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画家Kの自伝 第十一章

K.Art Studio


時は流れて

ニ回目に発病したのが、2006年。

地震が軽くなっていくように、自分の病状も、少しずつよくなっては行ったが、根気のいる闘病である。

 しかし、その間もK.ArtMarketの活動は続けた。

2009年頃、我々の活動も転機を迎える。K.ArtMarketの活動が煮詰まり、夫婦で話し合って、一旦ギャラリーを閉じることになる。そして、残ったスペースをどう活用するか話し合った。
結局、スペースを二人のスタジオにしようと、意見が合いK.ArtMarketは、K.Art Studioという夫婦共同スタジオとなる。

 このころの様子は、またK.Art StudioのHPから抜粋したいと思う。*****************************************************************************
※K.ArtMarketから K.Art Studio へ
K.ArtMarketは、2009 年に終了することとなる。イン ディーズアートブームも去り、活動が煮詰まり、妻と会議 して、K.ArtMarketの活動を終了することにした。また、せっかく創ったスペースのギャラリー空間など、妻との共 同 Studioにしようと K.Art Studioを設立することとなる。 ただ、今までの K.ArtMarket の存在は、私たち夫婦にも、 社会との窓口としての機能し、また他人が出入りするという呼吸があり、K.Art Studio は、改装して、ギャラリーを再開することになる。そして、K.ArtMarket 終了後、一旦 仕切り直しして、K.Art Studio というギャラリーを翌年の 2010 年に再スタートすることになる。

K.Art Studio外観

ギャラリー展覧会のこけら落しは、PAINTING LIVE でも毎回お世話になった、アーティストの松本健士氏に頼んだ。そして、企画展を中心 に、K.Art Studio という名前で、スペースは再呼吸を始めることになる。何本か展覧会をしていくうちに、ギャラリーの隣の部屋を、アートショップにする動きが次第に展開していった。結局、スペースは、ギャラリーショップというスタイルに戻ることになる。ショップ業務も、K.ArtMarket時代より、スキルアップしていき、レジや SHOP 用のパソコンの設置、紙袋やラッピング用品と、だんだん本格的な店へと進化していった。

※東京を介さない展開。
K.Art Studio も、いよいよ現在のスタイルに近づいていく のだが、インターネットもSNS 時代となり、遠隔地のアーティストやスペースとのつながりができ始めていく。2014 年頃、京都の アブストラクトダンスのユニット 「Nous」と知り合い、Nous のnouskou氏は、サウンドアート、コンピューターを使った映像表現も手掛けており、私のライフワークのサウンドアートの CD を京都に送ったり、nouskou氏とのやり取りが始まった。Nousの名古屋公演が同年開催されるということで、せっかく名古屋に来るということで、一緒にK.Art Studioのギャラリースペースを使ってコラボレーションパフォーマンスをしては?というアイ デアが持ち上がった。結果、K.Art Studio にて、nouskou氏のサウンドアート、nousrion氏の身体表現、私の ライブドローイングの三者によるコラボパフォーマンスが実 現した。

Nousとのコラボパフォーマンスの様子

 また、そのほかにも、茨城の cafe ギャラリー「詩穂音」のマスター、小峰氏とも、SNS を通じ出逢い交流 を深めていくうちに、茨城と名古屋の二つのスペースでの 同時開催の二人展が出来ないか?と話が進み、2015 年、私と小峰氏による二人展「nannka 展」が実現する。「nannka 展」というタイトルは、自分が SNSで小峰氏とのやり取 りの中、私が発した言葉で、小峰氏が「なんか」という言 葉に目をつけて「軟化」「南下」などと連想でき、言葉の響きが二人展のタイトルにおもしろいのでは?というアイデアで、北関東、中部という離れたエリアでの二会場同時開 催の二人展が実現した。これらの展覧会、パフォーマンス は、東京を介さない、地方都市同士の企画として、これから可能性を秘めた動きだととらえている。インターネット時代以前は、東京が、トレンドの発信地で、一方的に地方 に情報や文化が流れていたのが、同メディアの発達により、 東京を介さなくても、地方都市同士の文化交流、情報のやり取りが可能になった時代だと思っている。また、SNS は、 海外にも通じているので、地域を問わないアナーキーな文化交流がますます盛んになれば、「ローカリゼーション・グ ローバリゼーション」の言葉に当てはまる、新しい文化形態の可能性を大いに秘めているのではと考えている。

