伊豆の美術解剖学者

加藤公太。解剖学および美術解剖学の教員。

伊豆の美術解剖学者

加藤公太。解剖学および美術解剖学の教員。

記事一覧

『美術解剖学の学び方(仮)』:どんな人が学んでいるのか

*この記事はいつかまとめて書籍化することを想定しています。文字ベースで理解される方向けの美術解剖学の指南書で、図はあまり付ける予定がありません。有料記事ですが、…

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『美術解剖学の学び方(仮)』:短期学習と長期学習の違い

*この記事はいつかまとめて書籍化することを想定しています。文字ベースで理解される方向けの美術解剖学の指南書で、図はあまり付ける予定がありません。有料記事ですが、…

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美術解剖学の学び方:動機を作る

*この記事はいつかまとめて書籍化することを想定しています。文字ベースで理解される方向けの美術解剖学の指南書で、図はあまり付ける予定がありません。有料記事ですが、…

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『美術解剖学の学び方(仮)』 目次

美術解剖学の学び方 目次 1 目的と動機 ・なんのために学ぶか ・どんな人が学ぶか ・目的と目標を作る  短期学習と長期学習の違い ・美術解剖学のゴールはどこ? …

美術解剖学雑記

東京藝術大学の大学院生の頃、阿久津裕彦先生と美術解剖学についてよく議論していた。阿久津先生は現在造形大などで美術解剖学を教えている。たまに朝日カルチャーなどで講…

美術解剖学とは

美術解剖学とは 美術解剖学とは、絵画や彫刻などの美術表現に応用された解剖学教育のことです。美術表現などを解析する意味の「解剖」ではなく、主に骨や筋、皮静脈、脂肪…

新たな美術解剖学の本を執筆する目的

現代は、世界中で様々な著者が美術解剖学の教科書を執筆しています。教科書を執筆する主な理由の一つは、それまでの情報を編纂し、更新するためです。  解剖学はすでに完…

note記事の移転について

2021年より、これまでnoteで公開してきた美術解剖学の解説をPixiv FANBOXへ移行していきます。これまで公開してきた記事に関してはnoteでも引き続き掲載しますが、新たな…

オススメの美術解剖学書

 オススメの美術解剖学書は何か?とよく聞かれる。その質問に回答するには、どういう表現や職業に興味があるのかを聞く必要がある。現代的な教科書は業種ごとに対象を絞っ…

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エコルシェの練習3

フランスの彫刻家ジャン=アントワーヌ・ウードン(Houdon, Jean-Antoine. 1741-1828)による史上最も有名なエコルシェ。 このエコルシェはウードンがローマ賞(アカデミ…

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エコルシェの練習2

フランス出身のイギリスの彫刻家エドゥアール・ランテリ(Lantéri, Édouard. 1848 – 1917))によるエコルシェ。 このエコルシェは、『モデリング:講師と学生のためのガ…

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筋の解説1:上肢の筋群

 全身の骨格筋の数はカウント方法によっては600を超え、美術解剖学の初学者にとって難解な理由の一つになっている。  美術解剖学では、個別の筋を覚えていくよりも、筋を…

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エコルシェの練習1

 エコルシェ(Écorché)というのは、「皮剥ぎ」という意味のフランス語で、皮膚と皮下組織を除去した浅層筋を表現した解剖図ないし模型のこと。「筋肉人」とも訳される…

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4:上肢帯の骨格を描く

いわゆる腕と胴体をつなぐ部分のことを解剖学用語では上肢帯(じょうしたい)または肩帯(けんたい)という。ヒトの外形では首の下にあり、肩幅を作っている。  上肢帯の…

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3: 胸郭を描く

胸郭は可動する骨性の容器で、息を大きく吸い込むと胸部が持ち上がって容積が広がり、息を吐くと胸部が下がって容積が少なくなる。この容器の中には、呼吸器である肺と全身…

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0: 骨格の概説

ここでは全身の骨格の概要を紹介する。美術表現において、全身の骨格を素早く捉える際に、200を超えるあらゆる骨やそのディテールを拾う必要はない。特に短時間でモデルを…

