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愛鐔紹介

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#日本刀

金色の鐔について

金色の鐔について

色々な図録などを見ていてもなかなか金一色の鐔というのは見かけない。
ありそうでない、のが金色の鐔な気がする。

とはいえ実際に展示会などに足を運ぶと、飾太刀拵や兵庫鎖太刀拵には金の鐔が付いているのをよく見かける。例えば「徳川美樹館蔵品抄③」などにもいくつか金の鐔が載っている。
なので見かけない金色の鐔というのは、具体的には打刀拵や短刀拵に付くような鐔をここでは指している。

以下は半太刀拵に金鐔が

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素銅家紋散雁透鐔

素銅家紋散雁透鐔

以前この鐔について軽く触れたものの、単体ではまとめてはいなかったので久々に取り出して鑑賞。
阿弥陀鑢の掛けられた素銅地に五三桐紋、十五菊紋、三巴紋の刻印が押され、雁(ガン)の透かしが入っている。
横79.2㎜×縦84.1㎜×耳厚3.3㎜(切羽台厚2.1㎜)

成木鐔㉔ 伝村上義輝所用鐔写

成木鐔㉔ 伝村上義輝所用鐔写

重要文化財に指定されている伝村上義輝所用と伝わる鐔を成木一成氏が写した作。本歌は以下の作。

同図を船田一琴も写している。
こちらは独自の文字を刻んだり、耳に桜の象嵌を施すなどオリジナリティを加えている。

さて以下が成木氏の製作した同図の鐔。
こちらは本歌を忠実に写している。
横95.9㎜×縦96.2㎜×厚1.8㎜

ペラペラだが手で曲げる事は出来ない。
薄い板材を買ってきてそのまま使って作って

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会津信家鐔 あわび図

会津信家鐔 あわび図

江戸中期頃とされる会津信家の鐔。
横76.3㎜×縦82.2㎜、耳厚12.1㎜(最厚部)、切羽台厚4.5㎜

鉄鐔の王者と呼ばれる信家は尾張の金工で室町末期から桃山時代頃とされるが、今回の鐔はその信家ではなく、もっと時代の下がる江戸中期頃とされる会津の信家鐔。離れ銘の銘にも見ている様子が伺える。

高温で熱した三本爪の孫の手のようなもので鉄が柔らかいうちにぐにゃりと曲げて造形したように見える。
そし

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練革鐔?

練革鐔?

軽くて頑丈な鐔で、表には漆がかけられている。
2枚を合わせているように見受けられる。切羽台から耳にかけて徐々に薄くなる。
横77.9×縦87.1×耳厚4.6㎜、切羽台厚5.8㎜、重さは30gと通常このサイズの鉄鐔であれば120g位はあるので4分の1位の重さとなっている。

茎孔部を拡大したのが以下。
材質の特定がいまいち難しいものの、けば立っている所も見られ革っぽさはある。

耳は以下のように2枚

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成木鐔㉓ 山吉兵写

成木鐔㉓ 山吉兵写

今回鑑賞記録を残すのは山吉兵写の成木鐔。
横82.4㎜×縦85㎜×厚5.3㎜。

地鉄が常に見る成木鐔とは異なり、赤茶けている。
以下左の柳生鐔写しはよく見る成木鐔の艶のある少し白みのある黒色、右は今回の山吉兵写しである。赤茶けている様子が伝わるだろうか。

拡大して見ると、明らかに異質な地鉄が露わになっている部分が見られる。

肌触りも独特で全体的にカサカサしたような触り心地。
成木氏なりに山吉

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成木鐔⑮ 赤坂初代忠正  鉢木透写

成木鐔⑮ 赤坂初代忠正 鉢木透写

好きすぎる成木鐔の紹介が止まりませんが、手元にある成木鐔でまだ紹介していない物がいくつかあるので気が向いた時に載せていきます。
今回は有名な赤坂鐔の鉢木透写の鐔になります。
謡曲の「鉢木」の物語を比喩した図柄です。

