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note小説 三十路のオレ、がん患者

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毎週月曜更新の小説。30代の会社解雇された「オレ」がガンになり、患者視点から描いていく
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note小説 三十路のオレ、がん患者   第30回 ポートを埋め込む

note小説 三十路のオレ、がん患者   第30回 ポートを埋め込む

転院先の病院へ持って行く資料と紹介状を待つ。

もうすぐGWが来る。

それまでには落ち着けたいものだ。

資格試験の勉強も再開している。
まさか抗がん剤の効果があまりなかったとは想像してなかった。

転院先の病院の話では、治療方法はそんなに変わるわけではない。
ただ、リンパ節の除去手術になった時に何症例こなしているかで判断した。

近い遠いで言えば、転院しない方が楽だ。

こんな大切な事を家から

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第29回 転院の決意

note小説 三十路のオレ、がん患者   第29回 転院の決意

オレは、「転院」を考えていた。

それは仮にリンパ節の除去をする時に主治医に何症例扱った事あるかを聞いた時にゼロと言われたからだ。

木を見て森を見ずはダメだ。

日本中に医師は、たくさんいる。
家から近いと言うだけで経験ゼロの医師に頭下げてお願いする事もない。

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第28回 凍る背筋

note小説 三十路のオレ、がん患者   第28回 凍る背筋

午後の病院。

不思議なものだ。

外来の朝は、再診の順番待ちで人が並んでいる。
それでも午前中に診察は終わらず、午後に食い込む。

人、年寄りが多く、ラッシュだ。

24時間で考えてみれば、1日のうち込み合っているのが4〜5時間だけだ。

残りの時間はガランとしてる。

毎日が祭りのあとだ。

幼い頃、医者と銀行は午後3時頃に仕事を終えて美味しいものを食べに行ってる。
人間は目の前の状況で判断し

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第27回 社会に触れる事

note小説 三十路のオレ、がん患者   第27回 社会に触れる事

資格試験は不合格に終わった。

悔しかった。

会社をクビ、ガンが発覚・手術と抗がん剤。

せめて資格試験くらいは合格しないかなと思っていたが、とにかく八方ふさがり。

四面楚歌ってこんな気持ちなのだろうか。

別に試験に落ちたくらいで命を取られるわけではないが、ガンのオレにとっては社会復帰する布石にしようと思っていたので当てが外れた。

当面の予定は何もないので資格試験については再チャレンジする

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第25回 Xelox療法を終える

note小説 三十路のオレ、がん患者   第25回 Xelox療法を終える

11月も半ばに入った。

半年の予定だった抗がん剤治療を終える月だ。

待っていた。

この治療に着いて行けず、途中で終えてしまったり、薬の量を減らす人もいるらしい。

だが、幸い途中で終えず薬の量もそのままで半年間を終える。

桜が咲く前に病気が発覚し、桜が満開の頃に手術をし、桜が散って始めた抗がん剤。

半年程度しか経過してないのに、もう何年もこういった生活をしてる気になっている。
逆浦島太郎

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第24回 しびれが悪化

note小説 三十路のオレ、がん患者   第24回 しびれが悪化

9月になっても暑い。

もう猛暑しか来ないのではないだろうか。

昔から地球温暖化なんて言われていたが、いよいよ話だけでは済まない段階なのか。

最近では10月まで半袖でいたりする。

日本から四季がなくなるのも時間の問題なのかもしれない。

今のもっと問題なのは「しびれ」だ。

治療を続けているものの気分的にかなり辛くなって来た。

点滴をして痺れているのに帰りに薬局に立ち寄りゼローダを処方して

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第23回 嗚呼、暇人達よ

note小説 三十路のオレ、がん患者   第23回 嗚呼、暇人達よ

端から見て働き盛りの男が何日も平日の昼間にいるのは不自然に見えるだろう。

ネットで在宅ワークなんてあるが、そんな理解を平日ぼけーっと過ごす近所の年寄り連中がわかるわけがない。

会社員時代からそうだが、オレは監視されている事に疎い。

いや監視なんてドラマや映画くらいの話かと思っているくらいだ。

性格なのかもしれないが、周囲の目線を気にしない方だ。

隣近所から見られている事に気がついたのは、

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第22回 末梢神経障害

note小説 三十路のオレ、がん患者   第22回 末梢神経障害

引き続き、抗がん剤治療。

世間で抗がん剤と言えば、脱毛と吐き気だろう。
そして、死の間際。

残念ながら今やっている抗がん剤に関して言えば、これらは当てはまらない。

脱毛も吐き気もない。
当然ながら死の間際にいる実感もない。

テレビで見る抗がん剤で痩せ細って髪の毛のない状態の芸能人のイメージがあるかもしれないが、オレの場合はそんな事ない。

まるで快適に思われるかもしれないが、それも違う。

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第21回 人は離れていく、最初だけ

note小説 三十路のオレ、がん患者   第21回 人は離れていく、最初だけ

転移したと言われたら周りの反応はどうなのだろう。

ガンという事も一部の人以外には伏せている。

一度拡散してしまうと取り返しがきかないからだ。

今回の手術にあたっては応援してくれる人がたくさんいた。

半ば喧嘩別れみたいになって連絡をしてなかった人まで連絡をくれた。

今回はどうか。

そう思っていたら昔の上司からメールが来た。

いつも年度初めの時期にメールが来る。

オレよりも早く辞めたが

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第20回 抗がん剤スタート

note小説 三十路のオレ、がん患者   第20回 抗がん剤スタート

結局、始まったのは昼過ぎからだった。

何故、前日の昼に入院をしたのか不思議だ。

病院の都合でやるからだろう。

そんなもんだ。

何もしなくても入院生活というのは普段の生活に比べ制限がかかるから可能な限りはギリギリで入院をしたい。

今日は、母が付き添いだ。

手術とは違うので来ても来なくても構わない。

副作用が出たところで母にはどうにもできない。

何かあればナースコールをするまで。

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第19回 また入院

note小説 三十路のオレ、がん患者   第19回 また入院

抗がん剤を始める時は副作用の経過を見る為に入院を1週間ほどする。

4月に手術して一安心だったが、また入院する事になり、うんざりした感じは否定できない。

いや、うんざりしてる。

3月の緊急入院、4月の手術の入院、そして今回の抗がん剤の為の入院。

イヤにならない方がおかしい。

また今回も歩きで病院へ行った。

一応、入院するのはこれきりで2回目以降の投与は通院となる。

オレの場合、Xelo

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第18回 母との関係

note小説 三十路のオレ、がん患者   第18回 母との関係

オレは自分の母以外を知らない。

当たり前だと言いたいところだが、人によっては親戚をたらい回しにされたり、継母など2人以上の母親を経験する人もいる。

今のところ、オレは実母だけの経験しかない。

ただ、他の人の母親経験を知らないと言いたいだけで他意はない。

母の経歴をざっと紹介しよう。

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note小説 三十路のオレ、がん患者   第17回 最終日 玉川温泉

note小説 三十路のオレ、がん患者   第17回 最終日 玉川温泉

母の仕事の都合があるので長期滞在とはいかない。

オレは温泉、母は岩盤浴メインで療養をした。

帰りはダイヤ的に新幹線までの乗り継ぎがギリギリだ。

田舎のバスは失敗が許されない。

ミスしたら1時間待つ事さえ当たり前。

信じられないが、乗ってみて周りを見回すと仕方ない。

ほぼ貸し切り状態だ。

バスは赤字ではないのかと思うが、聞くわけにはいかない。

家に着く頃には忘れているだろう。

オレ

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