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刀装具

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成木鐔⑱ 成木鐔のどこが良いのか

成木鐔⑱ 成木鐔のどこが良いのか

先日「成木鐔のどこが良いのか?」と問われた。
確かに古作と比較すると古作の方が出来としては良いのはその通りなのだ。
例えば成木氏の信家写と信家本歌を比較すると、こう言っては失礼かもしれないが、鉄味についても、彫の書体の表現力などについても、それらからくる詫び寂び感においても、全て本歌の信家の方が上手い。
これは尾張写や金山写と比較しても同じ事が言えるだろう。

しかし私が好きなのはもっと別の所にあ

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成木鐔⑰道歌鐔(信家写)

成木鐔⑰道歌鐔(信家写)

今回紹介する鐔は無鑑査鐔工、成木一成氏により平成4年に作られた信家写の道歌鐔。
刀連全国大会の天位賞で送られた鐔と箱書きがあります。

この本歌は以下になります。

表裏それぞれ並べて見ます。
櫃孔は後世開けられたものと思われるので、写の方は製作当初の形を再現するためか櫃孔は開けられていません。

この鐔は平成作でいわゆる成木氏の作風が確立した頃の作と見られ、トロンとした艶やかな地鉄をしている。

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糸巻太刀拵のささやかな発見

糸巻太刀拵のささやかな発見

現在目貫は単体で楽しむアイテムとしても地位を確立していますが、本来は柄に付いて実用を兼ねていました。

しかし拵などが展示されていても鐔や下緒、縁頭などの金具には目がいっても目貫は柄糸の下に埋め込まれているからか個人的にあまり記憶にない事が多い…。
という事で過去の展示会写真から拵の柄部分を眺めていたのですが、糸巻太刀拵には必ず家紋の目貫が付いている事に気が付きました。
龍や獅子、植物などの目貫は

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成木鐔⑯ 刀匠鐔(鎌透)

成木鐔⑯ 刀匠鐔(鎌透)

今回紹介するのは昭和54年(己未)に作られた古刀匠鐔を写した鎌透かしの板鐔。成木氏は昭和53年から自家製鋼による鐔作りを開始している。
箱は無いが銘の形はこの時期のものと一致しているし、まず成木氏が製作した鐔で間違いないと感じる。
縦104㎜、横103㎜、厚み2㎜(耳、切羽台共)と大型。

こちらは常に見る成木鐔とは鍛が明らかに異質で、一言で言えば泥を乾燥させたような肌をしている。
爪ではじくとカ

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成木鐔⑮ 赤坂初代忠正  鉢木透写

成木鐔⑮ 赤坂初代忠正 鉢木透写

好きすぎる成木鐔の紹介が止まりませんが、手元にある成木鐔でまだ紹介していない物がいくつかあるので気が向いた時に載せていきます。
今回は有名な赤坂鐔の鉢木透写の鐔になります。
謡曲の「鉢木」の物語を比喩した図柄です。

箱書きは無いのですが、鉄の質感や銘の書体から平成頃の作と思われます。

成木さんの作は高温で熱する為か側面に鍛割れが出ているのが多いのですが、こちらの作も出ています。
むしろこれがあ

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なんか出てきた鐔

なんか出てきた鐔

なんか出てきた鐔、という意味の分からないタイトルになってしまったが、部屋の片づけをしていた時に「なんか出てきた」のでそのようなタイトルにしてみた。
それが以下の短刀鐔。恐らく素銅だろうか。

家紋散らし、というよりは季節の花を散らしているように見える。
例えば以下は梅だろうか。
桔梗にしては花びらが丸すぎる気がする。

以下の「特別展 金工 美濃彫」を参考にすると、桔梗であれば以下の様にデザインさ

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成木鐔⑬ 相場感やどこで買えるかについて

成木鐔⑬ 相場感やどこで買えるかについて

今回は成木鐔(現代鐔工の成木一成氏の作品)が大体いくら位のレンジで買えるのかという相場感や、どこで買えるのかについて書こうと思います。
というのも先日中学生の方から成木鐔について上記の問い合わせを頂いたのがきっかけです。
あくまで私がここ2年程で見てきた主観的な内容、かつ2024年時点での情報ですが書かせて頂きます。