箱書きは無いのですが、鉄の質感や銘の書体から平成頃の作と思われます。

成木さんの作は高温で熱する為か側面に鍛割れが出ているのが多いのですが、こちらの作も出ています。
むしろこれがあ

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梟鐔

梟鐔

「かわいい」

ただそれだけで選んだ鐔と言っても過言でもないかもしれません。

刀屋さんで買っても2~3万円位の安鐔とは思いますが、以外と梟が夜たたずんでいる景色に入り込めるというか、趣が感じられたのでつい手が出てしまいました。

梟(ふくろう)の顔も昔のものは大体このような少しデフォルメされた可愛らしい顔をしています。

耳部は段を付けて一見凝っているように見えるのですが、以前全く同じ外形の鐔で

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成木鐔⑨紛れる無銘の成木鐔2

成木鐔⑨紛れる無銘の成木鐔2

以前書いた現代鐔工、成木一成氏による信家の亀甲紋写の鐔。

よく見る成木氏独特の艶ある錆色とは異なり古風でしっとりした風合いの本鐔は、個人的にもとても良く出来ているように見え、仮にここに信家と銘があったら信家と信じてしまいそうな出来に見えるほど。もしくは江戸期の明珍あたり。

そんな折、信家鐔を詳しく知る方にお会いする機会があったので本鐔を実際に見て頂き、本歌信家との違いについて聞いてみたところ、

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古金工 菊花透鐔①

古金工 菊花透鐔①

この鐔を初めて見つけたのは9ヵ月前、とある刀剣店のサイトであった。
古い鐔に興味を持ち始めた頃で、サイトを色々探しまわって気になった鐔をまとめていた事がありそれをブログに書いたりもしていた。

これを書いてから7ヵ月位経った時だったか。
ブログ執筆時は売約済となっていたこの鐔であるが刀剣店を訪れ刀展示ケースの打ち合わせが終わった後に「古金工系の鐔ありますか?」と話をしたところ3枚程見せて頂けたので

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太刀師鐔 小菊模様図 ①

太刀師鐔 小菊模様図 ①

先日新たにコレクションに加わった鐔をじっくり眺めてみる。
菊花模様の刻印が一面に施された山銅地の鐔で表面には山銅の茶色っぽい地鉄と黒ずんだ地鉄が見え、良い艶感がある。

縦6.9cm ×横6.6cm ×切羽台厚0.8 cm 、耳厚0.7㎝、重量 187g

この菊花の刻印であるが一見ランダムに打たれているように見えるがよく見ると規則性を持っているのが分かる。
遠目から見ると大切羽のような形に見える

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鐔を求め「永楽堂」さんへ

鐔を求め「永楽堂」さんへ

日本刀を販売しているお店が両国にある。
刀が好きな人であれば刀剣博物館という名前は一度は耳にしたことがあると思うが、そこから徒歩10分ほどの位置に、両国駅からは5分かからない程度の位置に「永楽堂」さんはある。

永楽堂さんはネット販売にも力を入れているお店で、HPの更新頻度も高い。
サイトで気になった鐔を発見し、事前に連絡を入れてお伺いする事にした。
(必ずしもサイト掲載品を店内に置いているとは限

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室町期の獅子置物と同時期の鐔の共通性など

室町期の獅子置物と同時期の鐔の共通性など

古銅製の獅子の置物を買いました。
室町時代頃の大香炉の蓋の掴みと思われるものだそうで。
どこか愛嬌があって可愛らしく机の上に置いておくには良いかなと感じたのと、当時の鐔の素材と共通項が見られないかと思い手元へ。
縦5㎝、横3.5㎝、高さ5㎝程度。ずっしりと重い。

大香炉をネットで検索してみると似たようなものをヤフオクで発見。
きっとこのような感じで蓋の上部に付いていたのかもしれません。

因みに

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山銅の左右海鼠透鐔①

山銅の左右海鼠透鐔①

左右海鼠透の山銅鐔。
サイズは小さく、横縦共に6.5㎝、厚み4.7mm、重さ96g。
茎孔は21mm×8mm程度で恐らく脇差サイズ。

この鐔も鑑定書が現状付いていないわけであるが、時代は江戸時代頃の鐔であろうか。光にかざすとうっすらと茶色が見えて来るなど山銅の経年変化による渋い色味に味わいがある。
古金工あたりにも見えるが果たして。

形状は角部が全て丸く面取りされているので全体的に手当たりが優

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