胸郭21

3: 胸郭を描く

胸郭は可動する骨性の容器で、息を大きく吸い込むと胸部が持ち上がって容積が広がり、息を吐くと胸部が下がって容積が少なくなる。この容器の中には、呼吸器である肺と全身に血液を送り出すポンプの働きを持つ心臓などが収まっている。
 胸郭を構成する骨格は胸椎(きょうつい)、肋骨(ろっこつ)と肋軟骨(ろくなんこつ)、胸骨(きょうこつ)であるが、このうち胸椎は「02:脊柱を描く」で解説したのでそちらを参照してほしい。

3-1: 胸郭の幅と奥行きを描く

 まず「02:脊柱を描く」で解説した胸椎とそのガイドラインをベースにし、胸郭用のガイドライン描く。左:後面、中央:側面、右:前面。
 ヒトの胸郭は四足動物と比較して前後に扁平で左右が幅広い。胸郭の幅は、高さに対して80%程度で、奥行きは60%強(今回は63%とした)である。胸郭の奥行きの後端部は、胸椎の後端とほぼ同じかやや後方に位置する。
 胸郭の幅と奥行きは人種差や個人差が大きく、特に黄色人種では白人種や黒人種と比較して胸部の奥行きが少ない。水平のガイドラインは高さの3等分線で、脊柱で解説した胸椎のプロポーションを流用している。

3-2: 胸郭全体のアウトラインと稜線を描く

 胸郭を正面から見ると紡錘型ないしベル型をしている。横から見ると上方が欠けた楕円形である。胸郭の横幅は、男性では骨盤(こつばん)とほぼ同じで、女性では骨盤の方が幅広い。骨盤についてはいずれ解説する。 胸郭上の稜線は、上下に連続する肋骨の弯曲部によって形作られる。後方(図、左)では、内側には胸椎との連結部(肋骨結節:ろっこつけっせつ)の連続、中央には肋骨角(ろっこつかく)の連続(図、青)、外側に外形に現れない弯曲部がある。
 前面では、短いネクタイのような胸骨(きょうこつ)のガイドラインと肋骨と肋軟骨の連結部の稜線(図、赤)を加えている。また、胸骨の上方1/3程度にある胸骨角と第二肋骨の連結部(緑、3-4で解説)および胸骨の下方に外側に広がる肋骨弓(黄、3-5で解説)はそれぞれ胸郭を立体的に捉える際の重要なランドマークである。

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