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『美術解剖学の学び方(仮)』:どんな人が学んでいるのか

*この記事はいつかまとめて書籍化することを想定しています。文字ベースで理解される方向けの美術解剖学の指南書で、図はあまり付ける予定がありません。有料記事ですが、文字数は1000文字程度で、小項目ごとにまとめていて、あまり多くありません。お金を払ってまで読む感じではないと思われる方は、書籍化をお待ちください。企画自体が途中で頓挫する可能性もあり、確約はできませんけれど実現に向けて記事を増やしていきた

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『美術解剖学の学び方(仮)』:短期学習と長期学習の違い

*この記事はいつかまとめて書籍化することを想定しています。文字ベースで理解される方向けの美術解剖学の指南書で、図はあまり付ける予定がありません。有料記事ですが、文字数は1000文字程度で、小項目ごとにまとめていて、あまり多くありません。お金を払ってまで読む感じではないと思われる方は、書籍化をお待ちください。企画自体が途中で頓挫する可能性もあり、確約はできませんけれど実現に向けて記事を増やしていきた

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美術解剖学の学び方:動機を作る

*この記事はいつかまとめて書籍化することを想定しています。文字ベースで理解される方向けの美術解剖学の指南書で、図はあまり付ける予定がありません。有料記事ですが、文字数は1000文字程度で、小項目ごとにまとめていて、あまり多くありません。お金を払ってまで読む感じではないと思われる方は、書籍化をお待ちください。企画自体が途中で頓挫する可能性もあり、確約はできませんけれど実現に向けて記事を増やしていきた

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『美術解剖学の学び方(仮)』 目次

美術解剖学の学び方

目次

1 目的と動機

・なんのために学ぶか

・どんな人が学ぶか

・目的と目標を作る
 短期学習と長期学習の違い

・美術解剖学のゴールはどこ?

・SNSでの反応

・性格と勉強方法

・体力づくり

2 どうやって学ぶ?

・美術解剖学の本を読んでみよう

   記載順序

   種類

・いろいろな学び方

   真似る

   トレースと模写の違い

   塑像

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美術解剖学雑記

東京藝術大学の大学院生の頃、阿久津裕彦先生と美術解剖学についてよく議論していた。阿久津先生は現在造形大などで美術解剖学を教えている。たまに朝日カルチャーなどで講習会をされているので、先生のお人柄と美術解剖学観にご興味のある方は受講されると良いだろう。

現在の私の活動は、当時阿久津先生と交わしていた議論が現在までの活動の方向性の大部分に影響している。
会うたびにこちらから話を引き出す先生の話術は、

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美術解剖学とは

美術解剖学とは

美術解剖学とは

美術解剖学とは、絵画や彫刻などの美術表現に応用された解剖学教育のことです。美術表現などを解析する意味の「解剖」ではなく、主に骨や筋、皮静脈、脂肪体といった人体の外形に影響する運動器の構造を学びます。昨今、画力の向上を目的とした諸学者向けの描画方法に引用されることが多いのですが、そうした内容や効果は、美術解剖学の一つの側面でしかありません。
 では、骨や筋といった内部構造を学ぶと、

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新たな美術解剖学の本を執筆する目的

新たな美術解剖学の本を執筆する目的

現代は、世界中で様々な著者が美術解剖学の教科書を執筆しています。教科書を執筆する主な理由の一つは、それまでの情報を編纂し、更新するためです。
 解剖学はすでに完成した学問と捉えられがちですが、現場では現在進行形で新しい構造やそれまで知られていた構造の間違いが見つかっています。10年、20年すると、新しい知見が積み重なってきて、それらを教科書に組み込んでアップデートしていく作業が必要になります。そこ

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note記事の移転について



2021年より、これまでnoteで公開してきた美術解剖学の解説をPixiv FANBOXへ移行していきます。これまで公開してきた記事に関してはnoteでも引き続き掲載しますが、新たな記事はPixiv FANBOXの支援コースで公開していく予定です。Pixiv FANBOXの方には、これまで有料公開してきた記事も順次掲載予定ですので、ご了承ください。

