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どこにでも住めるとしても、やっぱりアメリカに来る

僕はアメリカの製薬会社で働く日本人研究者です。アメリカに渡ってから20年が経ちました。アメリカに来たことで、僕の人生は劇的に変わりました。嫌なこと、辛いこともあった。だけど、そんなことはどうでもいいと思えるくらい、アメリカに来ることで価値観、人生観の劇的な変化がありました。

英語もロクにできないうちに海外に出ても意味がないは本当か?

英語もロクにできない、目的もはっきりしないのに、とにかく海外に出てみたい、世界を見てみたいと血気盛んな若者を、たしなめがちな大人がいる。たしかに自分の目標を明確に持って、しっかりした英語力を携えてアメリカに乗り込むことができたら、それは素晴らしい! でも、そんなもの何もなくても、海外に出ていたいと想像するだけでワクワクする若者がいたら、親のスネをかじってでも、借金をしてでも、何がしたいかも分からない状態であっても、僕は応援したい。アメリカに身を置くだけで、自分の価値観・人生観を大きく変える劇薬になることを体験したからです。

リスク回避型からリスクテイク型へ

まず、アメリカに来た時点で、自分のパラダイムをリスク回避型からリスクテイク型へシフトせざるを得なくなる。異文化の他国に来たら、事前に100%把握してから行動に移すことなど不可能だ。ほとんど訳のわからないまま行動に移さざるを得ないことばかりだ。トライ・アンド・エラーを繰り返しながら徐々に成長するしかない。ところが、移民だらけのアメリカは、周りにもそんなトライ・アンド・エラーをしながら四苦八苦している奴らばかりだ。ミスしないことを最優先し、失敗するととことん追求される日本文化と違って、リスクを取って、大いに失敗し、そこから学ぶことが許されている文化ができている。たしかに、失敗はつらい。とても立ち直れないかもしれないと思った失敗も経験した。でも、周りでもっと大変な失敗や試練を経験している人がたくさんいた。自分の失敗がめちゃちっぽけなものだと感じた。失敗が許される文化は素晴らしい! やり直し、鞍替え、撤退、逃げ、すべてOK!

メンバーシップ型からジョブ型へ

自分がいる製薬業界だけしか知らないが、アメリカの会社は超ジョブ型雇用だ。会社は、新たな人材が必要となると、「A, B, Cのスキルを持ち、X, Y, Zの仕事ができる人」のように明示して人材を募る。取りたいとなった人材が他社に行きそうになれば、必死で雇用条件を吊り上げて、確保しようとする。だから、転職はキャリア次元上昇の大チャンスだ。超ジョブ型雇用で採用しているから、新たな経験・スキルを習得し、新たな仕事を成し遂げる度に、会社側から履歴書(CV)をアップデートするように求められる。自然と自分が蓄積したスキル、成し遂げてきた仕事を気にするようになる。採用されても、求められた仕事ができなければ、クビだ。別の部署に配置転換されて、新たなチャンスがもらえることはない。オフィスに居る時間は日本人より圧倒的に短いが、働く時間はいつも真剣勝負で中身が濃い。しかも、アメリカ人はオフィスに居る時間以外にとてもよく勉強する。

貯蓄型から投資型へ

仕事がら、サイエンスには大いに興味があるが、経済には全くうとかった。そんな僕でも、アメリカで働き、雇用条件を考慮せざるを得ない環境に身を置くと経済的価値観も変わった。アメリカの会社は、人材を確保するため雇用条件を魅力的なものにする際、年金(401K)マッチサポート、ストック報酬、ストック・オプションなど、給与以外のベネフィットもたくさん充実させる。自然と、給料の余りを銀行口座に蓄えていくだけの貯蓄型から、投資型へ自分のパラダイムがシフトする。余剰資金や年金としてサポートしてもらった金は、会社が用意したシステムで投資運用されるし、もらったストックの管理も必要となる。経済に疎く全く興味のなかった僕のような人間でも、最低限のマネーリテラシーを持つことができるようになる。


僕がアメリカに最初に来た理由は、ただアメリカで仕事をしてみたかっただけだった。でも、気がつけば、このようにアメリカに来ることだけで、価値観・人生観が大きく変わっていた。どこにでも住めるとなっても、やっぱりもう一度アメリカに来たい!




#どこでも住めるとしたら

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