※K.Art Studio ONLINE STORE
現在は、インターネット、カード決済の時代で、インターネットを使った、個人事業主用の、クレジットカードを利用した ONLNE ショップ開設のためのベンチャービジ ネスも出始めてきた。K.Art Studio も、数年前から、こう いったサービスを利用した ONLINE ビジネスを展開して いる。K.Art Studio の作家の作品を、インターネットのブ ラウザーを利用して表示し、作品を気にいった客が、カード決済 で絵画を購入できる ONLNE ART SHOP 「 K.Art SudioONLINE STORE」に取り組んでいる。現在は、パ ソコン画面も、数年前に比べると、はるかに精密に画像情報を伝えることが出来るようになった。また、ONLINE STORE の良さは、店舗に飾り切れない、たくさんの商品(作品)を一度に見せることが出来、購入者も、 数ある商品から好みの 作品を選ぶことが出来る。また、STORE としては、社会的ないろんな立場の人々が閲覧するインターネット世界なので、金銭的に余裕のある層にもアピールすることが出来、また、海外の購買層も含めて、ビジネスチャンスは広いのではと考えている。ただ、美術作品なので、やはり「実物を見なくては判断できない」という購入者もいると考え、 K.Art Studio ONLINESTORE では、返品 OK としている。 届いた商品を実際観てみて、イメージが違った場合、返品もできる、といった方が購入者に、より安心感を与えることができるのではと考えている。もし、返品希望が出ても、 それも仕事のうちと考えている。

K.Art Studio ONLINESTORE


※宇宙派
K.Art Studio が進めているほかのプロジェクトとしては、今年(2018 現在)で、四回目を迎える、「宇宙派展」 がある。宇宙派というと連想されるのが「印象派」などであると思われるが、印象派の時代というのは、現在より情報伝達速度がはるかに緩やかで、何かの美術運動を始める場合、「何々派」「何々主義」 と、何かの文言を掲げないと、 なかなか伝わらない時代だったと思われるが、現在は、イ ンターネット時代になり、地球の裏側と、一瞬で情報共有できる時代となった。しかるに、もしかしたら、現代は、何かの文言、グループを組んで美術運動をしなくてはならない時代ではないのかもと考えている。情報のタイムラグがなくなった現代に、あえて選択肢が残されているとしたら「地球派」もしくは「宇宙 派」くらいなのかもしれない。こういった思いで、我々は 「宇宙派」を推し進めている。

宇宙派展DM

 ※再び BRETT
BRETT WESTFALL 氏とは、二十年前の、彼が十九歳の時出逢ったのだが、その後もインターネット等通じて、交流は続いた。彼は、その後ファッションとアートを融合させた表現様式を展開させていく。ファッションブランド 「unholy matrimony」を立ち上げ、世界的ファッションブ ランド「Comme Des Garcons」とも、コラボレートするアーティストへと成長していく。一方、私は、これまで述べてきた「K.ArtMarket」「K.Art Studio」の活動を、作家活動と同時に、名古屋を中心に展開し、それぞれの道を歩むことになる。そして、BRET 氏とのやり取りで、「二人 でコラボ作品が出来たら」という夢を、ネットを通じ語り合った。コラボレーションは、何度も頓挫したが、私も五十歳近く、BRETT 氏も四十近くになり、いよいよ動き出さなければという焦りもあり、コラボを本格的に始めたいと BRET 氏に告げ、四つ切画用紙三十五枚に、先ず自分がドローイングをし、それらをLA に空輸し、LA で BRETT が加筆するというスタイルで、その後、また日本に作品を送り返してもらい、プロのフォトグラファーに撮影を依頼し、友人のデザイナーにデザインを頼み、二人の夢、コラボレーション画集がついに完成した。 画集タイトルは、BRETT 氏も私もリスペクトしているミュージシャン、デビッドボウイの名曲「 SPACE ODDITY(宇宙の変わり者)」のタイトルを頂くこととした。 合計二百部の自費出版だったが、百部を LA に送り、百部を私が名古屋を中心に販売を開始した。太平洋を隔てた異国のアーティストの共通の夢が、2017年、実現したわけである。

