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いつでも休める職場を作る意味

仕事は休めないというプレッシャー

メンタルヘルス不調者対応をしている中で、「仕事を休めない」とか、「急に休まれると困る」という話を聴くことが多い。一方で、ストレスチェックの集団分析で、健康リスクが低い職場や、継続的に高いパフォーマンスを発揮している職場で話を聴くと、あまりこういう話はでてこない。
企業等に勤務されている方の多くは、毎日仕事をすることが当たり前になっていると思うが、病気やケガ、プライベートの事情でどうしても仕事を休まなければならないことがある。そして、ほとんど場合、本人が休んでもどうにかなる。しかし、中には、本来は仕事以上に優先すべきことがあっても、「仕事は絶対に休めない、休んではいけない」と考え、強いプレッシャーを背負いながら働いている人がいる。本当のこのプレッシャーは必要なのだろうか。今回は、いつでも仕事が休める職場をつくり、このプレッシャー軽減することについて考えたい。

仕事が休めない職場とは

報酬を得て働いている以上、その契約に応じた職務を果たすのは社会人として当然の責務である。しかし、体調不良等があっても、なかなか休むことができない職場もある。これは、中小企業に限らず、大きな企業にもみられる。一方で、職場を管理する上で、体調が悪く適切なパフォーマンスが発揮できない労働者を働かせることは、適切な成果を得られない可能性があるだけでなく、安全配慮義務の観点かも問題がある。
仕事が休めない職場は、なぜ、休めないのか。端的に言えば、働く人が休まない前提で仕事が設計されているからだ。仕事が人に紐づき、その担当者以外は全く仕事を把握できていなかったり、担当者個人の信用だけで顧客とつながっていたりすると、担当になっている人が休むことで仕事がストップしてしまう。また、休んでいる間に仕事進まなければ、当該業務は積み上がり、戻ってきた担当者はそれを取り戻さなければならない。

いつでも休める職場とは

一方で、いつでも休める職場は、人が休む可能性があることを前提に仕事が設計されている。具体的は、一つの仕事を複数で担当していたり、仕事が定型化されていて、他の人でも進捗がすぐにわかるような状態になっていたりする。メールのCCに追記する、グループチャットを利用するだけでも、状況が把握しやすくなる。
こういう職場の話をすると、「効率性が落ちる、それじゃ回らない」という意見をもらうことがあるが、効率性を高めても、人が急に働けなくなる可能性は排除できないので、そうなった時に仕事が止まってしまえば、結局回ら
ないのでは?と考える。
また、「誰かが休むとほかの人にしわ寄せがいってしまう」という意見もあるが、これは一部の人が休める職場を想定していることに起因していることが多い。責任範囲を明確化し、権限移譲ができる状態をつくること、そしてそれぞれの働きを互いに承認しあう職場風土にしていくことで、誰が休んでも、その影響を最小限にしていくことができる。

休める職場を作る意味

いつでも休める職場を作っていくことにどんな意味があるだろうか。まず、冒頭で触れた、休んではいけないというプレッシャーを減らせることで、そこで働く人の心理的ストレスを軽減できる。仕事でパフォーマンスが発揮しつづけるために、働く人には多種多様な心理的ストレスに晒される。軽減できるストレスは軽減しておきたい。
また、いつでも休める職場は、属人化が排除されるので、ビジネス上の予期せぬの変化にも適応でき、持続可能性が高い職場といえる。さらに、直接その業務に携わっていないメンバーも、仕事の状況を把握できるので、風通しがよくなり、困った時に気軽に相談しやすかったり、新しいアイディアにつながりやすくなる。仕事上の小さな成功も皆で喜ぶことができ、うまくいかなかったことも、皆の成長につなげやすくなる。
さらには、目の前の仕事以外にも意識が向き、スキルアップへのモチベーションも高くなる。

一番の壁は違和感

いつもで休める職場を作る意味について考えてみた。いつでも休める職場は、メンタルヘルス不調を予防するだけでなく、そこで働く人の本来の力を発揮して、高い成果をあげることができる。
いつでも休めたら、ずっと仕事をしない人がいるのでは?という声もあるが、実際は休める職場は、様々な目で行き届くので、仕事が進んでいないこともにも気づきやすいし、パフォーマンスが発揮できないことも可視化しやすくなる。働き方を変える一番の壁は、これまでやったことがないことへの違和感であり、課題を具体的に突き詰めると対応できることが多い。人が休むことを前提に働くことに対して、初めは抵抗があるかもしれないが、職場の皆でしっかり話し合ってみていただきたい。


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<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
 
日本産業衛生学会 専門医・指導医
 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
 日本産業ストレス学会理事
 日本産業精神保健学会編集委員
 厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの 
 耳』」作業部会委員長
 
 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」

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