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嘘グルメ

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本文に出てくる料理は、嘘です。嘘だけど美味しそうな描写、それが嘘グルメです。
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嘘グルメ第34話「桜の蕾」

嘘グルメ第34話「桜の蕾」

この雲の動きと空の高さ、そして風の向きに風速が‥フムフム。それから湿度は‥人の数と服装は‥なるほど、もう10分もすれば通り雨がきますね。傘は持ってますか?割と強い雨が降ると思うのでカフェにでも入った方が良策かと。

いえいえ、全然凄くないですよ(笑)気象予報士は、いわばどれだけデータと経験を蓄積させているか、これに尽きるので。そう言った意味ではデータを僕ほど頭に入れ込んだ人はいないんじゃないかと自

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嘘グルメ第33話「車のウォッシャー液」

嘘グルメ第33話「車のウォッシャー液」

‥あなたですか!グルメの為なら全国何処にでも駆けつけて話を聞きに来るって方は!いやー話には聞いてましたけど、まさかその方が僕のところに来るなんて(笑)まあとりあえずお掛けください。

それで早速聞きたいのが、自動車のグルメについてですよね?意外と知らない人が結構いるみたいで、車のウォッシャー液をフロントガラスの洗浄にしか使って無い人がいますよね。もったいないですよねー、実はあれ‥凄く美味しいのに(

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嘘グルメ第32話「再生したばかりのトカゲの尻尾」

嘘グルメ第32話「再生したばかりのトカゲの尻尾」

春めいた陽気も終わり、街はギラギラした太陽とジメジメした湿気が体から大量の汗を流させる。光和台の駅前にある時計台の下で彼と待ち合わせているのだが、、そろそろ時間になる。おっ、見覚えのある顔が。彼だ。

「どうもどうもすいませんすいません」

いきなりあのセリフが聞けるとは(笑)そう彼こそが今回の取材の相手の溝口さんである。ピンと来ない人は「高尾山で一ヶ月間遭難した溝口さん」といえば分かる人も多いの

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嘘グルメ第31話『安全靴のつま先』

嘘グルメ第31話『安全靴のつま先』

ようこそおいでくださいました。わざわざ事務局まで足を運んでくださって申し訳ないですね。コーヒーで良かったですか?あっ!申し遅れました‥私、日本安全靴協会で製作企画長をやらせて頂いております歪(ひずみ)と申します。名前は歪ですが、安全靴には歪みが出ないよう開発させてもらっております(笑)

‥そもそも安全靴というのは、危険を伴う作業の際に足元を守る為に開発されました。様々な耐久試験を繰り返し、職人さ

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嘘グルメ第30話『ライオンのモツ』

嘘グルメ第30話『ライオンのモツ』

アフリカの南西部にある街「グイデン」を車で8時間西に向けて進み、ジャングルを抜け、山をひと山ふた山と越えた、とある部族が住む集落にやってきた。その部族の名は‥

「ガルダ族」
まだこの時期にもかかわらずジメジメしていて、汗でシャツが体に張り付いている。テレビでこういう所の映像を見た時にハエが人にたかっているのを見ることがあるが、既に私の顔もその状態になっている(笑)さて、ここで出迎えてくれる筈の人

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嘘グルメ第29話『ジェラートピケ』

嘘グルメ第29話『ジェラートピケ』

女性の部屋に初めて入れてもらう時って、ドキドキしますよね。夜になって彼女の寝巻きがフワフワでモコモコの「ジェラートピケ」だったら思わずよだれが出てしまいます!…いや違いますよ?それが食べ物として美味しそうだからよだれが出るんです。

ええ、ジェラートピケのパジャマはデザインが可愛くて女性からの人気も高いですが、食材としての人気も高いです。ミシュラン1つ星の銀座にあるイタリアン「コブリチョーザ」では

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嘘グルメ第28話『潜水艦』

嘘グルメ第28話『潜水艦』

私が潜水艦乗りになったのは十代の頃でした。海上自衛隊の中でも、潜水艦のチームはスパルタで有名でした。何度も辞めたくなりましたし、そのあまりにも厳しい訓練に、毎日毎日上官に向かって「もう殺せ!!殺してくれ!!」ってお願いしてましたからね。

潜水艦の最大の特徴は「隠密性」です。海底スレスレに進み、敵陣の近くになったらギアをトップからニュートラルに入れて、エンジンを切る。そのまま余力で進みます。すると

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嘘グルメ第27話「羊の角中(つのなか)」

嘘グルメ第27話「羊の角中(つのなか)」

お前さんかい?全国の稀少なグルメを取材してるってライターさんは?俺の所にも噂でまわってきたよ。グルメの為なら何処へでも訪ねてくる変な奴がいるってな(笑)