SPACE ODDITY

 ※結び
こうして、大学卒業後、誰かに教わるわけでもなく、模索しながら歩んできた K.ArtMarket,K.Art Studio と自分の道のりをもう一度振り返ってみる。基本的に、私のスタンスは、アート周辺の人々というよりも、アートの世界以外の、ごく一般的な人々に、アートの楽しさを理解してもらい、表現したいという思いを貫いてきたつもりである。 一般の人々というのは、例えば、「音楽」というジャンルは、 生活になじみ、また生活の一部となっているが、「現代アート」というジャンルは、なんだか難しそう、敷居が高い、 よくわからないという先入観が強く、まだまだマイノリティーなジャンルだと思う。ある人は、アートは、「一般人」を納得させるのが一番難しいと言われた。また、最近、バス キアの作品が、日本人のコレクターに億単位で落札されたというニュースを耳にしたが、例えば、ゴッホやモジリアニーとかは、生前極貧生活を送り、死後、作品が数億で取 引きされる、という歴史的事実がある。私は、このアンバラ ンスさがあまり好きではない。画家も、生きているうち に、生活できるだけの収入を制作によって得られるのが望ましく思う。一人の社会人が、一日働いて収入を得るように、画家も、一日絵を描いて生活できる分だけの収入を得ることができるシステムが必要だと強く思う。自分は、そういった 思いで、K.Art Studio の SELECT SHOPや ONLINE STORE を展開していきたいと思っている。また、アーティストとしては、ギャラリー経営と、画家という二足の草鞋を履いている。あるギャラリーのオーナーには「二兎を追うものは一兎を得ずだぞ」といわれたが、今では大家となったアーティストの先輩は、それを聴いて「両方できる所を見せてやればいい」といってくれて、今でも励みになっている。また、「ART SHOP」という新しいギャラリーの形が、もっと普及し、一般的になったらもっと楽しいのではとも夢想している。制作する個々も表現だが、K.Art Market・K.Art Studio という生き方も、自分にとっては、ある意味で表現だと考えている。

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以上の抜粋が、K.Art Studio誕生から現在に至る経緯である。

 

K.Art Studio


現在のK.Art Studio
こうして、2021年現在運営中のK.Art Studioに至るのだが、では、K.Art Studioの現在のコンセプトをここに記しておきたい。

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K.Art Studioは、名古屋市南区にあるギャラリー&ART SHOPです。民家を改造したギャラリースペースでは、四半世紀に渡り、数多くの作家さんに展覧会していただき、今もして頂いています。また、SHOPエリアでは、狭い店内ですが、質の高い美術作品を、手の届く値段で販売するという、独自のアートマーケットを目指して展開しています。
現代は、機械で作った商品や、インターネットなどの、バーチャルなコミュニケーションが主流な時代です。しかし、K.Art Studioの取り扱う商品は、美術作家さんが手創りした質の高い世界に一点しかない商品がほとんどです。
また、当スペースは、ネットに依存する希薄なコミュニケーション社会の現代、人と人が実際会える場としての機能を果たしています。デジタルを否定しているわけでなく、デジタルの長所を生かしながらも、アートを通し実際に会える、 人と人のコミュニケーションの場でもあります。

情報としてイメージを確認できるメディア -音楽で言えばデジタル-DATA、
又実物が見られて手に入れられる場    -音楽で言えばライブ演奏。

デジタル、アナログという 違いでしょうか?両方の良さを生かしながら、 一般の 皆様に地元の美術作家の作品と出会い、それを購入して、 自宅で楽しんで頂くと いう新しい価値観を提案しつつビジネス展開して行きたく思っています。

主宰者の私としては、近い将来、こうしたART SHOPが普及し、一般の皆様に新しい価値観、ライフスタイルを提案できるアートマーケットを継続・展開・発信していきたいと思っています。
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以上が、K.Art Studio・HPからの抜粋・ABOUTである。

F-50号キャンバスに油絵具
90.9cmx116.7cm・2021 
F-50号キャンバスにジェッソ・クレヨン
90.9cmx116.7cm・2020

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