熊代亨「人間はどこまで家畜か:現代人の精神構造」早川書房

非常に悪い言い方になるが、犬が人間のペットになったのは、人間の家畜として生きたほうが生存しやすいという「自己家畜化」から来るという。これを「生物学的自己家畜化」と言う。

一方、社会や組織の一員として生きねばならない人間もまた、家畜や社畜のように生きざるをえなくなったケースもある。これを「文化的自己家畜化」と呼ぶ。

文化的自己家畜化は、資本主義やタイムパフォーマンスといった効率性の重視など、人間に求められる欲望が強くなっていることが原因だという。だとしたら、我々はどう生きるべきなのだろうか。

2024年6月の読書会スケジュール

6月15日(土) 10:00~12:00
朝活×読書会 → 満員御礼!!!
6月22日(土) 14:00~17:00
散策×読書会
6月29日(土) 19:00~22:00
飲み有り読書会 BOOK&BOOZE!

ご興味ありましたら、コメントや各種告知ページにてお待ちしております。

皆様とお話しできるのを、心よりお待ちしております。

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