①相場感刀剣店で買おうとした場合の話ですが、並品で安くても10万円以上です。

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成木鐔⑪ 成木氏についての本

成木鐔⑪ 成木氏についての本

虎徹の刀を買ったら虎徹について書かれた本を買い虎徹の事を詳しく知りたくなるのと同じく、成木鐔を買っているうちにやはり作者である成木一成氏のことを知りたくなってくるもの。

私が成木鐔を好きになった時には残念ながら既に成木氏は他界されていたので、成木氏の事は人伝てであったり本などで追っていくしかありません。

今回はその成木氏に関する本についてですが、成木氏の生涯を通して作品を一同にまとめたような本

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ここが難しい「小柄」の時代判定

ここが難しい「小柄」の時代判定

今日は刀装具の鑑賞会のため、東京美術倶楽部へ行ってきました。

テーマは「小柄」で、古金工や古美濃の古い物から、後藤家の作、町彫の作と室町頃~幕末頃までの全時代の物が並びました。

実は私自身小柄はまだコレクションを1つも持っていません。いや正式に言えば拵に付いている小柄が1つあるのですが。
なぜかまだ欲しいと思える作に出会った事がないのが理由ではあるのですが、ではなぜなかなか触手が伸びないのか考

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梟鐔

梟鐔

「かわいい」

ただそれだけで選んだ鐔と言っても過言でもないかもしれません。

刀屋さんで買っても2~3万円位の安鐔とは思いますが、以外と梟が夜たたずんでいる景色に入り込めるというか、趣が感じられたのでつい手が出てしまいました。

梟(ふくろう)の顔も昔のものは大体このような少しデフォルメされた可愛らしい顔をしています。

耳部は段を付けて一見凝っているように見えるのですが、以前全く同じ外形の鐔で

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猿猴捉月の鐔② 猿猴促アワビ

猿猴捉月の鐔② 猿猴促アワビ

猿が水に映った月を掴もうとして木に登ったものの、木の枝が折れて水に落ちて死んだという故事から転じて、身のほど知らずの事をして元も子もなくす事を例えた画題、「猿猴捉月(えんこうそくげつ)」。

好きな画題の1つで1ヶ月程前にスマホケースをこのデザインに変えたのですが、可愛らしくて気に入っています。

さてこの猿猴促月を画題にした刀装具が多い事は以前①でも紹介した通りですが、気に入ったモチーフの猿猴促

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時代の上がりそうな鉄鐔について

時代の上がりそうな鉄鐔について

前回は「鐔の良い鉄味」について書いたので、その続きで今回は時代の上がりそうな鉄鐔について思う所を書いてみる。

鉄鐔は早くは古墳時代から登場しているが、普通の丸鐔のものは古刀匠や古甲冑師に極められたもので室町時代からという鑑定が通説である。
しかし実際、江戸期頃には大量に写し物が作られたというし、古く見せるためにわざと土の中に埋めて朽ちさせるなどの話も聞く。
故に鑑定書の付いた物の中には江戸時代以

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鉄味の良い鐔をつらつら並べてみる

鉄味の良い鐔をつらつら並べてみる

鉄鐔を見ていて必ず話題になる事と言えば「鉄味」でしょうか。
「この鐔は鉄味が良いですね」のような感じで使われます。

さてこの鉄味については鑑賞者の主観が多分に入ってくる部分ではあるので判断が難しい所ではあると思うのですが、刀の茎同様に良い鉄味というのは共通の認識があると思われます。
今回は私の主観要素も入ってはしまうのですが、玄人の方も見て大体同じ感想を持つ鐔をいくつか挙げてみようと思います。

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