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彼女はいつも、僕の一歩先を行く
「少し遊ばない?」
彼女がそう言い出したのは去年の春頃だった。
最初は何を言っているのかがわからなかった。
三年前くらいからの知り合いで、仲は良いほうだった。
珍しく話も合うし笑いのセンスも似ていた。
それからというもの、会えば軽口を叩く程度の仲だった。
特に意識はしていなかった。
それ以外は何事もなく、彼女の素性も知らないまま時が過ぎた。
「ご飯でも行きましょうか?」
彼女は関東近郊の
DECEMBER'S CHILDREN
「Deccaバージョン選ぶんですね。」
新宿の中古レコード屋でいきなり声をかけてきた少女は今どき珍しくセーラー服を着ていた。
僕は思わず「ふぇっっと」と言葉にならない驚きを少し大きな声で発し、ただでさえ少ない客から白い目で見られた。普通おっさんが女子高生に声をかけてびっくりされるのであって、女子高生がおっさんビビらせてどうするんだよ、それも今や売れないで困っているレコード屋さんで。
時間にして
ワールドカップの憂鬱
4年に一回、どうでもよいサッカーファンが増える。
1993年にバブル弾け後の就職難を乗り越えた私は、関西のとある企業に就職した。
女性で研究職。当時当然ながらまだ「リケジョ」なんて言葉はなく企業もよく採ってくれたなと思ったが、それなりに待遇もよく、会社の先輩社員(男性)達もずいぶん優しく接してくれた。もちろん仕事には厳しく、とても充実した毎日を過ごしていた。大学時代に山岳部で鍛えた足腰は研究職に