まあこれでも食べなよ、ほらっ。これは干し草の中で作ったゆで玉子だ。天気の良い日に干し草の中に玉子を入れとく、干し草は太陽の熱を貯めて逃がさないから、朝のうちから入れておくと夕方前にはゆで玉子になるんだ。干し草の匂いが移って、ハーブみたいな香りで

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嘘グルメ第26話「能ある鷹が隠す爪」

嘘グルメ第26話「能ある鷹が隠す爪」

「能ある鷹は爪を隠す」あのことわざは例えだと思ってる人が本当に多いんですよね。ええ、実は鷹が隠している爪っていうのが本当に存在するんですよ。違うのは隠している理由です。獲物に対して鋭い爪を隠しておく、ていうことではなくて、あれ…めっちゃくちゃ旨くて狙われるから隠してるんです(笑)

僕が鷹匠を志したのが27歳の時です。僕は昔からソフトバンクホークスの球団マスコット「ハリーホーク」が好きすぎてコレク

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嘘グルメ第25話「豚のみぞおち」

嘘グルメ第25話「豚のみぞおち」

豚には一般には知られていない部位がある。その部位を一度食べると、どんなに機嫌が悪い人でも満面の笑顔になり、盛り上がらず沈黙ばかりが続くパーティーでも皆が饒舌になり盛り上がるという。その部位の名は「豚のみぞおち」。口の中に入れると、その歯応えのある食感とは矛盾するように溶けていくそうだ。。そんな噂を聞いて、私はとある場所を訪ねている。そこは養豚場でもレストランでもなく、、出版社であった。

「よく私

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嘘グルメ第二十四話「梅酒の梅雨割り」

嘘グルメ第二十四話「梅酒の梅雨割り」

よーきやったんね。ほれ座んなさいな。熱いお茶と、ほれ!梅を砂糖たんまりで漬けた梅砂糖だ。砂糖の山を掘り起こしたら梅が出てくるでよ?食べてお茶飲め旅のもん。疲れが一気にとれるぞい。それとほれ、梅の漬物、梅の煮っころがし、梅せんべえ、それと梅干しだ!ぶっふぁっふぁっふぁ!(笑)

ここは日本有数の梅の生産地、心地よい潮風が一帯を包み、村の98%の面積を占める梅林がそよそよと揺れる。あまりにも梅が取れ過

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嘘グルメ 第二十三話「少年ジャンプ」

嘘グルメ 第二十三話「少年ジャンプ」

すいません。えっと、約束していた記者の方でしょうか?私こういう物です。渡された名刺には大手出版社名と「出所幸二」と書かれていた。
あ、それ「でどころこうじ」と読むんです。友達からは「デッド」と呼ばれています(笑)

黄金期のジャンプ時代は死ぬほど忙しくてね、11日寝てない時もありました。何度も何度も辞めてやる!って思ってたんですけど、、不思議ですね。先生からもらった原稿を見ると輝いててね~、それ見

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嘘グルメ 第二十二話「正月の門松」

嘘グルメ 第二十二話「正月の門松」

よう来たがに。ほんとに東京から来たがにか?たかだかメシの話を聞く為にわざわざがにか?おんもしれえ~人だがに。まあ座るがに。コーヒーがにか?お茶かいいがにか?それともコイツがにか(笑)がっはっはっは!!!!こんなの昼間から飲んだら、母ちゃんにどやされるがに!!(笑)

で、正月の話しが聞きたいがにね?

正月終わっていらなくなった門松、あれ俺っちの地域では捨てずに近所の皆で食べるもんなんだがに。門松

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嘘グルメ 第二十一話「孔雀の羽」

嘘グルメ 第二十一話「孔雀の羽」

「孔雀」は宇宙からきた生き物だと思うんだ。いやね?太古より孔雀は縁起が良い物とされていて、推古天皇に孔雀を献上したと記された書も残っている。だが書に残っている孔雀の歴史はここまで、、孔雀はいつ生まれた?いつから地球にいたのか?それはまだ誰にも分かっていない。そこで学会で僕が発表した論文が「孔雀タイムパラドックス説」だ。まぁ、まずはコーヒーでも飲みなよ。ここから長くなるよ(笑)

…まあそんなこんな

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