オススメの美術解剖学書

オススメの美術解剖学書

 オススメの美術解剖学書は何か?とよく聞かれる。その質問に回答するには、どういう表現や職業に興味があるのかを聞く必要がある。現代的な教科書は業種ごとに対象を絞って編纂されているため、その対象かがわかれば自ずとオススメの書籍が選べるようになる。ここでは、それぞれの美術解剖学書の特徴と日本で入手しやすい代表的な美術解剖学書を数点紹介する。(*ヘッダー画像は未紹介の書影も含まれます)

アーティスト向け

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エコルシェの練習3

エコルシェの練習3

フランスの彫刻家ジャン=アントワーヌ・ウードン(Houdon, Jean-Antoine. 1741-1828)による史上最も有名なエコルシェ。

このエコルシェはウードンがローマ賞(アカデミーの主席)を受賞してローマに滞在していた時に作成された。モデルとなった像は当時シャルトリュー教会の依頼によって作成していた『洗礼者ヨハネ』(1766、ボルゲーゼギャラリー蔵)である。

ウードンは当時作成して

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エコルシェの練習2

エコルシェの練習2

フランス出身のイギリスの彫刻家エドゥアール・ランテリ(Lantéri, Édouard. 1848 – 1917))によるエコルシェ。
このエコルシェは、『モデリング:講師と学生のためのガイド(原題:Modelling a guide for teachers and sculptures)』(1902)において、塑像のプロセス見本として作成された。一旦体表像を完成させ、そこから筋の溝を彫り込んで

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筋の解説1:上肢の筋群

筋の解説1:上肢の筋群

 全身の骨格筋の数はカウント方法によっては600を超え、美術解剖学の初学者にとって難解な理由の一つになっている。
 美術解剖学では、個別の筋を覚えていくよりも、筋をまとまり(筋群)で捉えた方が把握しやすい。また、グループ化することで最初に覚えなければならない筋の数を大幅に減らすことができる。絵を描くように、大きな形(全体)、中程度の形(筋群)、小さな形(個々の筋)の順に覚えていく方が効率が良い。そ

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エコルシェの練習1

エコルシェの練習1

 エコルシェ(Écorché)というのは、「皮剥ぎ」という意味のフランス語で、皮膚と皮下組織を除去した浅層筋を表現した解剖図ないし模型のこと。「筋肉人」とも訳される。定義は明瞭ではないが、筋が一つも除外されていない解剖段階を表すことが多い。
 浅層筋の配置を覚えるためには、用語の暗記よりも模写から入る方が理解しやすいアーティストやクリエイターも多いだろう。ここでは、フランスの美術解剖学講師ポール・

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4:上肢帯の骨格を描く

4:上肢帯の骨格を描く

いわゆる腕と胴体をつなぐ部分のことを解剖学用語では上肢帯(じょうしたい)または肩帯(けんたい)という。ヒトの外形では首の下にあり、肩幅を作っている。
 上肢帯の骨格には、前方に鎖骨(さこつ)と、後方に肩甲骨(けんこうこつ)がある。
 鎖骨は、立位姿勢ではほぼ水平に横方向に伸びた棒状の骨で、肩幅の大部分を作っている。上面の全体が皮下に観察できる有名な骨である。
 肩甲骨は、上外側に向いた頂点のある直

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3: 胸郭を描く

3: 胸郭を描く

胸郭は可動する骨性の容器で、息を大きく吸い込むと胸部が持ち上がって容積が広がり、息を吐くと胸部が下がって容積が少なくなる。この容器の中には、呼吸器である肺と全身に血液を送り出すポンプの働きを持つ心臓などが収まっている。
 胸郭を構成する骨格は胸椎(きょうつい)、肋骨(ろっこつ)と肋軟骨(ろくなんこつ)、胸骨(きょうこつ)であるが、このうち胸椎は「02:脊柱を描く」で解説したのでそちらを参照してほし

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0: 骨格の概説

0: 骨格の概説

ここでは全身の骨格の概要を紹介する。美術表現において、全身の骨格を素早く捉える際に、200を超えるあらゆる骨やそのディテールを拾う必要はない。特に短時間でモデルをスケッチする際に骨格を捉えるためには、骨格の情報を単純化し、大雑把に捉える必要がある。また、詳細に骨格を描く際にも、大づかみな形をおさえた上で細部に入った方が形の狂いが少なく済む。
 掲載する図は、ドイツのゴットフリード・バメス(Bamm

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