4:上肢帯の骨格を描く
いわゆる腕と胴体をつなぐ部分のことを解剖学用語では上肢帯(じょうしたい)または肩帯(けんたい)という。ヒトの外形では首の下にあり、肩幅を作っている。
上肢帯の骨格には、前方に鎖骨(さこつ)と、後方に肩甲骨(けんこうこつ)がある。
鎖骨は、立位姿勢ではほぼ水平に横方向に伸びた棒状の骨で、肩幅の大部分を作っている。上面の全体が皮下に観察できる有名な骨である。
肩甲骨は、上外側に向いた頂点のある直角三角形に近い平たい骨で、一部の辺や突起が体表から観察できる。美術解剖学における学習では、肩甲骨が体表から把握できるようになると、背中側の造形表現が格段に上達する。
この記事では、鎖骨と肩甲骨をそれぞれ描き、胸郭(きょうかく:第3回参照)の上に配置して、人体における位置関係を把握していく。
図は、特に解説がない限りは右側を描く。
4-1:鎖骨を描くためのガイドを引く
まずは鎖骨を描くためのガイドを作成する。青文字と枠は方向と描画範囲を示す(水平垂直のガイドライン内に描くために、後面と下面は上下を反転させている)。
前方から見たときに骨の高さに対する横幅は5倍で、奥行きはおおよそ3倍である。鎖骨が収まる枠を描いたら、次に横幅を3等分する。
幅を3等分する理由は、鎖骨の中心を通過する軸の曲線がこの分割線上で変化するためである。
4-2:鎖骨の軸を描く
前面、後面、外側面、内側面では、内側と外側の枠内の軸が水平で、外側の軸が高い。中間の枠内の軸は内側と外側の軸線をつなぐ。
上面と下面では内側と中間の枠内の軸は前方に大きくカーブし、外側の枠内の軸は後方に小さくカーブする。この特徴的なS字カーブは、頚から肩にかけてよく観察できる。
4-3:鎖骨の端部を描く
鎖骨を把握する上で次に大事なことは、端部の形状の違いである。
内側の端部は胸骨端(きょうこつたん)といい、胸骨(きょうこつ:第3回参照)上縁にある鎖骨切痕(さこつせっこん)と連結する。この部分の形状は親指幅程度の高さと厚みをもち、角の丸い三角錐形をしている。
外側の端部は、肩峰端(けんぽうたん)といい、この後解説する肩甲骨の肩峰(けんぽう)と連結する。形状は平たい直方体をしていて、小指幅程度の高さに対して親指幅程度の奥行きがある。
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